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まとめ記事(コンテンツ)
2017/02/15
けいよん!12:Corner After The Rain
地面に雨粒が弾ける音で目が覚めた香鈴NANAは、日本に来て毎日欠かした事のない「峠の朝練」に行くのを止めた。

NANAの愛車のケータハム・セブン160はどう考えても幌をつけてまで雨の日に走る車ではない。

やる事のなくなったNANAはベッドで恨めしそうに雨雲を見てため息をつき、コンタクトレンズを入れるのも面倒で、雨音が気になって二度寝も出来きずにまんじりとしていると、脚もとに気紛れな愛猫バラキエルが珍しくジャレてきた。

「暇だわ……。ケータハムに乗りたい…」

雨の朝は時間を持て余し、香鈴NANAは愛猫のバラキエルをつい蹴飛ばしてしまうのだった。

朝の峠を走ってないので気分が乗らず学校にきたNANAは昼休みに教室のベランダでいつも授業中空ばかり見ている鈴木千野に声を掛けてみた。
「鈴木さん、いつも空を見ているのね?」

「えっ?あっ、うん……」と、千野は初めて話をした香鈴NANAに戸惑ったが、この転校生と話をしてみたいと思っていた。
「空が好きなの?」
「空が嫌いな人っているのかな?」

「そうね、色んな表情があって見てて飽きないもんね、空って。晴れてても曇ってても雨が降っても朝でも夕暮れでも星が降る夜も全部楽しいけど、ワタシは朝靄がかかって空気がピーンって張ってる空が好き」とNANAは朝の峠道を思い出しながら答える。
「昔はね、ただボ〜ッと空を見てるのが好きだったの。どんな天気でも大好きだったけど最近はちょっと違うんだ。雨が少し疎ましいの。ああ、今日はオープンにして走れないんだ……って思うようになった。いつの間にかクルマ中心の思考になったの。香鈴さん、ケータハムに乗っているんでしょ?」と鈴木千野は気になっているNANAの愛車のことを聞いてみた。
「NANAでいいわよ、鈴木さん。そうです、ケータハム・セブン160に乗ってます。私は雨の日は乗らないようにしてるわ」
「私も千野で良いよ。私はスズキ・カプチーノに乗ってます」
「えっ?カプチーノ!? ワタシ、カプチーノ、大好き‼︎ スズキのエンジンは最高よね!私の160もスズキのエンジンよ‼︎ K6Aエンジンなの。同じエンジンかな?」
人間はちょっとしたきっかけで距離が縮まる。
同じ趣味なら尚更だ。

「美都が私のはF6Aエンジンって言ってた。よく解らないけど…………」
千野はクルマが大好きになったが、詳しくはないのでエンジン型式なんかには無頓着だ。
「違うエンジンか〜。スズキの3気筒エンジンは官能的でたまらないわね!日本に来て女性とクルマの話するの初めてよ!あっ、いや二人目だ‼︎」とNANAは嬉しそうに話す。
「そうなの?NANAさんは人見知りせずにあっという間にクラスに馴染んだよね」
「父親の仕事で転校ばかりしてきたから………『慣れ』みたいモノね。一種の処世術が身についちゃった。小器用に人とリズムを合わせてるだけなのよ」
「今も小器用にリズムを合わせてるの?」
「どうかな?解らないけど、こうやってクルマの話が出来るのはすごく楽しいわ!」
とNANAは顔の筋肉が自然と緩んで笑っている事を気づいてない。
人間の表情は割と無意識だし自覚して計算高く生きるほどNANAは器用ではない。

「私の行きつけの自動車整備工場の人が『上手くなりたかったら雨の日に走れ!』って言うんだけど、やっぱりオープンで走りたいじゃない?」
「もしかして大河内峠に走りに行くの?私も朝練しに行くのよ!」とNANAはさらに千野に興味を持ちだした。
「あそこ、良いでしょ?低中速コーナーばかりで危なくないし、道幅があまり広くないから走るんなら………」
「軽自動車が最高よね!」と二人の声と心が重なりあう。
「あははっ、千野さん、雨が止んだら放課後走りに行かない?」
「うん、行こ、行こ!」

「携帯の番号を教えて!峠で待ち合わせしましょ?あっ、あと千野さんの行きつけの整備工場を紹介して。私の160のメンテナンスを頼みたいの!」
「ああ、それなら美都のお父さんの本田自動車整備工場が…」と千野が答えようとするとゾッとするような絶対零度の視線が彼女の側頭部に突き刺さる。

美都だ…………。
「どうしたの、千野?」
「あっ、ううん、何でもない…………。じゃあ、放課後に大河内峠で待ち合わせね。ケータハム、初めて見るから楽しみにしてるわ、NANA!」
だんだん近づくその距離に二人は思春期特有の青い剥き出しの屈託なさを自覚してないが、大人の階段を登っていきいつか振り返る時にそれを懐かしく思うものなのだ。
怒ってるわね、美都………。
何でああ好き嫌いが激しいのかしら?
仲が良い友達だからといって美都の全てを理解できるわけではない。

放課後になり千野は下駄箱で靴を履きかけてる美都を呼び止めた。
「ねえ、美都!大河内峠、美都も一緒に行かない?」

「今日は行かない……」と面倒臭そうに振り向く美都は間髪入れず拒絶する。
「どうして?美都も行こうよ。NANA、良い子だと思う。そんな第一印象だけで決めちゃ………」と言うや否や、

「嫌いなものは嫌いなの!あんなずっと外国にいた人間、理解出来る訳ないじゃん‼︎ そもそも『文化や風習は国境は越えない』の。誰とでも理解出来るなんて考えてる千野が傲慢なのよ!」
と美都の感情が噴き出した。
ここまで怒りを露わにした美都を初めて見たのでビックリして何を言えばいいのかわからずに佇んでいるうちに美都はさっさと帰っていく。
明らかに不機嫌そうに……。

千野は何かザラっとした気持ちのまま峠に行ったらNANAは先に着いて待っている。
「NANAもいる事だし今日は流すだけにしよう………。こんな気分の乗らない時は飛ばすものじゃない………」

千野はNANAのケータハム・セブン160に少し乗せて貰い、NANAにカプチーノにも乗って貰い、二人は無邪気にクルマの話を時間を忘れてしていた。
ココに美都がいない事の違和感をずっと感じながら………。
つづく

NANAの愛車のケータハム・セブン160はどう考えても幌をつけてまで雨の日に走る車ではない。

やる事のなくなったNANAはベッドで恨めしそうに雨雲を見てため息をつき、コンタクトレンズを入れるのも面倒で、雨音が気になって二度寝も出来きずにまんじりとしていると、脚もとに気紛れな愛猫バラキエルが珍しくジャレてきた。

「暇だわ……。ケータハムに乗りたい…」

雨の朝は時間を持て余し、香鈴NANAは愛猫のバラキエルをつい蹴飛ばしてしまうのだった。

朝の峠を走ってないので気分が乗らず学校にきたNANAは昼休みに教室のベランダでいつも授業中空ばかり見ている鈴木千野に声を掛けてみた。
「鈴木さん、いつも空を見ているのね?」

「えっ?あっ、うん……」と、千野は初めて話をした香鈴NANAに戸惑ったが、この転校生と話をしてみたいと思っていた。
「空が好きなの?」
「空が嫌いな人っているのかな?」

「そうね、色んな表情があって見てて飽きないもんね、空って。晴れてても曇ってても雨が降っても朝でも夕暮れでも星が降る夜も全部楽しいけど、ワタシは朝靄がかかって空気がピーンって張ってる空が好き」とNANAは朝の峠道を思い出しながら答える。
「昔はね、ただボ〜ッと空を見てるのが好きだったの。どんな天気でも大好きだったけど最近はちょっと違うんだ。雨が少し疎ましいの。ああ、今日はオープンにして走れないんだ……って思うようになった。いつの間にかクルマ中心の思考になったの。香鈴さん、ケータハムに乗っているんでしょ?」と鈴木千野は気になっているNANAの愛車のことを聞いてみた。
「NANAでいいわよ、鈴木さん。そうです、ケータハム・セブン160に乗ってます。私は雨の日は乗らないようにしてるわ」
「私も千野で良いよ。私はスズキ・カプチーノに乗ってます」
「えっ?カプチーノ!? ワタシ、カプチーノ、大好き‼︎ スズキのエンジンは最高よね!私の160もスズキのエンジンよ‼︎ K6Aエンジンなの。同じエンジンかな?」
人間はちょっとしたきっかけで距離が縮まる。
同じ趣味なら尚更だ。

「美都が私のはF6Aエンジンって言ってた。よく解らないけど…………」
千野はクルマが大好きになったが、詳しくはないのでエンジン型式なんかには無頓着だ。
「違うエンジンか〜。スズキの3気筒エンジンは官能的でたまらないわね!日本に来て女性とクルマの話するの初めてよ!あっ、いや二人目だ‼︎」とNANAは嬉しそうに話す。
「そうなの?NANAさんは人見知りせずにあっという間にクラスに馴染んだよね」
「父親の仕事で転校ばかりしてきたから………『慣れ』みたいモノね。一種の処世術が身についちゃった。小器用に人とリズムを合わせてるだけなのよ」
「今も小器用にリズムを合わせてるの?」
「どうかな?解らないけど、こうやってクルマの話が出来るのはすごく楽しいわ!」
とNANAは顔の筋肉が自然と緩んで笑っている事を気づいてない。
人間の表情は割と無意識だし自覚して計算高く生きるほどNANAは器用ではない。

「私の行きつけの自動車整備工場の人が『上手くなりたかったら雨の日に走れ!』って言うんだけど、やっぱりオープンで走りたいじゃない?」
「もしかして大河内峠に走りに行くの?私も朝練しに行くのよ!」とNANAはさらに千野に興味を持ちだした。
「あそこ、良いでしょ?低中速コーナーばかりで危なくないし、道幅があまり広くないから走るんなら………」
「軽自動車が最高よね!」と二人の声と心が重なりあう。
「あははっ、千野さん、雨が止んだら放課後走りに行かない?」
「うん、行こ、行こ!」

「携帯の番号を教えて!峠で待ち合わせしましょ?あっ、あと千野さんの行きつけの整備工場を紹介して。私の160のメンテナンスを頼みたいの!」
「ああ、それなら美都のお父さんの本田自動車整備工場が…」と千野が答えようとするとゾッとするような絶対零度の視線が彼女の側頭部に突き刺さる。

美都だ…………。
「どうしたの、千野?」
「あっ、ううん、何でもない…………。じゃあ、放課後に大河内峠で待ち合わせね。ケータハム、初めて見るから楽しみにしてるわ、NANA!」
だんだん近づくその距離に二人は思春期特有の青い剥き出しの屈託なさを自覚してないが、大人の階段を登っていきいつか振り返る時にそれを懐かしく思うものなのだ。
怒ってるわね、美都………。
何でああ好き嫌いが激しいのかしら?
仲が良い友達だからといって美都の全てを理解できるわけではない。

放課後になり千野は下駄箱で靴を履きかけてる美都を呼び止めた。
「ねえ、美都!大河内峠、美都も一緒に行かない?」

「今日は行かない……」と面倒臭そうに振り向く美都は間髪入れず拒絶する。
「どうして?美都も行こうよ。NANA、良い子だと思う。そんな第一印象だけで決めちゃ………」と言うや否や、

「嫌いなものは嫌いなの!あんなずっと外国にいた人間、理解出来る訳ないじゃん‼︎ そもそも『文化や風習は国境は越えない』の。誰とでも理解出来るなんて考えてる千野が傲慢なのよ!」
と美都の感情が噴き出した。
ここまで怒りを露わにした美都を初めて見たのでビックリして何を言えばいいのかわからずに佇んでいるうちに美都はさっさと帰っていく。
明らかに不機嫌そうに……。

千野は何かザラっとした気持ちのまま峠に行ったらNANAは先に着いて待っている。
「NANAもいる事だし今日は流すだけにしよう………。こんな気分の乗らない時は飛ばすものじゃない………」

千野はNANAのケータハム・セブン160に少し乗せて貰い、NANAにカプチーノにも乗って貰い、二人は無邪気にクルマの話を時間を忘れてしていた。
ココに美都がいない事の違和感をずっと感じながら………。
つづく
Posted at 2017/02/15 19:01:29
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