今回の旅ほど自由を謳歌出来た旅などなかったのではないか。
あるいは今後もないかもしれない。
僕はこのツーリングの中で幾度となくその喜びを噛みしめていた。

ある時は、道端に咲いた花を気が済むまで観察し、
ある時は何の変哲もない看板と地名に誘われて寄り道をし、
名も知れぬ池を眺め、気まぐれな天気の変化を愉しみ
時には車から降りて自分の足で歩いた。

その日の風に身を任せ、行く方向は朝起きた時に決め、
夜寝る場所は夕方になってから探す・・・。
こんな自由な旅が実現できたのは全くの幸運だった。

こんな旅をしたくなった理由はこうだ。
ありきたりだが、仕事に、会社に、あるいはそれ以外の色々なゴタゴタに心底疲れた。
ぷつりと気持ちが切れた。
誰にも何にも邪魔をされない旅を一週間でいいからさせてくれ、と上司に話したのは殆ど衝動的だった。

上司は即座にこう言った。
「いいだろう。そういうことは若いうちしか出来んから行ってこい。」

こういうことがあると、少なくともこの人が俺の上司である限りは、この人を裏切るような仕事は出来ない。

むろん、これまでに、これより時間のある旅はしたことがある。
数カ月にわたりある国をさまよっていたこともある。
でもあの時は本当にみじめ過ぎるほどお金がなくて、
それ故あきらめることが多く、純粋な意味で自由な旅ではなかった。
（何しろ一日の生活費が数百円だった）
旅を愉しむ気持ちだけは劣っていなかったが。

今は、それなりに自由に使えるお金はあるし、自由に使えるアシ（ジムニー）がある。
しかもこれまで何度も旅したことこそあれど、まだ自分の地図には沢山の空白地点の残る北海道だ。

今回、やらわかは北海道を約1週間かけ、約2500km以上走った。
特に観光地巡りをした訳ではないし、目指した場所があった訳ではない。
ただ、自分の行きたいところを旅した記録。
よろしければ是非、お付き合い願いたい。

つづく。