- 車・自動車SNSみんカラ
- まとめ
- その他
- マツダコネクト物語
- マツダコネクト物語:第三章
まとめ記事(コンテンツ)
タッチ_さん
2015/01/29
マツダコネクト物語:第三章
※この物語はフィクションです。登場する人物、企業、製品、団体等は実在するものとは全く関係ありません。創作ですwww
第三章:異変
2013年11月21日に発売となった新型アクセラの販売は順調だった。発売後1ヶ月の受注台数は16,000台を超え、月間販売計画3,000台に対して5ヶ月分以上に達している。納車は11月に3,623台、12月に3,015台、そして1月には4,476台となり、発売から2ヶ月と10日で10,000台を超えるアクセラがオーナーの手に渡り、日本の道を走り始めることになる。
2014年1月某日。マツダのウェブサイトの管理部門、ユーザーズボイスの担当・石井裕子は新たなアクセラオーナーが投稿したオーナーズボイスを公開してから「う~ん」と思わず眉間にシワを寄せてPCの画面を凝視してしまった。ほどなく部門長である渡辺が背後から声を掛けた。
渡辺:石井さん、どうした?難しい顔をして。
石井:あ、渡辺さん、すみません。いえね、今アクセラのオーナーズボイスをアップロードしたんですが、、、
渡辺:お、またアクセラか。販売好調だからオーナーズボイスの投稿も流石に多いな。
石井:そうなんですが、ちょっと気になる事があって。
渡辺:それは、、、マツダコネクトかい?
石井:えぇ。発売直後から不満を書き込むオーナーさんはポツポツ居たんですが、最近ちょっと目立って多いかなーって気がして、、、
渡辺:そうかぁ。う~ん。
渡辺は少し考え込んでから石井にこう指示をした。
渡辺:石井さん。3月の役員会にアクセラのユーザー評価を報告することになっている。新型車の発売後にやるいつものアレだ。ユーザーズボイスの傾向分析にマツダコネクトの満足度を加える件はお願いしていたと思うが、少し切り口を詳細にして分析してくれないか。単なる満足、不満足だけではなく、マツダコネクトの何に不満なのか?という風に。
石井:ハイ。わかりました。私も少し気になっていたんで、どんな声が上がっているかまとめてみます。
渡辺:頼むよ。
通常の新型車の市場投入直後、新しい機能に対する評価は良好な声が圧倒的多数を占める。そもそもメーカーのユーザーズボイスに投稿するオーナーは、購入した新車に対する満足度が高いためそういった傾向が顕著に現れる。もちろん不満を感じたオーナーが文句を書き込むというケースもあるが、それは全体としては少数派になるのがこれまでのユーザーズボイスの傾向だった。
ところが、今度のアクセラには明らかに従来とは異なる特徴があった。デザイン、乗り心地や動力性能、運動性能といったクルマに対する評価は非常に高い。それは好評を博したCX-5、アテンザと比較しても全く遜色が無いどころか、もしかしたら更に上回るのでは?というくらいであった。ところが、そんな高い満足度を感じているオーナーのほとんどが、ほぼ次のように声を揃えたのだ。
「マツダコネクト以外は満足」と。
この傾向は石井が指摘した通り12月下旬から目立ち始め、1月に入ると顕著になった。クルマに対する満足度が高いオーナーがほぼ全員、新機能に対して不満があるとハッキリ言及するというのは未だかつて無かった事である。渡辺は嫌な予感を覚え、一体何が起こっているのか、ユーザーズボイスの分析という切り口で役員会に報告する必要性を感じたのだった。
しかし渡辺の懸念はまだ序の口だった。彼はこの後の一ヶ月の間に更なる異変を目の当たりにすることになる。
ユーザーズボイスを読んだ人が好印象を持った投稿に「拍手」を付ける機能があるが、マツダコネクトに対する不満を多く書いた投稿に沢山の「拍手」が付くという現象が生じる。その数はアクセラを称賛したオーナーズボイスの「拍手」の数を超えはじめた。拍手の数は100を超え、サイトの「拍手の多いコメントランキング」で上位3件をマツダコネクトへの不満が占めることになる。過去の事例でも拍手が100を超えるというのは多くの人の共感を得た意見であり、そんな投稿自体が決して多くは無い。ということは、それだけ多くのオーナーがマツダコネクトに不満を持っている事を示している。この傾向は納車が進むにつれてより拍車が掛かり、このときから1ヵ月後の2月下旬にはかなり具体的、かつ詳細にマツダコネクトへの不満を訴えた投稿に、なんと1,000を超える「拍手」が付く事態にまで発展する。ユーザーズボイスサイトを開設以来の異常事態である。
異変はコールセンターでも同様だった。新型車の発売直後はそれに対する問い合わせ等は増える傾向にある。それは納車が進むに連れて増加傾向を示し、或る程度のところで頭打ちとなる。そして暫くしてから減少傾向に転じて収束するのだが、多少の長短は有っても数ヶ月は掛かる。そして次の新型車が発売になると…というサイクルを繰り返し、コールセンターの回線は或る程度の稼働率となるわけだが、今回のアクセラ発売に際しては、上からの指示でオペレーターの数を増強していた。異例の措置とも言えるが、日本では2番目の量販車種である点と、全く新しいコネクティビティシステムを搭載した点に配慮してのことだ。
コールセンターの責任者である加藤は、コールセンターの稼働状況を報告する週次レポートを見ながら苦虫を噛み潰した表情で溜息をついていた。11月下旬のアクセラ発売以降、コール数がハッキリと増加したことは驚くには当らない。しかしその増加率が異常であった。オペレーターを増やしたにも拘らず、回線稼働率はほぼ100%から下がることなく推移している。お客様からは「繋がり難い」状態だ。繋がったお客様が「なかなか繋がらなかった」と漏らした声の数も多く、用件はアクセラに集中、更にマツダコネクトに関するクレームが圧倒的であった。これが他車種に関する問い合わせ数を結果的に押し下げる状況を作り出しており、実質的にコールセンターは機能停止(パンク)状態に近い。
しかも、寄せられた意見はマツダコネクトのサポート担当に伝達しているものの、その返答のペースが遅い!したがって寄せられた問い合わせと回答をまとめ、対応時間を短縮するFAQ整備も一向に進まなかった。
加藤:一体どーなっているんだ!?
加藤は電話を取りサポート担当の田中の内線番号を押しかけて止め、その上司の松本の内線番号を調べたところで思い留まり、再び受話器を置いた。既に何度も連絡は取っていた。今再び問い合わせをしても、直ぐに何かがどうなるものでもないと悟ったからだ。かといってこのまま指を加えて何もしないワケにもいかない。定常時より大幅に増強したオペレーターの数を、更に増やすことを上申するか?そうするしかあるまいと思い稟議書に書く文章を考え始める。3月の役員会を待っている余裕はなさそうだ。
社内の顧客対応部局は混乱の中にあった。新型車の発売に伴う様々な対応で一時的に業務量が増えるのはいつものことであったが、今回は明らかに何かが違っていた。そしてその中心にマツダコネクトがあった。
実はアクセラの発売直前、全社のマネージャクラス以上にはアクセラの発売に伴って、搭載された新しいコネクティビティシステムに対するお客様対応について指示が出ていた。しかしながら、それに関する受け止め方は個々の社員によって温度差があった。「これは何か懸念があるな」と察する者、「全く新しい商品故に予測不能な事態も有り得る」という一般的な注意喚起と受け取る者、「新型車に搭載される、目新しい機能のひとつ」と、いつものこととしか考えなかった者。これは新商品に実は些か不安があるという点をあえて曖昧にする事で社内に要らぬ不安や混乱を起こさせない配慮があったからだが、熟慮の末のこの措置が結果的に災いした。市場投入直後の顧客対応は統一感を欠き、その動きは万全とは言い難かった。
しかも寄せられた多くの不具合報告は、主管部局である松本や田中の予想を超えて、ナビ以外の部分も含めて多岐に渡っていた。
そんな中、一通のメールが全社のマネージャ以上に配信された。
「2月の役員会にマツダコネクトに関する各部局での対応状況を報告せよ。」
通常新型車が発売になると、販売部門は受注並びに売上(納車)実績、オーナーの声を1ヵ月を目途に取り纏めて速報を作成し、発売翌月の役員会に報告すると共にニュースリリースをウェブサイトに掲載する。次は3ヵ月後で、より詳細な情報を取り纏めてやはり役員会に報告していた。アクセラの場合2013年11月21日が発売日だから、2014年2月20日までの状況を各部門が取り纏めて3月の役員会に報告するというのが本来のスケジュールであった。
ところがこの通達は、発売後3ヵ月を待たず、しかもマツダコネクトに限定しての報告を直ぐに上げろというものである。
これも異例の事態と言えた。
第三章:異変
2013年11月21日に発売となった新型アクセラの販売は順調だった。発売後1ヶ月の受注台数は16,000台を超え、月間販売計画3,000台に対して5ヶ月分以上に達している。納車は11月に3,623台、12月に3,015台、そして1月には4,476台となり、発売から2ヶ月と10日で10,000台を超えるアクセラがオーナーの手に渡り、日本の道を走り始めることになる。
2014年1月某日。マツダのウェブサイトの管理部門、ユーザーズボイスの担当・石井裕子は新たなアクセラオーナーが投稿したオーナーズボイスを公開してから「う~ん」と思わず眉間にシワを寄せてPCの画面を凝視してしまった。ほどなく部門長である渡辺が背後から声を掛けた。
渡辺:石井さん、どうした?難しい顔をして。
石井:あ、渡辺さん、すみません。いえね、今アクセラのオーナーズボイスをアップロードしたんですが、、、
渡辺:お、またアクセラか。販売好調だからオーナーズボイスの投稿も流石に多いな。
石井:そうなんですが、ちょっと気になる事があって。
渡辺:それは、、、マツダコネクトかい?
石井:えぇ。発売直後から不満を書き込むオーナーさんはポツポツ居たんですが、最近ちょっと目立って多いかなーって気がして、、、
渡辺:そうかぁ。う~ん。
渡辺は少し考え込んでから石井にこう指示をした。
渡辺:石井さん。3月の役員会にアクセラのユーザー評価を報告することになっている。新型車の発売後にやるいつものアレだ。ユーザーズボイスの傾向分析にマツダコネクトの満足度を加える件はお願いしていたと思うが、少し切り口を詳細にして分析してくれないか。単なる満足、不満足だけではなく、マツダコネクトの何に不満なのか?という風に。
石井:ハイ。わかりました。私も少し気になっていたんで、どんな声が上がっているかまとめてみます。
渡辺:頼むよ。
通常の新型車の市場投入直後、新しい機能に対する評価は良好な声が圧倒的多数を占める。そもそもメーカーのユーザーズボイスに投稿するオーナーは、購入した新車に対する満足度が高いためそういった傾向が顕著に現れる。もちろん不満を感じたオーナーが文句を書き込むというケースもあるが、それは全体としては少数派になるのがこれまでのユーザーズボイスの傾向だった。
ところが、今度のアクセラには明らかに従来とは異なる特徴があった。デザイン、乗り心地や動力性能、運動性能といったクルマに対する評価は非常に高い。それは好評を博したCX-5、アテンザと比較しても全く遜色が無いどころか、もしかしたら更に上回るのでは?というくらいであった。ところが、そんな高い満足度を感じているオーナーのほとんどが、ほぼ次のように声を揃えたのだ。
「マツダコネクト以外は満足」と。
この傾向は石井が指摘した通り12月下旬から目立ち始め、1月に入ると顕著になった。クルマに対する満足度が高いオーナーがほぼ全員、新機能に対して不満があるとハッキリ言及するというのは未だかつて無かった事である。渡辺は嫌な予感を覚え、一体何が起こっているのか、ユーザーズボイスの分析という切り口で役員会に報告する必要性を感じたのだった。
しかし渡辺の懸念はまだ序の口だった。彼はこの後の一ヶ月の間に更なる異変を目の当たりにすることになる。
ユーザーズボイスを読んだ人が好印象を持った投稿に「拍手」を付ける機能があるが、マツダコネクトに対する不満を多く書いた投稿に沢山の「拍手」が付くという現象が生じる。その数はアクセラを称賛したオーナーズボイスの「拍手」の数を超えはじめた。拍手の数は100を超え、サイトの「拍手の多いコメントランキング」で上位3件をマツダコネクトへの不満が占めることになる。過去の事例でも拍手が100を超えるというのは多くの人の共感を得た意見であり、そんな投稿自体が決して多くは無い。ということは、それだけ多くのオーナーがマツダコネクトに不満を持っている事を示している。この傾向は納車が進むにつれてより拍車が掛かり、このときから1ヵ月後の2月下旬にはかなり具体的、かつ詳細にマツダコネクトへの不満を訴えた投稿に、なんと1,000を超える「拍手」が付く事態にまで発展する。ユーザーズボイスサイトを開設以来の異常事態である。
異変はコールセンターでも同様だった。新型車の発売直後はそれに対する問い合わせ等は増える傾向にある。それは納車が進むに連れて増加傾向を示し、或る程度のところで頭打ちとなる。そして暫くしてから減少傾向に転じて収束するのだが、多少の長短は有っても数ヶ月は掛かる。そして次の新型車が発売になると…というサイクルを繰り返し、コールセンターの回線は或る程度の稼働率となるわけだが、今回のアクセラ発売に際しては、上からの指示でオペレーターの数を増強していた。異例の措置とも言えるが、日本では2番目の量販車種である点と、全く新しいコネクティビティシステムを搭載した点に配慮してのことだ。
コールセンターの責任者である加藤は、コールセンターの稼働状況を報告する週次レポートを見ながら苦虫を噛み潰した表情で溜息をついていた。11月下旬のアクセラ発売以降、コール数がハッキリと増加したことは驚くには当らない。しかしその増加率が異常であった。オペレーターを増やしたにも拘らず、回線稼働率はほぼ100%から下がることなく推移している。お客様からは「繋がり難い」状態だ。繋がったお客様が「なかなか繋がらなかった」と漏らした声の数も多く、用件はアクセラに集中、更にマツダコネクトに関するクレームが圧倒的であった。これが他車種に関する問い合わせ数を結果的に押し下げる状況を作り出しており、実質的にコールセンターは機能停止(パンク)状態に近い。
しかも、寄せられた意見はマツダコネクトのサポート担当に伝達しているものの、その返答のペースが遅い!したがって寄せられた問い合わせと回答をまとめ、対応時間を短縮するFAQ整備も一向に進まなかった。
加藤:一体どーなっているんだ!?
加藤は電話を取りサポート担当の田中の内線番号を押しかけて止め、その上司の松本の内線番号を調べたところで思い留まり、再び受話器を置いた。既に何度も連絡は取っていた。今再び問い合わせをしても、直ぐに何かがどうなるものでもないと悟ったからだ。かといってこのまま指を加えて何もしないワケにもいかない。定常時より大幅に増強したオペレーターの数を、更に増やすことを上申するか?そうするしかあるまいと思い稟議書に書く文章を考え始める。3月の役員会を待っている余裕はなさそうだ。
社内の顧客対応部局は混乱の中にあった。新型車の発売に伴う様々な対応で一時的に業務量が増えるのはいつものことであったが、今回は明らかに何かが違っていた。そしてその中心にマツダコネクトがあった。
実はアクセラの発売直前、全社のマネージャクラス以上にはアクセラの発売に伴って、搭載された新しいコネクティビティシステムに対するお客様対応について指示が出ていた。しかしながら、それに関する受け止め方は個々の社員によって温度差があった。「これは何か懸念があるな」と察する者、「全く新しい商品故に予測不能な事態も有り得る」という一般的な注意喚起と受け取る者、「新型車に搭載される、目新しい機能のひとつ」と、いつものこととしか考えなかった者。これは新商品に実は些か不安があるという点をあえて曖昧にする事で社内に要らぬ不安や混乱を起こさせない配慮があったからだが、熟慮の末のこの措置が結果的に災いした。市場投入直後の顧客対応は統一感を欠き、その動きは万全とは言い難かった。
しかも寄せられた多くの不具合報告は、主管部局である松本や田中の予想を超えて、ナビ以外の部分も含めて多岐に渡っていた。
そんな中、一通のメールが全社のマネージャ以上に配信された。
「2月の役員会にマツダコネクトに関する各部局での対応状況を報告せよ。」
通常新型車が発売になると、販売部門は受注並びに売上(納車)実績、オーナーの声を1ヵ月を目途に取り纏めて速報を作成し、発売翌月の役員会に報告すると共にニュースリリースをウェブサイトに掲載する。次は3ヵ月後で、より詳細な情報を取り纏めてやはり役員会に報告していた。アクセラの場合2013年11月21日が発売日だから、2014年2月20日までの状況を各部門が取り纏めて3月の役員会に報告するというのが本来のスケジュールであった。
ところがこの通達は、発売後3ヵ月を待たず、しかもマツダコネクトに限定しての報告を直ぐに上げろというものである。
これも異例の事態と言えた。
Posted at 2015/01/29 22:05:12
イイね!0件
オススメ関連まとめ
-
2020/08/14
-
2025/11/30
-
2020/08/29












