まとめ記事(コンテンツ)

2016/09/05

けいよん!05:Corner「ロックで走れば上手くなる!」

本田美都はクラスの中でもガサツで好き勝手に生きているように見えるが、父親が苦労して一人で育ててくれたから実はいつも我慢して生きてきた。








愚直でお人好しで純粋にクルマ好きで無邪気に笑う父親に迷惑を掛けたくないと思いつつも、それ故に抑圧されてしまう事もあり父親と本音でぶつかり合う事はしない。

「バカ親父が興味あるのはクルマだけだからな〜。お母さんも愛想つかして出て行ったのも解る気がする。趣味が仕事になってるのも考えものよね」とかブツブツ言いながら家の事は美都がしているのだ。
仕事にかまけて娘をあまりかまってはくれない父親に不満もある。

そんな父親に内緒で本田美都は18歳になるとコソッと自動車学校に通っていた。
心配掛けたくないし、バカ親父が夢中になっているクルマの正体ってヤツを知りたくなったのかもしれない。
何度か試験に落ちてようやく運転免許が取れた日に家のカーショップ本田に見慣れないクルマが停まっていた。








社員の女整備士の松田AZUがいつものように無愛想に「おかえり、美都」と声を掛けてくる。








「ただいま、AZUさん」
AZUは無愛想でヤンキーだけど美都は嫌いではない。
むしろこの人には学ぶべき何かがあるとすら感じていた。







「おっ、美都、おかえり!」
クルマ好きなバカ親父が凄くご機嫌だ。
また、クルマでも買い替えたわね……。
チャラチャラした乗り降りしにくいクルマばっか買うからな〜。
何で男ってあんな乗り心地の悪いスポーツカーが好きなんだろ?








すると「おい、美都!これっ‼︎」
親父が何かを美都の手に握らせた。







「!?…………………………………何?」

「やるよ。お前と同じ名前のクルマだ。表に停まってた黄色いクルマ……………………好きに使え」
と、バカ親父が照れくさそうに頬を掻いてる。







「免許取りに行ってたの、知ってたの?」

AZUが横から「おやっさん、アンタが自動車学校に行ってる時、いっつも居なくなるんだよ。何処に行ってんのか知らないけど、あたしが一人で店番させられっからね、たまんねえよ。そのクルマ、頼むから気をつけて乗りなよ。またおやっさんが仕事に手がつかなくなるから……」と聞いてもいないのに教えてくれた。







バカ親父はバツが悪そうにトルクレンチを持ってリフトに無言で行ってしまう。

AZUも「美都、運転はロックだよ。『8ビート』を刻んで走って練習すれば上手くなる。ブツけんなよ!」と言って作業中のクルマに戻っていった。
初心者の美都にはまだ意味が解らないが、きっとAZU自身にもよく解っていないで言っているのだろう。







「何、これ……………?ダッサいキーホルダー。……………でも…………ありがとう、お父さん……」







何年かぶりに「バカ親父」じゃなく、「お父さん」と呼んだ気がする。
美都はクルマを買ってくれたのが嬉しいのではなく、父親が自分をちゃんと見ていてくれたのが嬉しかったのだ。
高校生はいつも無駄に多感なのである。

ちなみにそのダッサいキーホルダーはAZUが選んだものだった。











つづく




Posted at 2016/09/05 19:34:19

イイね!0件

はてブに送る
はてブに送る

オススメ関連まとめ

マイページでカーライフを便利に楽しく!!

ログインするとお気に入りの保存や燃費記録など様々な管理が出来るようになります

まずは会員登録をしてはじめよう

みんカラ+新登場

リンレイ
リンレイ

カーグッズ

ニュース