
毎年恒例、千葉幕張メッセでの
「オートモビルカウンシル」
当初は春開催の予定でしたが、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス(COVID-19)のため2度にわたり延期。7月31日〜8月2日の開催となりました。私も今回ばかりは行ってみようか悩んだのですが…開催にあたり厳重な対策をしているとのことで、思い切って行ってみました。
まずは、無事に成功させた主催者さんに敬意を表します。たいへんな苦労があったと思います。
オートモビルカウンシル2019
オートモビルカウンシル2018
オートモビルカウンシル2017
オートモビルカウンシル2016
今回、感染防止対策として全員のマスク着用や事前の体温測定はもちろん、入場制限や事前のアプリ登録(千葉市コロナ追跡サービス)などが実施されました。そして、当初予定されていたライブ演奏などもすべて中止。例年にも増して静かで落ち着いた展示会になりました。
まずはドイツ車から。
== メルセデス・ベンツ ==
300SE(1963年)

前回も展示されていた、300SE(LWB)です。ヤナセが運営する「ヤナセ クラシックカーセンター」にてレストア中の車両。吉田茂元首相が晩年に所有していた車です。

お客様お預かり車両。現在の所有者って、吉田元首相の孫の麻生太郎副総理?
って思いヤナセのスタッフに聞いてみましたが(去年は聞けなかったので)…今のオーナーは麻生さんではないそうです。

総理在任中に当時の西ドイツを訪れた吉田総理は、アデナウアー首相に「メルセデス・ベンツを買う」と約束した。しかし当時は輸入制限があったため1963年(昭和38年)にやっと実現。「われ約束を果たせり。新しいベンツに本日から乗っている」と吉田翁はアデナウアーに電報を打った。

美しいストーリーだと思います。
同センターでこれからレストアするという3台。「最善か無か」のメルセデス!
560SL(1989年)
えらくロングライフだったR107のSL。560SLは排ガス規制の関係から日本・アメリカ・オーストラリアのみの販売で、欧州では500SLが販売されていた。1989年式ってことは最終モデルですね。

エレガントですよねぇ…何とも言えない良さがあります。いま、こういうデザインは難しいでしょう。でも、どこかやってみても良いと思うのですが…ミツオカあたり?
500SL(1991年)

こちらはその次の代、R129の500SL。前回出品されていたシルバーの500SLと同じ車のようです。改めて、R129のこのスタイルは先進的です。メルセデス・ベンツって変えるときは思い切って変えますよね。
E280(1995年)

みんな大好きW124!

いろんな車がマネた台形テール&ナナメ切れ込みトランクリッド。よくよく考えると、これだけ開口部が大きいのに相応の強度を保ってるわけで、さすがです。多くの車は、この見た目だけマネしたに過ぎません。

3台ともボディカラーはシルバー。代表的カラーのはずが、いつの間にか少数派になってしまった感があります。とはいえ、メルセデスにはやっぱり銀色が似合うのではないでしょうか!
500SE(1991年)

バブル期に街にあふれたW126のSクラス。しかもロングの500SELではない。なにげに希少ではないでしょうか。これを最初に買った人はドライブ好きに違いありませんね!
この時代のメルセデスは他のブースにもありました。
500SL(1989年)

こちらのR107は500SL。「WANNA DRIVE」の展示。正規モノ560SLより欧州仕様500SLのほうがむしろハイパワーで、当時は並行輸入で日本に入ることも多かった。私もカーグラフィック誌の後ろの方の広告で見た記憶が(笑)

この白い500SLも、新車並行輸入で入ってきた車だそうです。内装はネイビーブルー。外も中もすごく綺麗です。
190E 2.6(1993年)
「MOTOR Logic Company」出品の190Eです。しかも2.6、この年式は最終モデルですね。

SPORTSLINEではないのでスポーツシートもリアスポイラーも付かない。でも2.6リッターの直6。このエンジン、「ついにメルセデスはBMWのユニットを手に入れた」と評したジャーナリストがいたと記憶しています。

しかもこの価格。どなたかいかがでしょう…私も欲しいです(爆)
190E 2.5-16 Evo2(1989年)
190といえばこれも。「AUTO ROMAN」出品の2台。

よく知らないので改めて調べたのですが、全生産台数は502台のみなんですね。しかも最近は「25年ルール」でアメリカに渡るケースもあるとか。この車を手に入れても、たくさん走って楽しむなんてことはしないのが当たり前なんでしょうね。修行みたいです…
190E 2.5-16 Evo2 Look(1990年)

こちらはLook仕様だそうですが、ホンモノと区別が付きません(汗)
190SL(1958年)
ヤナセに戻ると、保管用バルーン「カーカプセル」に入ったレストア中の190SLが。

このアメリカ製バルーン、少し聞いてみたのですが10万円を少し超える程度の価格からとのこと。思わず「安いですねぇ」なんて答えてしまいました(笑)

内部の空気を循環させ車の状態を最適に保つこのバルーン、屋内・屋外用とあるそうです。旧車にお乗りの方、いかがでしょうか?

190SLですが、レストアのためにはやはりドイツから部品を取り寄せなければならない。しかし、メーカーに言えば今でも新品で部品が手に入るとのこと。さすがです!
170H(1936年)
そして、きわめて歴史的なこの1台。

「なんだか変わった形のビートルがあるなぁ」なんて思ったらこれです。三つ目のヘッドライト、違和感のあるスリーポインテッドスター。

私が説明しても仕方ないので、詳細はこちらの解説をご覧ください。

フェルディナント・ポルシェ設計によるリアエンジンのベンツ。ビートルにもつながる設計。

1936年。ナチスが猛威を振るっていた時代。ベルリン・オリンピック開催年です。

スタッフの方のご厚意により運転席に座ることが出来ました。ふわふわしたシートは、今のドイツ車とは全く違います。

「すごい車を見た!」というより、その歴史的背景に圧倒されます。

1936年。その後、ヒトラーに率いられたドイツは焦土と化し、国土を削られ分断されたわけです。しかし、この車は今も生きています。
== BMW ==
2002(1974年)
やっと次のメーカーです(笑)

BMWの出展といえば常連の「シンプルオート」。3シリーズの源流、マルニです。

右ハンドルですね!珍しいと思います。当時のカタログってとても良いですよね。素朴というか、表紙からしてその車が欲しくなる(笑)

視認性の良さそうな四角いリアランプ。トランクリッドはちょっと重そう。
3200 CS(1966年)

わずか3年ほどしか生産されなかった高級クーペ。デザイナーはジウジアーロ。って、知りませんでした…

V8エンジンです。総生産台数はほんの600台ほど。まさにコレクターズアイテムです。

この美しい尻下がりデザインを、若き日のジウジアーロが手がけたわけです。

オートモビル・カウンシル2020 カーオブザイヤー受賞車!
スバッロ BMW 328(1974年)

こんな車もありました。スバッロってスイスのビルダーですよね。オリジナルだけではなく、こういうレプリカモデルも展示されるのはとても面白いですね、
== ポルシェ ==
Beck GTS

これもレプリカですね。新車で買えるポルシェ904!

北米Beck社による精巧なレプリカ。それを日本で買えるというのですから、良い時代です。もちろん私は買えませんよ(爆)
356B Super 90
こちらは「ガレーヂ伊太利屋」出品のポルシェ356です。

元はホワイトだったものをスレートグレーに塗り替えたそうです。スレートグレーって、空冷911に多い色ですよね。内装はレッドでした。

911に連なるスタイル。この時代ですでに完成されていますね。

水平対向4気筒、1,600cc、90馬力。商談成立したのでしょうか。
== フォルクスワーゲン ==
ゴルフ2専門店「スピニングガレージ」から。ショーの常連さんです。毎回、出品を楽しみにしています。2台のゴルフをじっくり観てきました。
ゴルフ CLi(1986年)
前期型、ガンメタ、左ハンドル。

スタッフさんたちのフレンドリーさは変わらず、快く車を観ることができました。

この時代のフォルクスワーゲンは視界が良い。とても良い。今の技術で、この周囲の見やすさを実現できないものでしょうか。センサーや360°カメラも良いのですが…どうせやるならAピラーを透明にするとか(爆)

角度の立ったフロントウインドウは圧迫感がなく快適。今の車はフロントが寝ていく一方です。空力はもちろん、対人安全性も考慮しなければならない。それはわかるのですが、それら要件を満たしつつもフロントは立てて欲しい。いま、軽のハイトワゴンが日本で大人気な理由のひとつは、圧迫感のない立ったフロントウインドウを持つ点だと思います。

水平基調そのものですね。なのでどの席に座っても圧迫感がない。
ゴルフ CLi(1986年)
後期型、白、右ハンドル。

ダッシュボードなんて「質感?なにそれ?」ってな感じですが、安っぽくは感じないのはなぜなんでしょうね。バイアスがかかっているかな。それはあるのでしょうけど。

高い位置にあるオーディオやエアコン、とてもわかりやすい配置のスイッチ類。今の車も、すこし手本にした方が良いでしょう。それにシートがとてもしっかりしています。

後席もいいですね。座面を一段上げ、背筋を伸ばして座らせる。シートバックを寝かせたりなんかするより、長距離で快適なのは絶対こっちですよ。見晴らしもいいし。

ラゲッジも広く、この車でコストコに行っても、よほど買いまくらない限り困らないでしょう!
タイプ1(1952年)
最後にまたヤナセへ。輸入第一号の初期型ビートル。前回出品時には保存用のバルーンに入っていてよく見えなかったのですが、今回は晴れて堂々展示。

ヤナセとフォルクスワーゲンについて、ヤナセスタッフの方から興味深いお話をたくさん伺うことが出来ました。

この時代から、フォルクスワーゲンはヤナセを信頼し、積極的に日本に車を売り込もうとしていた。ヤナセもそれに応え、日本の環境に適応するための対策など、積極的にフォードバックしていた。

なんと新車発売前のテストなどもヤナセが実施していたそうです。輸入権を持っていたのがヤナセだったとはいえ、フォルクスワーゲンの日本法人が出来る前からその仕事をカバーしていたわけです。

フォルクスワーゲン自身も、日本の顧客に対し「カスタマー第一主義」で対応していたと。メーカーから配られた定規には、それを示す言葉が彫られていたそうです。

車の良さだけではなく、売る側の熱意や誠意というのは国やメーカーに関係なく必要ですね。

いま、フォルクスワーゲン日本法人(VGJ)は「日本市場を販売台数の規模以上に重要視している。なぜなら日本市場で要求される高い品質レベルを満たすことは、他国の市場でも成功を収められることを意味している」と公式に発言しています。ヤナセの情熱はVGJに引き継がれたのでしょう。素晴しいことです。

最後に、メルセデス170Hを前にしてパチリ。やはり強い血縁関係を感じさせます。
←次回はイギリス車をアップします。