R2というクルマ①
投稿日 : 2022年04月30日
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スバルR2は、2003年10月、第37回東京モーターショーに参考出品され、2003年12月8日に発売されたモデル。
キャッチコピーは「新しいミニカーのカタチ」で、イメージキャラクターは観月ありさが務めていた。
軽自動車はスペース効率を重視する流れがあったが敢えてそれに背を向け、あくまでも開発のねらいは『多様化するコンパクトカー市場に対して、従来の軽自動車にない新たな価値観を持ったクルマとして開発。
軽自動車トップクラスの「経済性・安全性・環境性能」を達成するとともに、市場ニーズに対応させるべく、これまでの軽自動車にないスポーティ&エレガントなデザイン、次世代スモールカーに相応しい高次元の環境性能と安全性、更には毎日の生活が楽しくなる、使いやすさと快適性、そしてキビキビとした走りを実現した』と説明されており、スバルとしては限られた軽自動車サイズの中で室内の広さだけを競うのではなく、スタイルや走り、安全性、環境性といった機能に特化した軽自動車を目指していたようだ。
エクステリアは、アルファロメオ・デザインセンターからスバルに移籍したデザイナー、アンドレアス・ザパティナス氏によるイタリアンデザイン…と思われているが、R2(後に登場するR1)のチーフデザイナーは田中明彦氏であり、アンドレアス・ザパティナス氏は初期のカタログに顔を出してはいるものの、R1・R2のスタイリング完成後に就任したスバルのチーフデザイナーなので、実は日本人デザイナーの作品だ。
デザイン優先としたボディは『感性に訴えかけるワクワクするようなデザイン』をテーマにボディ全体の張りを強調したダイナミックなプロポーションと"ワンモーションフォルム"を採用。そこにスバルの礎である飛行機をモチーフにした“スプレッドウィングスグリル ”を取り入れた個性的なデザインが与えられた。
内装デザインは『毎日楽しく快適に使えるユーティリティ性能』がテーマで、軽自動車を感じさせない質感の高いインパネデザインと上質感を際立たせる照明演出と、使いやすさと快適性を追求した運転席まわりが求められていた。
全長3395mm、全幅1475mm、全高1520mmからなる5ドアハッチバックのワゴンで、プレオより50mm程低くなり、バンタイプが存在しない設定となっていた。
ボディカラーは、エレガントカラーとスポーティカラーに分けられており、受注しない限りはソレに伴ってインテリアのカラーリングの組み合わせが決まっている。
・エレガントカラー
アストラルブルー•オパール、ライトパープル•オパール、レディッシュモーヴ•オパール、ピスタチオグリーン•オパール、シルキーホワイト•パール(15,750円高)の5色
・スポーティカラー
プリズムブルー•メタリック、ベリーレッド・メタリック、シャイニーシルバー・メタリック、ピュアホワイト、クリーム・イエロー、オブシディアンブラック・パールの6色、計11色を設定。
エレガントカラーにはアイボリー内装の組み合わせで上品さを、スポーティカラーにはオフブラック内装の組み合わせでクールな印象を与えていた。
インストルメントパネル加飾とシフトパネル色は、どちらの内装カラーでもフロスティパール色の塗装がされている。
車両型式区分記号の内訳は、左から【排出ガス規制区分】【車種区分】【ボディ区分】【総排気量・駆動・懸架区分】【年改区分】【ドア枚数区分】【グレード区分】【変速機・燃料供給装置区分】と順番に並んでいる。
【排出ガス規制区分】
→メカニズムの欄で説明する。
【車種区分】
R→R2(※R1でもステラでも、何なら前のプレオから全て「R」という不思議)
【ボディ区分】
C→ワゴン(※AでもJでもNでも区分はワゴンという第2の不思議)
【排気量・駆動・懸架区分】
1→660cc・FWD
2→660cc・4WD
【年改区分】
Aスタート、各M/C毎にB・C・D・E・F・Gと変更される型式。
【ドア枚数区分】
5→5ドア
【グレード区分】
1→i(排出ガス規制区分UAのみ)
2→R(排出ガス規制区分UAのみ)
3→S(排出ガス規制区分LAのみ)
4→F/Fプラス
5→Refe
6→Refe limited/Refe Bitter selection(E型)
7→i/i casual
8→R
9→S
AH→Utility Package i
CH→Utility Package R
F→i-Custom
G→R-Custom/CUSTOM typeS R/typeS R
H→CUSTOM typeS S/typeS S/typeS
J→Refe Bitter selection(F型)
K→FAVORITE Edition
L→Smart Selection
【変速機・燃料供給装置区分】
A→SOHC NA 5MT
B→SOHC NA i-CVT
C→DOHC NA 5MT
D→DOHC NA i-CVT
F→DOHC MSC SS・i-CVT
※R2から、【変速機・燃料供給装置区分】での4WD用の識別が廃止された。
★基本データ
全長✕全幅✕全高(mm)
3395✕1475✕1520(1525)
室内長✕室内幅✕室内高(mm)
1725✕1220✕1180
ホイールベース(mm)
2360
トレッド[前/後](mm)
1295/1285
最低地上高(mm)
155〜160
車両重量(kg)
770〜870
最小回転半径(m)
4.7~4.8
燃料タンク容量(L)
30
ブレーキ
フロント:13インチベンチレーテッド・ディスク式
リヤ:リーディングトレーリング・ドラム式
2
メカニズム面では、徹底した対衝突への対策ボディ構造とし、省燃費性能と走行性能、安全性が求められた。
まず、ボディは前面オフセット、側面と後面の衝突基準をクリアし、クルマ同士の衝突も考慮された新環状力骨ボディに進化。
構造の徹底的な合理化と高張力鋼板の多様、差圧工法の採用、曲面トーボードの採用と鉄板肉厚の薄肉化により、静粛性を持たせながらも強度と剛性アップが図られ、ボディのみでプレオ比30kgダウンが実現されている。
足回りは剛性の向上と快適な乗り心地が求められた。
ステアリングギヤボックスの位置を70mm下げ、取り付け位置をそれまでのボディからクロスメンバー直付けに変更した事で、フロントナックルをスズキ車と共通化しながら操舵剛性を向上。アシストモーターもトルクアップが図られている他、ステアリングギヤ比が16.93~17.01と、ヴィヴィオの16.4~16.6(P/S車)、14.5(S/C車)とまではいかないが、プレオの18.4~18.9に比べるとクイックに設定されており、少ない操作でフル操舵出来るように工夫されていた。
サスペンションはヴィヴィオから続く4輪ストラット独立懸架で、フロントはL型ロアアーム・ストラット式。ロアアームは形状を見直し、後部のNo.2ブッシュの取り付けが前後軸ではなく上下軸に改められた。これは前後方向の入力に対し、ロアアームが前部No.1ブッシュ側を支点に回転移動する事でコンプライアンス性能を確保したものであり、全体の取り付け剛性を高めて操安性としなやかな乗り心地の両立が図られている。
キャスターはプレオの3°20から3°25に僅かに寝かされて直進安定性を高めた他、Sグレードには中実Φ18mmのスタビライザーが与えられている。
リヤはデュアルリンク・ストラット式。ラテラルリンク長を前後で大きく変えた他、トレーリングアーム長の変更と取り付け位置を60mm下げるセットとされた。これは標準で14インチに拡大されたホイールに伴って実現された事で、ブレーキング時の尻上がり挙動を抑え、姿勢変化を少なくしつつも、バンプ時のリヤステアをプレオより大きくして車体ロール時にトーイン変化を増加させ、操縦安定性を高めている。
エンジンは3タイプ。いずれも56mm×66.8mmのボア・ストロークを持つ直列4気筒の658ccだ。詳細は画像を参照して頂きたい。
iグレードはSOHC8バルブのEN07E型で、レックスからヴィヴィオ、プレオと、改良しながら引き継がれて来たモノ。
Rグレードは新開発のニードルローラーベアリング付ローラーロッカーアーム式DOHC16バルブで、吸気側にAVCS(可変バルブタイミング機構)を装備するモノ。ダイレクトイグニッションと電子制御スロットルを採用する。
SグレードはDOHC16バルブ・インタークーラー付スーパーチャージャーのEN07X型で、ヴィヴィオの時にRX-R用に開発され、基本的にはプレオRSにも搭載したプレミアムガソリン仕様のモノを引き継いだのだが、このモデルからフューエルデリバリーパイプがリターンレス化されている。
全エンジン共に軽量化を徹底。エンジンブロックは水路の拡大と、一部の補強リブの排除と肉抜きにより、従来型よりブロック単体で約5kg軽量になっている他、エキゾーストマニホールドを鋳物から板金タイプとする事で3kgの軽量化と熱伝導率が向上。サブマフラーを含めた排気システム全体では4.7kg軽く仕上げられている。
ピストンはスカート部が短縮されたLFピストンが新たに採用され、摩擦低減により燃費向上に貢献している。
トランスミッションでは、5MTはTM57型が廃止され、2WDはTM64型、4WDはTY64型に。i-CVTはトルクコンバーターが新設計とされ、より滑らかな走りを実現。エンジンとの高度な強調制御と、油圧を発生させる必要があるポンピングロスも極力セーブする配慮が徹底されおり、燃費の向上が図られた。
また、RグレードではECOスイッチによるi-CVTエコモード低燃費制御、SグレードではSPORTスイッチによるアダプティブ制御と7速マニュアルモードのスポーツシフトがECUにプログラムされている。
ミッションはどちらもプレオからキャリーオーバーされたモノだが、エンジンの傾斜角の違いから新設計のケースにしていたり、タイヤサイズの関係等からR2専用の減速比にチューニングがされているなど、仕様が微妙に違う。
全車に、2灯式HIDハイ&ロービーム・プロジェクターヘッドランプ、フロント・アクティブセイフティシート&SRSサイドエアバッグ、UVカット機能付濃色ガラス(リヤドア・リヤゲート)が、メーカー装着オプションとして設定されていた。
残念ながら、R2のイメージキャラクターだった観月ありさはオプションとして設定されていない。
排出ガス規制区分は、NA車がUA(平成12年度排出ガス規制適合+75%低減レベル認定車)、MSC車がLA(平成12年度排出ガス規制適合+50%低減レベル認定車)。
しかし、それも2004年2月に排出ガス規制区分が変更され、NA車がCBA(平成17年度排出ガス規制適合+50%低減レベル認定車)、MSC車がABA(平成17年度排出ガス規制適合車)となる。
メカニズムに関してはこんなところだろうか。
3
「i」は電動リモコンカラードドアミラー、マニュアルエアコン、CDプレイヤー&AM/FMチューナー[2スピーカー]、トリコットシート、運転席バニティミラー、電波式キーレスエントリー、14インチフルホイールキャップを標準装備したエントリーグレード。
SOHCエンジンが搭載され、その組み合わせとして5MTかi-CVTのどちらかを選択出来た。
このグレードのみ、4センサー4チャンネルABS(EBD&ブレーキアシスト付)、フロントフォグランプはメーカー装着オプションだった。
<基本データ>
型式
2003.12~2004.3
2WD:5MT/UA-RC1A51A・i-CVT/UA-RC1A51B
4WD:5MT/UA-RC2A51A・i-CVT/UA-RC2A51B
2004.4~2004.12
2WD:5MT/CBA-RC1A57A・i-CVT/CBA-RC1A57B
4WD:5MT/CBA-RC2A57A・i-CVT/CBA-RC2A57B
エンジン
EN07E(直列4気筒DOHC8バルブEGI)
圧縮比
10.5
46ps/6000rpm,5.9kg・m/5200rpm
トランスミッション
5MT/i-CVT
車両重量
2WD・5MT:770kg/i-CVT:800kg 4WD・5MT:810kg/i-CVT:840kg
最小回転半径
4.7m
メーカー希望小売価格
2WD:5MT/90,3000円・i-CVT/955,500円
4WD:5MT/1,008,000円・i-CVT/1,060,500円
※オーディオレス仕様は15,750円安
※寒冷地仕様は5,250円高
4
「R」はフロントフォグランプ、電動格納式リモコンカラードドアミラー、タコメーター付アクティブメーター、マニュアルエアコン、インテグレーテッドCDプレイヤー&AM/FMチューナー[2スピーカー]、ジャージ&トリコットシート、運転席シートリフター、運転席&助手席バニティミラー(照明付)、インパネシャワーライト、助手席シートバックポケット、電波式キーレスエントリー、14インチアルミホイール、i-CVTエコモードを標準装備したメイングレード。
DOHC16バルブにAVCS(アクティブ・バルブ・コントロール・システム)エンジンが搭載され、その組み合わせとして5MTかi-CVTのどちらかを選択出来た。
また、i-CVT車にはi-CVTエコモードの制御を、シフト横にあるECOスイッチで切り替える事が出来た。
メーカー装着オプションでADDZESTサウンドシステム MD+CDプレイヤー&AM/FMチューナー[ウーファー付4スピーカー]を設定していた。
<基本データ>
型式
2003.12~2004.3
2WD:5MT/UA-RC1A52C・i-CVT/UA-RC1A52D
4WD:5MT/UA-RC2A52C・i-CVT/UA-RC2A52D
2004.4~2004.12
2WD:5MT/CBA-RC1A58C・i-CVT/CBA-RC1A58D
4WD:5MT/CBA-RC2A58C・i-CVT/CBA-RC2A58D
エンジン
EN07D(直列4気筒DOHC16バルブAVCS-EGI)
圧縮比
10.5
54ps/6400rpm,6.4kg・m/4400rpm
トランスミッション
5MT/i-CVT
車両重量
2WD・5MT:780kg/i-CVT:810kg 4WD・5MT:820kg/i-CVT:850kg
最小回転半径
4.7m
メーカー希望小売価格
2WD:5MT/1,123,500円・i-CVT/1,176,000円
4WD:5MT/1,228,500円・i-CVT/1,281,000円
※オーディオレス仕様は26,250円安
※寒冷地仕様は5,250円高
5
「S」はフロントフォグランプ、電動格納式リモコンカラードドアミラー、タコメーター付アクティブメーター、オートエアコン、インテグレーテッドCD・MDプレイヤー&AM/FMチューナー[2スピーカー]、加飾付きホーンパッド(※アイボリー内装はグレー、オフブラック内装はフロスティパール)、ジャージ&トリコットシート、運転席シートリフター、運転席&助手席バニティミラー(照明付)、インパネシャワーライト、助手席シートバックポケット、メッキシフトボタン(オフブラック内装のみ)、電波式キーレスエントリー、中実Φ18mmフロントスタビライザー、15インチアルミホイールを標準装備したスポーツグレード。
DOHC16バルブインタークーラー付スーパーチャージャーエンジンが搭載され、スポーツシフトi-CVTが組み合わせられた。
Sのi-CVTはECUにアダプティブ制御が組み込まれており、シフト横にあるスポーツスイッチで切替する事が出来た他、シフトレバーを助手席側に倒せば、7速マニュアルモード・スポーツシフトでシフトアップ/シフトダウン操作が出来た。
メーカー装着オプションでADDZESTサウンドシステム MD+CDプレイヤー&AM/FMチューナー[ウーファー付4スピーカー]を設定していた。
<基本データ>
型式
2003.12~2004.3
2WD:i-CVT/LA-RC1A53F
4WD:i-CVT/LA-RC2A53F
2004.4~2004.12
2WD:i-CVT/ABA-RC1A59F
4WD:i-CVT/ABA-RC2A59F
エンジン
EN07X(直列4気筒DOHC16バルブ・インタークーラー付スーパーチャージャーEGI)
圧縮比
9.0
64ps/6000rpm,10.5kg・m/3200rpm
トランスミッション
スポーツシフトi-CVT
車両重量
2WD・i-CVT:830kg 4WD・i-CVT:870kg
最小回転半径
4.8m
メーカー希望小売価格
2WD:i-CVT/1,365,000円
4WD:i-CVT/1,470,000円
※オーディオレス仕様は42,000円安
※寒冷地仕様は5,250円高
6
「i-PLUS」は2004年6月30日に追加されたi特別仕様車。
「i」の装備にプラスして、フロントフォグランプ、電動格納式リモコンカラードドアミラー、インテグレーテッドCDプレイヤー&AM/FMチューナー[2スピーカー]、トリコットシート、運転席シートリフター、運転席&助手席バニティミラー(照明付)、UVカット機能付濃色ガラス(リヤドア・リヤゲート)を装備した、ちょっとお買得なグレード。
「i」ベースなのでSOHCエンジンが搭載され、その組み合わせとして5MTかi-CVTのどちらかを選択出来た。
<基本データ>
型式
2004.6~2004.12
2WD:5MT/CBA-RC1A57A・i-CVT/CBA-RC1A57B
4WD:5MT/CBA-RC2A57A・i-CVT/CBA-RC2A57B
エンジン
EN07E(直列4気筒DOHC8バルブEGI)
圧縮比
10.5
46ps/6000rpm,5.9kg・m/5200rpm
トランスミッション
5MT/i-CVT
車両重量
2WD・5MT:770kg/i-CVT:800kg 4WD・5MT:810kg/i-CVT:840kg
最小回転半径
4.7m
メーカー希望小売価格
2WD:5MT/94,5000円・i-CVT/997,500円
4WD:5MT/1,050,000円・i-CVT/1,122,500円
※寒冷地仕様は5,250円高
7
そんなR2だが、実はR1eとは別に2001年秋のフランクフルトと東京のモーターショーにも、その原型となったモデルが出品されていた。
"HM01"と名付けられたこのモデルは、女性ユーザーを念頭に扱いやすさと親しみやすさを求めたデザインと説明されていた。
全体的なフォルムは、確かにR2に近いモノがあった。
8
R2の為の構想モデル達。
左上は初期構想モデルに至る過程でボツになったが、HM01のベースとされたモデルで、その下が2001年暮れに提案された初期構想モデル。
真ん中の第2次構想モデルでは、随分とR2らしくなり、右が承認モデルだ。
インテリアの初期構想モデルでは、次世代ミニカーに求められる価値観を提案したが、どれもボツになってリセットされている。
R2の開発がスタートしたのは2000年の春。
開発当時のスバルは、2001年に社長に就任した竹中恭二氏により打ち出された"エモーショナルを追求するデザイン改革"の最中にあり、これまでスバルが行ってきた"スポーティさや機能性を強く表現する商品作り"に"エモーショナルな要素"を加え、改革的な位置づけを目指していた。
初期構想モデルを見ていると、エモーショナル感を強調する事への苦労のあとが見て取れますね。
そんなR2のデザイン、皆さんは好きですか?
では、また…。
②に続く…かもしれない。
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