夏の午後

平日の午後。朝から働いている人は、そろそろ終業の頃。電車の中は、空いていた。この車輌には、自分の他にはあと2-3人しか乗っていない。

長い座席の真ん中に、座る。この座席は、自分一人だ。

日差しは暑いけれど、さすがに傾きかけて橙色がかかり始めている。おかげで、向かいの窓からは、丁度、目に日差しがあたる。

眩しいな。

向かいにも誰も座っていないので、向かいの座席に移動することにした。


窓の外を流れる景色は、暑さでぼんやりしているように感じる。気のせいかな。


自分もぼんやりしながら、座っていたら、隣の駅についた。


若い男性が一人、乗ってくる。

向かいに座る。

座ったが、すぐに立った。





立って、こちらに来る。



迷いなく、まっすぐ。
こちらへ。







見覚えは、まったく無い。




少し離れた座席の乗客が、違和感を覚えたのか、ふとこちらを見ている。




両手を、大きく広げて。
薄笑いさえ、浮かべながら。


心配気になり、隣の乗客は一瞬、腰を浮かせる。自分は、それを横目にしながら、目があったまま動けない。




「なっ！？…」


ばん！！！



男性は、驚くほど器用に、両手で同時に、二つの窓に降りていたサンシェードをあけた。
そした、満足気に 微笑み、くるりときびすを返し、向かいの座席に戻っていく。



残ったのは。

ふーっと、息を吐いて、座りなおす、隣の乗客。
ワクワクした目で、流れていく景色を見ている、向かいの男。
そして、呆然とした自分。






何故、ここか！？
他にも、空いているのに！！



この、引きの悪さはなんだーっ！！！
(ﾉ｀△´)ﾉ ┫:･''∵:.┻┻:･''.:∵

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これ、を、思い出した。