
レクサスにとって最重要の新型ISに乗ってきました。
乗る前にはみなさんのレビューも拝見し、全体的に好評だったので実車を確認する日を楽しみにしていました。感想の多くは、充分に速い、剛性がしっかりしている、ハンドリングが良い、デザインも実物はなかなか良い。が、おおむね共通の評価でした。私の場合は、特にデザインとエンジンフィールが気になります。
お店に到着してまずはデザインを拝見します。写真より実物が良いというのはその通りだと思いました。ここ最近の日本車としては頑張っている方だと思いますが、まだまだ残念な部分もあります。例えばキャビンのフォルムや処理は前ISとも見間違える位に保守的です。
私には顔とお尻に激辛スパイスを使って特異に見せているだけの小手先のデザインに見え、正直まだまだ高揚感も強さも優しさも無いと思ったのが第一印象です。ヘッドライト下の隈取りのようなLEDランプも将来的に馴染まないと思うし、リアのバンパーとサイドモールの流れもこれ見よがしで好きになれません。
現行クラウン発表時、トヨタのデザイン部門の責任者が、「少しエグみを感じるデザインの方が後から良さを感じるものです。」と言ったことがありました。これは、BMW在籍時にクリスバングルが似たことを言っており、その言葉に影響を受けたのかなと感じました。この言葉の考え方自体には私も賛同するのですが、トヨタのデザイン部門の解釈は少し異なるようにも思います。バングルのデザインは発表当時としては確かにエグみがありましたが、それでも全体や細部のバランスの良さは保っていました。変わったラインやフォルムはあまり使用せずに、オーソドックスな塊感と適度なエグみを調和させた美しさが、彼のデザインの魅力だったのだと思います。トヨタの場合は部分部分を奇抜にしたという感じです。
ISはキャビンがいたって普通なのに前後の部分をかなり思い切って奇抜にしたことで、前、横、後、が別のクルマのようです。全体を見ても盛られて取り付けたケバケバしいエグみであり、バランスの良さもあまり感じません。だから、後に見慣れたとしても、バングルデザインのように後から良いと思えることは、私は無いかなと思います。
私は赤いISを見た時、ガシラ(魚の)を思い出しました。アメリカや中国ではこういったデザインが人気なのかもしれませんが、少なくとも私は好きになれません。
そもそもスピンドルグリルはAudiのグリルの考え方の表面的な部分を、模倣したデザインと感じています。日本を代表するメーカーが堂々とリスペクトという建前でコピーでしょうか。オリジナリティーが無さすぎて残念です。更には「このカッコイイスピンドルグリルを全車共通のアイコンにします」と宣言するという自己満足丸出しの戦略。そして、全車揃ったところで「やっぱりデザインしにくいので辞めます」と・・・。一体何がしたいんだ。と感じます。
美しいモノは、大抵バランスが良いものです。彫刻でも絵画でも建築でも色や形のバランスがとても良い。レクサスは理屈で美しさを並べ立てているだけで、本当の美しさではないように感じます。LFAのデザインを見れば、トヨタのデザイン力の低さを晒しているとしか思えません。美しいスーパーカーは作ったことありませんという悲壮感がデザインを通して伝わってきます。クルマの世界でも日本人デザイナーが世界で羽ばたいていますが、日本メーカーはもっとデザインに力を入れて欲しいと感じています。奥山清行、永島譲二、原田則彦、和田智など、世界でご活躍の素晴らしい日本人デザイナーは沢山いるのですから。
デザインへの拘りが出過ぎてしまいました。次は試乗の話です。2車種を乗ることになりました。一番の売れ筋である300h(ハイブリッド)と250(ガソリン)の2台です。先に300h、ハイブリッドらしい走りでエコ、ノーマル、スポーツが切り替えられます。はじめはエコで試したのですが、とても静かで車体の上質さは感じられましたが感動はありません。率直な感想としては無味無臭。頭の中では走る家電のようなイメージが浮かびました。走る掃除機でしょうか。個人的にはもう少し自動車らしい生々しさが感じられればいいのになと思います。
次にスポーツモードを試しました。スポーツモードではエンジン音が良く聞こえ、多少はその気にさせてくれるのですが回転域が短くすぐに頭打ちします。300hは4気筒
ターボですが、BMWの4気筒ターボと比べると回転させる気持ち良さが少なく感じます。少しヘンな例えになりますが、口を「い」にしながら「あぁぁぁ〜」と叫ぶような抜けきらない感じです。もっと吹けて、もっと吐き出して、もっと前に進め!この家電!というのが率直な印象でした。この300hのエンジンはどうやっても好きになれないというのが、私の結論です。
ハンドリングは軽目で運転のしやすさがありました。が、イマドキそれは普通かもしれません。それよりもハンドルのセンターに輝く「L」のエンブレムが大きすぎてそのダサさに気が取られました。高級車を謳うのにインテリアデザインが古くさくて、オジンくさいというのもはいかがなのでしょう。。それともオジンくさいものこそが、トヨタにとっては高級車なのでしょうか。だとすれば概念の変革が必要です。インテリアの質感は良いのにちょっとしたところがデカかったりイモかったりバランスが悪くてもったいないと思いました。
足回りは上質だと思いました。激しい凸凹道を走っても突き上げない優秀な足回りでした。車体剛性も設計も新しく高度になっている分、総合的に良いパッケージングになったと思います。他の日本車に比べると、動力性能のポテンシャルを感じる素晴らしさもありました。ただしロールは少し大きめのセッティングで、その味付けは日本車らしい解釈です。
300h、まとめると私には普通のエコカーでした。私にはエンジンがとって付けたような感じでつまらなかったです。なによりエコを求めすぎたせいか走りにまったく拘りを感じません。シャーシとエンジンのバランスも取れていないように感じました。これでも一番売れてるのが300hらしいですが、、、私には売れている理由がエコカー以外には解りません。
気持ちを切り替え、250に乗せていただきました。こちらはV6エンジン。乗って少し走っただけで買うならコッチだと思えました。こちらは走らせる楽しみがありました。いい位のパワーと扱い易いトルクを低速に集めているので走っていて楽しかったです。なによりも家電ではありません。きちんと良いクルマです。ハンドリングのバランスもエンジンフィールとリズミカルに繋がって好印象なフィーリングでした。パドルを使えば更にキビキビと走り、音も含めてとても楽しい。こちらに乗ってから思いましたが300hの方は、重たいハイブリットシステムを積んでる割に、パワーが足りないのでハンドリングに悪印象を与えたのだと思います。250はバランスが良く、乗ってて楽しく良いクルマだと感じました。こういったクルマもあることを思うとまだまだこれから先も楽しみです。
しかし、両方に乗って思ったことですが、ISの目指しているものは何なのかということ。
ISを通してドライバーが感じる一貫性のようなものが見あたらないのです。
例えば、BMWなら思いのままに気持ち良く駆け抜けること。Audiなら圧倒的な安定感が生み出す安心感と共に走ること。Mercedesなら、最上級の移動空間として上質に走ること。それぞれのメーカーや車種にある軸のような走り方があると思います。LSでもGSでもISでも共通しているトヨタの考える「レクサス」とは何なのかが感じ取れないのです。パンフレットなどでは「おもてなし」なんて書いてありますが、そういうことではありません。
重要なのは、レクサスの店舗デザインや接客や販促物のレベルが高いことではなく、運転して「楽しい」と思える、「欲しい」と思えるクルマを出すというシンプルなことです。欲しいと思えたり、良いと思えるクルマだったら、店舗をアロマで充満させなくても、コンシェルジュなんて居なくても買いに行きます。まぁ、そうでないモノを創って売ってるんだと言われればそれまでですが・・・。
BMWのF30の320でもE90の320でもディーゼルでも、六気筒でも、一貫した「BMW製の動力感」を感じます。そういう意味ではISに乗って、まして二台も乗って、共通点が何も残らないのはとても残念なことです。それが今のIS、並びにレクサスへの感想です。これでは本当に豪華な店舗運営とコンシェルジュ代が殆どのクルマだと感じてしまいます。
トヨタにはドイツ車にも負けない素晴らしいクルマを開発して欲しいと思います。日本車的な高級車作りの先にある、世界的な高級車作りを取り入れて、クルマ作りに活かして欲しいと感じます。新型レクサスIS、残念ですがまだまだ欲しいとは思いません。けれども、日本車が少しずつでも変わり始めていることは感じます。今後、もっともっと魅力的なクルマを創ってほしいと思います。トヨタならやってくれると楽しみにしています。
Posted at 2013/07/20 16:31:28 | |
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