宗谷丘陵を走っていると、牧場で沢山の牛に会った。
小雨が舞い、ものすごい風の中だが、牛は草を食み、ゆっくりと移動する。
こちらを見向きもしない。

稚内に戻るとやっぱりここは晴れだった。
稚内名物の神殿のような防波堤の前で、地図を広げ今日のキャンプ地を決めた。

少し車で走ると珍しい石油成分が含まれた温泉、豊富温泉がある。
今日はそこで一日の疲れを癒すことにしよう。

北海道上陸2日目はこうして終わった。

豊富温泉はいい湯だった。

翌日は4時近くから太平洋側のクッチャロ湖に向けクルマを走らせる。
道北の山の中、すれ違うクルマは無い。
・・・ここでエンジン止まったら死ぬかもな。
そんな孤独感がここにはあった。

車載温度計では14.6度。

綺麗な朝日を拝むために外に出る。
場を包むのは静寂か。

と、思いきや、けたたましく鳴く鳥の声、動物の鳴き声でかなりウルサイ。
ちょっと怖いくらいに。

実際、でっかいシカは飛び出してくるし、デカイ鳥がこっち見てるしで、何と言うか、むき出しの大自然っていうのは時に凶暴だ。
おまけにここはヒグマの生息地。
霧まで出てきた。
こんなところで不幸な事故があってはいけない。
クルマに戻りゆっくりクルマを走らせると牧場に出た。
朝日が霧に照らされ言葉にならない美しさ。

クッチャロ湖は霧で何も見えないので南に進路を取る。
北神威岬に近づく。
内陸からの雲が巨大な山脈を乗り越え太平洋にこぼれ落ちる。
何とも荒々しい光景だ。

高く聳え立つ日高山脈。
日高山脈がオホーツク海に沈む最北端が神威岬とされているそうな。
外に出てみる。
山肌は険しく、風は激しい。
古くから信仰の対象とされてきたのも納得だ。

雲の流れが激しい。
これは面白い絵が撮れるぞと思ってしまう自分は変態なんだろうか。
ワッセワッセと三脚を組み、微速度撮影を開始。
風が激しく吹き、波が打ち付け、雲が舞い踊る。小雨も降る。
この世の終わり見たいな風景。
「スゲー、こえー、北海道すげぇー」とか叫びながらフード被り撮影。

近くの看板が目に入った。

“ヒグマ注意”

黙って三脚を畳み、クルマに戻る。
エンジンを掛け、再び北に進路を向ける。
まだ朝の6時である。