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まとめ記事(コンテンツ)
2024/03/15
ボルト強度区分、理解していますか?
前回、ハブリングの話のときに摩擦接合にちょこっと触れたが、機械の集合体である自動車の場合、ホイールだけでなく多くの部品が、構造力学で言う所の摩擦接合(=接触面の摩擦力で支える)によって取り付けられている。
この事実を知らないと、「サブフレームを留めるボルト孔は、組付けしやすさを考慮してバカ穴になっている。そのせいで段差を超える度にフレームがズレて動くので、挙動が不安定になる」とか、「特に日本車は組付けを重視して大きめの穴になっているので欧州車よりもズレやすく、それが剛性感の低い走りにつながっている」などというバカバカしい話を信じてしまい、「そのボルト孔の隙間を埋めてズレを防止し、足回りの剛性を上げる」というリジットカラーなる謎のオカルトパーツに手を出してしまう。
まあ、その程度なら(散財以外に)実害はないかもしれないが、最近はYoutubeなどの動画を見て、それこそ初心者が見様見真似で車を弄るケースが増えたが、中には危ないケースもある。
例えば「取り外したボルトが錆びていた(or舐めた)ので、ホームセンターで新しいボルトを買ってきて取り付けた」などとネットに意気揚々と上げたり・・・
知恵袋の車検・メンテカテを見ても、似たような質問で、質問者はもちろん、8割方の回答者はホムセンのボルトで代用してはいけない事すら知らない、という現実・・・(なぜいけないか解からない人は、最後まで読むべし!)
摩擦接合というのは、簡単に言えば、強度の高いボルト(≒高力ボルト)を使って強い軸力(≒締め付けトルク)で締め付けることで、必要な摩擦力を得ている。
解りやすく言うなら、壁に本を強く押し当てると、例えば辞書のような重い物でも落ちないというのと一緒(高校で学んだクーロンの摩擦法則を思い出してほしいが、ここで重要なのは垂直抗力)
ちなみに半可通の人(自動車評論家を含む)が「欧州車のホイールボルトの方が部品点数が少ないため剛性が高く、そのため剛性感の高い足回りになる」などと言うが、摩擦接合で重要なのは軸力であり、そのためボルトに求められるのは「剛性ではなく強度」である。
車の場合、頭に数字や記号が書いてあったりするボルトが多いが、これが強度区分で、交換するなら同等以上の強度区分のボルトを選ばないといけない。
(なお、組み合わせるナットもボルトと同等以上の強度が必要)

↑強度区分の刻印例
一方、ホムセンで一般的に売られているのは、頭に4.8と刻印されているように、強度の低いボルト(≒普通ボルト)なので、特に指定トルクが高い箇所の場合、その軸力に耐えられず、塑性域まで伸び切ってしまい、必要な摩擦力が得られずに母材間にすべりが生じて支圧接合(ボルトの耐せん断力で支える状態)に移行する。
こうなると、ボルトが折れるのは時間の問題。
正直、それがエンジンルーム内だったらまだしも、
足回り関係だとどうなるか?(※)
昨年、札幌で改造ジムニーのタイヤが飛ぶ事故があったのは記憶に新しいが、個人的には報道で言われたような「単なる整備不良」によるナットの緩みではなく、摩擦接合をろくに理解していないアフターパーツメーカー製のロングハブボルトやスペーサー、ワイトレ等を使ったこと自体が怪しいのではと思っている。
その話はまた今度。
注釈
(※)
純正ハブボルトには強度区分10.9の高力ボルトが使われていますが、社外品はHPなどを見ると材質は表示されている物が多いが、強度区分はまず明記されていません。
なお、強度区分10.9とは引張強度1000 N/mm²、降伏強度900 N/mm²です。
Posted at 2024/03/15 10:10:00
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