前回のブログでマツダスピードの登場の可能性について述べましたが、じゃぁマツダは今後「スポーツグレード」のようなものをどうしようとしているのか？という話。

単に「マツダスピードは出ないでしょう」だけなら、誰にだって解ります(^_^;)。

所謂「標準グレード」に対して、俗に言う「スポーツグレード」は、主に次のような仕様があります。

①より強力なエンジンを積んだもの。
②エンジンは基本的にそのままに、足回り等を徹底強化したもの。

マツダスピードアクセラは①です。ゴルフのGTIも今はそうですね。勿論、強力なエンジンの搭載だけに留まらず、それに見合った各部の強化、再調整は行われます。一方②ですが、ホンダのTYPE R、最近ではスバルBRZ tSなんかがコレに当ります。「TYPE Rのエンジンは標準モデルより強化されている」とツッコミが入りそうですが、それはコンセプトが途中から進化した故です。詳しくはコチラを参照（笑）。

メーカーがこういったスポーツグレードを設定する目的は大きく２つ。そのクルマの販売台数を伸ばす（上乗せ）することと、車種のイメージを向上して標準グレードの販売を拡大すること、です。

これらの目的を見事に達成しているのがBMWのM、メルセデスのAMG、AudiのS/RSシリーズなど。
失敗しているのがホンダのTYPE R、マツダのマツダスピードなど(苦笑)。レクサスのF SPORTSもまだ途上、スバルのSTIが比較的上手くやっていると言えるくらいで、この辺りは国産メーカーはどこも課題と言えそうです(^_^;)。

さてマツダですd(^.^)。

"走る歓び"を掲げるこのメーカーの車種毎、或いはマツダというブランド全体のイメージを向上させるスポーツグレードとはどんなか？それには先ず、マツダの標準グレードがどのようにして"走る歓び"を実現しているのか？ここに着目する必要があります。

ボクの愛車のアテンザ、そして前愛車のアクセラSKYACTIVも同様でしたが、いずれも旧来のスポーティーなクルマとは、かなり趣を異にするものです。

先ず、パワーユニットに驚くほどのパワーやトルクがありません。まぁクラスの標準的な水準です。
そしてシャシー性能ですが、姿勢変化は小さくありません。ロールもピッチもそれなりにします。その一方で、乗り心地は姿勢変化が大きい割りには締まっていて、悪くはありませんが素晴らしく良いかと問われると、う～んという感じです。

わざとこういった書き方をしているんですが、どれも嘘ではありません。そしてこう表現すれば「それってスポーティーなクルマなの？」「それで走りが楽しいの？」という疑問が湧きますよね？(^_^;)
おおよそ走りを自慢するクルマらしからぬこれらの特性がそこかしこに見られるマツダ車なのですが、ビックリするのはココからです。

とにかく、走らせて楽しいクルマなのです。。

しかしそれは、アドレナリンが分泌されて興奮する楽しさとはかなり違います。どちらかというと"心地良い"という感じ。嬉々としてコーナーを駆け抜けるというより、ひとつひとつのコーナーを抜けながら、思わずニヤリと口元が緩むというイメージです。

クルマは極めて素直に思い通りに動きます。それは軽快と表現出来るモノですが、挙動はあくまで自然。刺激的なクイックな反応はむしろありません。アテンザなどは超ロングホイールベースとワイドトレッドで、軽快感を出すのは難しい筈ですが、十分、軽快です。俊敏性を高めると一般には安定性が落ちます。しかし、リアがしっかりしていて安定性を犠牲にして軽快感を演出している風でもありません。姿勢は大きく変化しますが、全く嫌じゃないんです。サーキット仕様のクルマを長く乗っていたボクにはこれがもっとも革命的で、乗り心地を優先すれば姿勢変化は大きくなり、姿勢変化が大きくなればスポーツ性は落ちるという常識が、昨今のマツダ車には全く当てはまらないのです。

結果的に、クルマを操る実感に富み、運転していて全く飽きません。

最近は毎日、仕事帰りの妻を迎えに往路1時間、復路30分のドライブをしていますが、自宅に帰ってくると「あぁ、今日のドライブももう終わりか。。。」という、なんとも残念な気分になります。セカンドカーにNSXを持っていますが、サーキットを走りに行くのでなければアテンザの方が楽しいと思わせる、この魅力(魔力)は一体、なんなんだ？というところです。

つまり、マツダの標準車は確かに"走る歓び"を実現しているんですが、それは一般的なスポーティなクルマの方程式、足回りを固めて姿勢変化を抑え、速さを追求することによって得られる走りの楽しさとは、かなり異質なモノと言えます。その楽しさに「速く走る」という要素は極めて薄いのです。

ってな感じに"走って楽しい"を実現しているが故に、これらのスポーツグレードが難しい。何を目指し、何を高めることによって、どのような価値を創造したり、ブランドイメージ全体を如何にして底上げできるのか？

ここが問題なワケです。さぁ困ったぞっと(^_^;)。

よりハイパワーなユニットを積むという選択肢は現時点では無いのですが、仮にそれをやったとしてブランド価値が高まるのか？標準グレードが云わばクラス平均水準ですから特徴にはなりますが、そもそもソコに価値を置いていません。どちらかと言えばレスポンス等、ドライバーの操作に対するリニアリティを追及しています。やるとすれば更なるハイレスポンスの追求であって、モアパワーではないでしょう。

足回りを強化して限界性能を高めるか？標準グレードが比較的大きな姿勢変化を許すことから、安定性は十分と言えども限界自体はさほど高くはないでしょう。しかし足を固めて姿勢変化を抑えて限界を高めてやって、果たして標準グレードが持っている乗り味はスポイルされないのか？

というように、標準グレードに無い個性を持たせる派生グレード（云わば枝葉）はいくつか考えられますが、ブランドイメージ全体を高める方法論として、旧来のスポーツグレードの方程式が、そのまま有効とはちょっと思えないんですね。ここがボクを悩ませる「どうしようとしているのか、ちょっと想像が付かない」点です。

しかも、今のマツダ車が持つ"走る歓び"を実現する特性は、一般にはとても解り難いものです。お友達がブログのコメントで「アクセラは純粋に走りを楽しめるグレードが少ないように感じる」とコメントをくれたんですが、カタログやメディアの試乗記を読んだだけでは、そういった印象を持っても然りです。SKYACTIVテクノロジーや魂動デザインに興味を持たなければ、わざわざ試乗に行く気にもならないでしょう。試乗すれば「乗り易い」という印象は確実にあると思いますが、市街地の短い試乗で「いつまでも走っていたいくらい運転が楽しい」と感じられるかも疑問です。なぜなら解り易いスポーティーさは既に述べた通りでありません。動き過ぎる姿勢に「ただの大衆車レベル」という第一印象を持つことも十分に考えられます。

この辺りがボクの心配する部分でもあり、今のマツダのクルマ造りに感じる"危うさ"でもあります。

また、今日のブログをまとめていてフッと思い付いたもうひとつの心配事も、、、(^_^;)。

つづきはコチラ。