「オートモビルカウンシル」2023、日本車編です。
日本のヘリテージカー、いや「旧車」って言った方がいいですね。魅力的な国産旧車をいっきに眺めることができるのはこのショーの大きな魅力です。それは毎回変わりません。今回も、見どころがたくさんありました。
== トヨタ ==
スポーツ800(1969年)

「ヴィンテージ宮田自動車」の展示。日本の旧車を得意とする、この三重県のショップは毎年参加しています。

このショップさんの展示は、毎回なにかしらスゴかったり希少だったりします。

このトヨタスポーツ800は4年間生産されたうちの後期型にあたるそうです。見た目でいえば、フロントフェンダー前方のサイドマーカー(側面ウインカー)がわかりやすいとのこと。

ヨタハチのリア。番号灯に取り付けられたバックランプがどこかユーモラス。
カローラレビン(1973年)

実は今まで知らなかったのですが、初代いわゆるTE27型は、1972年に発売されてからたったの2年間しか生産されていなかったのですね。

こんな魅力的な車がなぜそんな短命で終わったのか。

当時、この手のコンパクトスポーツクーペはさぞかし人気だったでしょう。厳しい排気ガス規制が敷かれるのは1975年(昭和50年)からのはずです。
セリカ XX 2000GT(1985年)

まるで新車のようなダブルエックス。ちょっと見ただけでとても大切にされてきたであろうことが伝わります。

実際、奇跡的なコンディションの1台だそうで、価格も「応談」になっています。

抜群の状態なのは、この純正シートカバーを見ても分かると思います。

写真ではわかりませんが、デジタルメーターを装備しています。

横いっぱいにワイドに広げられたリアランプ。この時代のトヨタ車に共通していますね。
== 日産 ==
まずは日産自動車の公式ブースから。
スカイライン 2000GT(1970年)

これは、このショーでも毎回1台は展示されている「PGC10型」GT-Rではなく「GC10型」2000GTですね。

GT-Rのような太いタイヤではなく、リアのホイールアーチも違います。それから、ボンネットに取り付けられたクロームの飾りがなんだか贅沢。初代セドリックからの流れ?いやプリンス・スカイラインスポーツかな。

当時は羨望の的だったのでしょうね。このシンプルなリアも好みです。
セドリック・シーマ タイプⅡ リミテッド(1990年)

日本一有名なシーマ。女優の伊藤かずえさんが所有する車です。以前からメディアで取り上げられていますね。日産により新車同様にレストアされています。

初代シーマ。上品かつ力感のあるボディはバブル絶頂期の日本で大ブームを引き起こしました。エンジンは3リッターV6で、なかでもタイプIIリミテッドに搭載されたターボ仕様は255馬力。ベンツの560SELより豪快な加速をしたとか。

丸みを帯びたシルエットがとても印象的。オリジナリティがあります。日本の仏像からインスピレーションを得たとデザイナーが雑誌のインタビューで答えていました。

シンプルかつハリがある。前後のライトなど、トヨタならサイドに大きく回りこませて豪華な印象を持たせるところ、この車はスッパリ切り落としている。インフィニティQ45などもそうですが、この時代の日産ビッグカーには独特の良いセンスがあります。

内装を改めてみてみると、案外シンプルといいますかあっさりしています。木目パネルも控えめです。屋根から吊り下げられた前席シートベルトは、この時代のピラーレスハードトップ車ならではですね。

細く横長のリアコンビネーションランプも、よく見るとレンズにまるで彫刻刀で削ったような綺麗なくぼみがあります。これで、シンプルながらも起伏を持たせている。うまいデザインですね…
フェアレディZ Version S(1998年)

こちらは日産社員さんの愛車とのこと。

あえてのウイングレスでしょうか。無茶苦茶センス良いと思います。

オーナーは若い女性です。学生時代からこの4代目Z32を手に入れることを目標にされてきたそうです。
パオ(1989年)

このパオのオーナーも若い方、20代前半の男性です。

今も時々日産パオは路上で見かけます。この魅力的なリアはつい追いかけたくなります。

それにしても、自分よりずっと年上の旧い車を愛車にする。簡単に書きましたが本当にすごいこと!
ダットサン・フェアレディ2000(1969年)

ヴィンテージ宮田自動車です。前回は
1967年のフェアレディ2000が展示されていました。そちらは純白でしたが、こちらは英国車っぽいクリームホワイト。

再塗装済みだそうで、やはりとても綺麗。

シートも張り替えているとのこと。黒一色の、なんの装飾もないスパルタンな内装が、まさに正統派オープンスポーツ。ギアが5速まであるのが分かるでしょうか?この時代で5速です。
Z432(1970年)

去年も展示されていた車と同じでしょう、Z432です。

珠玉のエンジン。だけでなく、ボンネットヒンジの造り込みも相当です。修理が大変そう。

総生産台数419台で、わずか数十台現存するうちの1台です。
スカイラインGT-R(1972年)

日産のブースに展示されていた2000GTと比べると、かなり印象が違います。これは意外でした。

独特の近寄りがたさがありますね。

当時ならではの赤一色のリアランプ。そういえばこのスカイラインもそうですが、この時代の車は前後それからサイドでウインカーの色がそれぞれ違うことがありますね。
== ホンダ ==
S360

ホンダ公式のブースです。これは試作されたのみで市販を果たせなかったスポーツ360。その試作車もとうに廃棄され残っていないとのこと。

では、この車は?

これは2013年にホンダ自身によって復刻された車です。同年の東京モーターショーでも公開されており、2016年のオートモビルカウンシルでも展示されました。私も、この車を見たのはこれで3度目。記事にしたのも3度目です。

ない部品は再生産し、当時の設計図をまとめ直し読み直し…復刻にはかなりの苦労があったと、説明員の方から熱く語っていただきました。
T360

そのS360が積んでいたエンジンはこの軽トラと同じ。DOHCエンジンを積む軽トラ。農道のスポーツカー。

カバのようなデザインは愛嬌たっぷり。当時のディーゼル機関車にも通じる印象。

それにしても、このフレンチブルー的な明るい青が綺麗。これがT360のイメージカラーということになるのでしょうか。
S600 クーペ(1972年)

「プラネックスカーズ」出品車。

改めて感じるのは、すごく小さな車だということ。ショップの方とも盛り上がりましたが、ホンダSは本当に小さい。

この小さな空間を見てください。昔と比べ人間の平均身長は伸びていますが、それにしたって当時の車は小さかった。

クーペモデルのこの車のリアゲートも開けていただきましたが、今の感覚からするとまるで小窓のような感じでした。

相対的にエンジンが大きく見えます。というか、今の車はエンジンのほうがどんどんコンパクト化しているんですよね。サイズも排気量も。
== 三菱 ==
今年は三菱自動車がブースを構えていました。展示車は最新の三菱各車そしてラリー&レーシングカーです。
eKクロス EV(2023年)

こちら三菱というかNMKVですかね。ともかく、最近の三菱車はイイカンジです。この無骨さ、決して悪くありませんよ。

兄弟車のサクラとどちらか選べと言われたら、かなり悩みます。って、そういえば
日産サクラ も展示されていたじゃないですか。
NMKV の車ってことで、こちらに載せてみます。
アウトランダー(2023年)

現行のアウトランダーです。まずはその外観。厳ついといえばそうなのですが、不思議とワルっぽさはない。キラキラしたレンズや大きなクローム装飾など、演出の手法は派手なのに品悪くはなっていない。とても良いと思います。三菱はこの手法で高級サルーンを復活させてみたらどうだろう?

その内装にも感心しました。贅沢というより質の高さを感じる。凝ったデザインですが不思議とごちゃついた印象は受けません。

そして運転席に座ってみると視界が良好で車両感覚がつかみやすい。どこかスバルにも似た感じです。そして内装のレザーに施されたステッチがナイス。
エクリプス・クロス PHEV(2023年)

こちらも好印象の1台。とても格好いいですよこの車。

実車に触れるまで、そのクーペスタイルのため特に後方視界が犠牲になっているだろうと勝手に思っていましたが、実際には決してそんなことはない。良心的です。ってか車って乗らないと、座ってみないと分かりませんね…

かつての三菱車の良さって、ひとつには独特の無骨さと真面目さにあったと思います。バンカラ優等生みたいな。いま、三菱はそれを思い出したのかも。
アウトランダーPHEV(2015年)

第20回アジアクロスカントリーラリーに参戦した車です。
MiEV EvolutionⅢ(2014年)

こちらは2014年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに参戦した車。ドライバーは増岡浩さんです。
== マツダ ==

マツダの公式ブースです。テーマは「ロータリーエンジンの可能性の追求と新しい価値への挑戦」、ロータリーエンジンを積んだマツダ車が。
コスモAP

車内はウッド調パネルが貼られていてとても良い印象でした。
RX-8 ハイドロジェンRE

水素ロータリエンジンを積んだ車。ガソリンとのデュアルシステムで航続距離は600kmといいますから充分に実用的でしょう。マツダはロータリーこそ水素燃料に向いていると主張しています。
MX-81(1981年)

滅多に見られないコンセプトカーです。1981年に開催された第24回東京モーターショーにて展示されたコンセプトカー。未来の高級スポーツクーペの提案で、ボディはベルトーネが制作しています。

回転式シート。運転席にはハンドルのかわりにCRTモニタがあり、それに各種情報が表示される。奇抜に思えますが、いまの車はインパネが液晶モニタで占められています。この車はまさに未来を先んじていますね!

モニタのまわりのキャタピラ状のものがハンドルのかわり。ここはちょっと先んじすぎていますね…

2021年にイタリアにてレストアされ、いまでも自走可能だそうです。コンセプトカーってそもそも走行不可だったり、展示後は廃棄されることも多いと思いますが、この車には関わった人たちの熱い思いがあるのでしょうね。
最後に、日本発のEVコンセプトを。
== AIM ==
EV SPORT 01

名古屋のエイム。自動車のエンジニアリングを手がける会社です。

このデザインは元日産の中村史郎氏によるものだそうです。

クラシカルな印象と近未来感が融合していて、とても魅力的です。車が完成したのはこのショーに展示する前日だったそうです。まるでプリンス・スカイラインスポーツのようなエピソードです。
以上、
オートモビルカウンシル2023でした。
回を重ねるたびに展示台数が増えていて、今回は公式によると166台。リアルタイムでショーの成長に触れられます。これはちょっとした楽しみになっています。完璧に仕上げられたレストア車両だけでなく、商用車や現地仕様車などマニアックな旧車も展示されているのは大いにシナプスを刺激されます!
来年2024年は、4月12日(金)から14日(日)の3日間とのこと。
楽しみです!!