2017年06月21日
EyeSight ver3との違い
スバル 新型アイサイト・ツーリングアシストが目指す、より安全なドライブの理想形|EyeSight ver3との違いを徹底解説
オートックワン編集部
「ぶつからないクルマ?」スバルのアイサイトに2017年夏、最新型が登場!
各メーカーがクルマの安全装備に独自の名称を付けているが、認知度のナンバーワンはスバルの「EyeSight(アイサイト)」だろう。「ぶつからないクルマ?」というTV・CMの効果もあり、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備の代表となった。アイサイトは今ではバージョン3に進化して、新型インプレッサやレヴォーグなどは全車に標準装着している。従って装着率が100%に近づいた。
またアイサイトバージョン2装着車についても、過去4年間の事故調査を実施したところ、装着車は非装着車に比べて人身事故が61%、車両に対する追突事故は84%低減されたというデータがある。アイサイトが事故防止に有効な安全装備であることが実証された。
このアイサイトが新たに進化することが発表された。アイサイト・バージョン4では?とも噂されたが、実際には「アイサイト・ツーリングアシスト」と呼ばれ、運転支援の機能を充実させ登場した。2017年7~8月にマイナーチェンジを受けるレヴォーグとWRX・S4の全車に搭載する予定だ。
新型アイサイト・ツーリングアシストはバージョン3の進化版
アイサイトは2個のカメラをセンサーに使い、歩行者や自転車も検知して、衝突の危険が生じると警報を発したり緊急自動ブレーキを作動させる。この機能を利用して、アイサイトは以前からドライバーの疲労を抑える運転支援の機能を充実させてきた。
まずは全車速追従機能付きのクルーズコントロール(ACC)がある。この装備を使うと、先行車がいない時は、ドライバーがアクセル/ブレーキペダルの操作をしなくても設定された速度(時速30~100キロ)で走行する。
先行車を検知すると、一定の車間距離を維持しながら、追従して走ることが可能だ。全車速追従だから、停車状態まで機能がキャンセルされずに継続する。制御が途切れなければ、ドライバーはペダル操作をする必要がない。
バージョン3では、アクティブレーンキープの機能が採用されている。全車速追従機能付きクルーズコントロールを作動させ、なおかつ時速65キロ以上で走っている時は、車線内の中央付近を走行できるようにハンドル操作を支援する。
新しいアイサイト・ツーリングアシストは、運転支援の機能をバージョン3から、さらに進化させたものだ。
停車時~上限時速120キロまでに、運転支援の速度域を拡大
機能の進化として、まずは速度の変更がある。以前は上限速度を時速100キロとしていたが、今後は高規格・高速道路の建設も想定されるため、上限を時速120キロに引き上げた。
逆に低速域は、アクティブレーンキープの機能を従来の時速65キロ以上から停車時まで広げている。クルーズコントロールと同様の全車速対応になった。
ただしアクティブレーンキープを全車速対応にして渋滞時まで使えるようにすると、車線を常に検知できるとは限らない。高速道路には1本/8mの車線が12m間隔で引かれているため、徐行時にはカメラの視界が12m間隔の部分に入ってしまい、車線を見失う場合がある。
そこで先行車を検知して追従できるようにした。車線を見失っても、先行車を検知していれば追従走行を続けられる。
つまり時速約60キロ以上では、車間距離を制御する目的で先行車を検知するが、時速60キロ以下では、操舵の支援にも利用するわけだ。時速60キロ以下になって先行車を検知して操舵の支援を行うようになると、インジケーターに表示される先行車の絵柄が青色の枠で囲まれる。
なお時速60キロ以下で走行中に、車線と先行車の両方を検知している時は、この2つの要素に基づいて操舵支援を行う。比率としては車線が70%、先行車が30%だ。そのために車線の中で先行車が左右に動くと、自車も引きずられるように少し動くが、車線は跨がない。
また左右に引かれた車線の内、左右のどちらかを検知できていれば、操舵の支援を続ける。カメラがドライバーと同様、車線と併せて道路全体(道幅)を検知していれば、仮に車線が見えにくくても正確な操舵支援を維持できるだろう。しかし開発者によると「情報量が増えすぎるので、車線の検知にとどめている」とのことだ。
このほか高速道路上の工事などによって走行速度が下がり、なおかつ車線が消されている時も、先行車に追従できれば操舵の支援が途切れない。
自動停車後3秒以内であれば、先行車に続いて自動発進
スバル レヴォーグ1.6 STIスポーツのプロトタイプで試すと、追従走行時には車線検知のためにハンドルが左右に小刻みに動くが、日産 セレナに搭載されるプロパイロット(高速道路 同一車線自動運転技術)に比べると違和感は少ない。左右に動く頻度も減っている。
先行車が加減速を行った時の追従性は、ドライバーの感覚にピッタリとはいえないが、おおむね良好だ。追従走行時に停車する寸前のブレーキの緩め方も相応にできており、乗員の体が停車の度に前後に揺すられることはない。
自動停車した後、電動パーキングブレーキ装着車であれば停車状態を維持できる(パーキングブレーキがレバー式の場合は2秒後にATのクリープで再発進する)。再発進はスイッチ操作で簡単に行えるが、自動停車後3秒以内であれば、先行車に続いて自動発進する。
開発者は「3秒以内の停車なら自動的に再発進しても危険はないと判断した」というが、道路環境はさまざまで、停車直後に人が横切る可能性も否定できない。クルーズコントロール作動時でも、常にブレーキペダルを踏める姿勢を整えておくことが大切だ。
また操舵支援だから、ハンドルを常に保持していることが前提になる。手放しで10秒を経過すると警告が行われた。ハンドル保持のセンサーは鈍く、ハンドルを触っているだけでは警告される。この時はわずかにハンドルを動かすと警告が終了した。つまりハンドルをしっかりと保持することが前提で、安全な利用を考えれば、むしろ好ましい設定だろう。
速度とカーブの曲がり具合に応じて、制御の限界も設けられている。時速40キロでは70R、時速100キロなら100Rが限界で、これよりもRが小さくなると制御がキャンセルされる。操舵支援を行いながら急なカーブを曲がることが可能だと、白線や先行車を検知できなくなった時、挙動が不安定になる心配が伴うからだ。
割り込みに対する反応は素早い。リアビークルディテクションはドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知するが、このセンサーによって車両側も周囲の状況を把握しており、2個のカメラセンサーの視野も広がったから、割り込みをされた時のブレーキングが従来以上に的確になった。
自動運転技術のアピールではなく、あくまでも安全装備の一種
なおアイサイト・ツーリングアシストは、従来のアイサイトバージョン3に比べて、特に新しいメカニズムは追加していない。ソフトウェアの変更だから、価格の上昇を抑えられる。
また、アイサイト・ツーリングアシストは、自動運転に結び付く運転支援ではあるが、その目的はドライバーの疲労を軽減して安全性を高めることだ。このあたりの考え方は「自動運転技術」をアピールする日産とは違う。
現時点では、カメラなどのセンサーや制御機能は安全性の向上を目的としており、運転支援は副次的な機能に位置付けられる。最近はこの主従を間違えたアピールや論調が増えているが、開発者は「あくまでも安全装備の一種」だとしている。
そうなるとアイサイト・ツーリングアシストが、運転支援を充実させただけでは矛盾が生じるが、今回の改良では夜間に歩行者を認識する性能も高めた。つまりアイサイトの安全機能も進化している。今後はバージョン4といった呼び方はせず、アイサイト・ツーリングアシストとして進化させるという。
本来あるべき運転支援のあり方
アイサイト・ツーリングアシストに追加されるカメラ以外の安全機能には、後退時の緊急自動ブレーキがある。車体の後部にソナー(音波)センサーを備え、後退時に衝突の危険が生じると警報を行い、回避操作が行われない時は緊急自動ブレーキを作動させる。
従来のアドバンスドセイフティパッケージは、アイサイトセイフティプラスに名称を変える。現時点で採用されるリアビークルディテクション、ハイ/ロービームを自動的に切り替えるハイビームアシストに加え、液晶タイプのスマートリアビューミラーも装着する予定だ。
これはリアウインドウに装着されたカメラ映像をルームミラーに表示する装備で、荷物をたくさん積んだ時でも後方視界を確保できる。映像もキレイだが、従来の鏡と違って目の焦点を合わせにくい欠点がある。
このほかフロントグリルと助手席側ドアミラーに内蔵されたカメラ映像を、マルチファンクションディスプレイに表示して死角を補う機能も装着した。
最近は「自動運転」が先進技術として取り上げられるが、アイサイト・ツーリングアシストを含めて、すべてクルーズコントロールの進化版に位置付けられる。
そしてドライバーの感覚として、ペダルの操作は支援を受けても運転している自覚が削がれないが、ハンドルから手を離すと、急激にクルマ任せの意識に陥ってしまう。
その意味でアイサイト・ツーリングアシストは、10秒間の猶予を与えたものの、ドライバーがハンドルを常に保持することを求めている。こういった制御は、安全を踏まえた本来あるべき運転支援のあり方だろう。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:和田清志]
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Posted at
2017/06/21 10:23:40
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