先週の話になるのですが、去る4月11日に神奈川県横須賀市にある海上自衛隊横須賀基地にいってきました。
目的は・・・・
横須賀基地で開催される護衛艦「いずも」特別公開です。
9000名限定の特別公開ということで、募集があったのですが往復ハガキを書いて出してみたんです。
そうしたら・・・

あたったんですよ~☆
まさか当たるとは思っていなかったのでものすごくうれしかったですね。
何でも4万人の応募があったとかで倍率が4倍以上。
ち・・・注目度高かったんですね。
まずはJR横須賀駅からすぐのところにあるヴェルニー公園に向かいました。
ここは海上自衛隊横須賀基地と米海軍横須賀海軍施設を目前にすることができるわけです。
横須賀駅を出るとすぐに護衛艦「いずも」の姿が見えてきました。

で・・・でかい・・・・
とにかく「巨大」の一言です。
護衛艦「ひゅうが」を初めてみたときかなりの巨大さに圧倒されましたが、それ以上のとてつもなさを感じました。

別アングルから。
私は13:30~の第4回公開だったので、先のグループ(第2回、3回公開)の人たちを遠目にみることができました。
大盛況のようですね、第4回公開までには少し時間があるのでこの間に食事や休憩をしていましたが、今すぐにでも見に行きたいですね。

YT-68「曳船68号」(排水量260トン)が航行していました。
YT68号は260トン型と呼ばれる曳船でいわゆる「タグボート」です。
海上自衛隊の艦艇が港湾にはいってきたとき、接岸・離岸の支援をするのがこの曳船です。
ライフジャケットを着たたくさんの人がいますが・・・・?
実はこのいずも特別公開では曳船や交通船の体験搭乗も行われてたんです(もちろん抽選でですが)。

護衛艦「いずも」の鼻先を交通船YF-2146「交通船2146号」(排水量6トン)が進みます。
長さ11メートル、6トンの小型船ではありますが、「いずも」の巨大さを感じます。
この交通船は30名程度の人員を乗せることができます。
曳船と同じく交通船も体験搭乗が行われていたのでその関係でしょうか?

交通船2146号と曳船66号とのツーショット。
YT-66「曳船66号」は上の曳船68号と同型船で昭和60年9月に竣工しています。

こちらはYT-67「曳船67号」。
もちろん260トン型と呼ばれる曳船で上の66号、68号と同型船です。
船橋上部にみえる赤いものは放水銃で消防船としても使えるそうです。
この260トン型のうち横須賀基地の曳船68号、74号、79号は東日本大震災では福島第一原発事故の際に冷却水を輸送した給水支援作戦「オペレーションアクア」に参加しています。
原発の冷却水を確保するために米軍横須賀海軍施設の油脂用艀(バージ)に水を搭載して原発まで曳航するオペレーションなのですが、曳船はある程度の航行能力があるとはいえ、港湾内での運用が前提なので速力11ノットと低速な上に凌波性も良いとはいえません。
放射能汚染区域でしかも津波で原発施設周辺に瓦礫などの障害物があることも予想されるなかでの作業は想像を絶するものがあると思います。
放射線防護用の鉄板やタングステン板を窓などに取り付けて作戦を行ったそうです。
未曾有の大災害ではこの260トンしかないタグボートに日本国の運命を託して命がけの災害派遣活動を行っていたわけです。

一方「いずも」の飛行甲板。
こうしてみてみると艦首旗ちいさっ!
もちろん艦が巨大だからそうみえるわけですが、「いずも」の全幅は38メートル。
護衛艦「しらね」型(幅17.5メートル)の2倍以上!
学校の25メートルプールを横においてさらに余裕が13メートルあるわけですから本当に巨大に感じます。
さぁ時間が来ました。
基地にはいりましょう。

胸どきどき、呼吸はぁはぁ(※動悸息切れではありません)いざ横須賀基地へ。
公開対象者9000人を4つのグループにわけてるので大混雑というよりは意外と空いていました。
このゲートをくぐったところでチケット(当選ハガキ)をチェックしてもらって中に入ります。

横須賀地方総監部の正門です。
この奥で荷物検査をうけます。
今回液体(ペットボトルや水筒)をもってきてる人は荷物検査の場所で一口飲んで問題ないかの”毒見”確認を行いました。
毒物や液体の爆発物だったらえらいことですからこういった検査は大切ですね。

で・・・・でかい・・・
護衛艦「いずも」の全高は49メートルといいますから、航空自衛隊のE-767早期警戒管制機やKC-767空中給油機の全長(48.5メートル)、ビルなら14~15階建てに匹敵します。
航空祭では巨大なE-767やKC-767を垂直に立てたと思うと巨大さがわかります。
「いずも」の艦首部では地方協力本部の広報がおこなわれていました。
海上自衛隊横須賀音楽隊の音楽演奏が行われていました。

さぁいよいよ岸壁に入ります。
フェンス外から1枚。
とにかく「巨大」というのが印象ですね。
現役の護衛艦は小型のもの(「あぶくま」型でも109メートルと結構大きいので、大型の「あたご」型(165メートル)をみても意外と受ける印象としての巨大さは変わらない(並ぶとしっかりわかりますよ)のですが、「いずも」は別次元と思えるほどの巨大さを感じます。
「いずも」の全長は248メートル。
これは「はつゆき」型と「あぶくま」型を一列に並べたのに匹敵します。

・・・圧倒されますね。
ここで護衛艦「いずも」について簡単に紹介を。
ヘリコプター搭載護衛艦DDH-183「いずも」(基準排水量19500トン)はヘリコプター搭載護衛艦「しらね」の後継として配備された海上自衛隊最新・最大の護衛艦です。
平成22年度に整備がおこなわれ、平成24年1月27日にジャパンマリンユナイテッド横浜事業所 磯子工場で起工されました。
翌年平成25年8月6日に進水し、「いずも」と命名されました。
そして竣工は平成27年3月25日。
この特別公開のわずか2週間ちょっと前に完成して引き渡されたばかりのできたてホヤホヤの超最新の護衛艦です。
配属先はここ横須賀の第1護衛隊群第1護衛隊です。

見た感じ「ひゅうが」型護衛艦に似ていますね。
(清水港で行われた護衛艦「ひゅうが」の一般公開の模様は
こっち)
護衛艦「いずも」は「ひゅうが」型の拡大版なので全体の印象は「ひゅうが」と似ていますが、排水量にして5500トン、長さにして51メートルというかなりのボリュームを増したわけです。
護衛艦「あきづき」型の基準排水量が5050トンですから1隻分以上の拡大になります。
海上自衛隊ではぶっちぎりで巨大な艦艇ですが、満載排水量が24000トンといわれていますので、満載では補給艦「ましゅう」型(満載排水量25000トン)よりちょっとだけ軽いことになります。
ではじっくりねっとりみていきましょう。
※護衛艦「いずも」に関する書籍がまだ少ないので「ひゅうが」型や進水直後に発行された「世界の艦船2013年11月号」を参考にしました。
間違っていたり情報が古かったらごめんね。

右舷艦首スポンソンに設置してある球体のものはUSC-42衛星通信アンテナです。
米海軍との衛星通信用ですね。

艦構造物です。
煙突をはさんで前後に艦橋が設置されていますね。

艦橋前に設置されたシーRAM(左)とNORA-7スーパーバード衛星通信アンテナ(白い巨大なドーム)。

シーRAMは米海軍が開発した近接防衛システム(CIWS)で、高性能20ミリ機関砲の射撃統制装置に小型の艦隊空ミサイル発射機を組み合わせたものになります。
海上自衛隊では「いずも」が初の装備になります。

前部艦橋部です。
艦橋の横に張り出して設置されているのはNOLQ-3電子妨害装置です。
敵からレーダの照射を受けた場合、これを分析して妨害電波を出して相手の射撃レーダや対艦ミサイルに対して電子的な妨害を図るものです。
艦橋の窓の上にある四角いものはOPS-50三次元レーダ。
その上の白い金魚蜂を逆にしたようなものはNORA-1スーパーバード衛星通信アンテナ、その上にある白いドームはヘリコプター用のデータリンクアンテナ。
さらにその上にある棒状のものはOPS-20対水上レーダ、その上の円盤状のものはOPX-11敵味方識別装置アンテナ、マストの頂上についてるのはTACANアンテナです。
現在の艦艇は電子装置の塊ですね。

右舷には短魚雷発射管・・・?
ではなくてMOD(自走式デコイ)です。
魚雷からミを守るための装備で、敵潜水艦がこちらに向けて魚雷を発射したとき、ここからデコイを投射します。
最近の魚雷は誘導魚雷で、ソナー(音を感知する)を装備していますのでこのデコイからは音響を発生させて敵魚雷を欺瞞・誘引して引き離すための装備です。
「あきづき」型護衛艦から装備された新装備ですね。

艦構造物を後方から。
後部艦橋はマストが無い以外は前部艦橋と似ていますね。
面白いのはこの前部艦橋と後部艦橋は繋がっていないんです。
前後の艦橋の間には煙突が2基ありますが、その間は隙間があって分かれてるんです。
この隙間には補給ステーションがあります。
3300キロリットルのの燃料補給用の燃料を搭載できるそうで、他の護衛艦に対してある程度の燃料や真水の洋上補給ができるそうです。

右舷舷梯部。
艦首側にあります。
「いずも」は非常に大型の艦艇なので岸壁には艦橋がある右舷に接岸することになります。

こちらは車両用ランプ。
護衛艦「いずも」はヘリコプターだけでなく車両の輸送が可能です。
陸上自衛隊の3 1/2トン大型トラックなら約50両を搭載することが出来るそうです。
今回艦内の見学はこのランプをつかって中にはいりました。

右舷後方から。
飛行甲板にはヘリコプターがいますが、その下はなにやら大きく張り出していますね。
これは何でしょう?

実はこの右舷の張り出しは超大型のエレベータになっているんです。
米海軍の航空母艦もこのように飛行甲板の端の一部がエレベータになっています。
「いずも」は2つの大型エレベータがあって、第1プラットフォーム(エレベータ)が艦橋よりも前側の艦中央部付近に、そして第2プラットホームがこの右舷後方にあります。
エレベータの使用重量は30トンのようで、フル搭載の全備重量状態でなければ大型ヘリコプターのCH-53Eやチルトロータ機V-22も楽々昇降ができるようです。
大きさは長さ15メートル×14メートル。
このエレベータが昇降してヘリコプターを格納庫から飛行甲板へ移動させます。
米海軍の原子力空母のエレベータ部はこのように広大なドアを開放させて、万が一の事態(火災や敵の攻撃を受けた場合)は格納庫内で発生した爆風を逃がしますが「いずも」も同じねらいなのでしょうか(聞き忘れた・・・・)

右舷の第2プラットフォーム後方にあるこの空間には作業艇が収納されます。
大型の艦艇なので接岸ではなく沖合いに停泊する場合も多いと思いますが、作業艇は陸上や他の艦艇との交通などにも使用されます。

艦尾です。
左右にはCIWSが設置されていますね。
右舷には20ミリ機関砲を用いた高性能20ミリ機関砲、左舷にはシーRAMになっています。
艦が大きいので死角になる部分も当然あるでしょうからこうやってお互いの近接防空エリアをカバーしてるんでしょうか。
さぁ外観をじっくりみたところでいよいよ艦内です。
見学者の人数が多いことや安全上のためなんでしょう、右舷舷梯ではなく先ほどの車両搬入用ランプから艦内に入りました。

艦内にはいると広大な空間がありました。
ここは航空機格納庫です。
写真は第2エレベータ区画の前から艦首方向を写したもので、奥の明るくなっているのが第1エレベータ区画です。
エレベータ部はレイアウトの関係上格納庫としては使えない(床が下がってきちゃいますからね)のですが、それでも長さ125メートル×幅21メートル×高さ7.2メートルという広大な格納庫を確保しています。
写真では格納庫の真ん中あたりにシャッタ枠のようなものがみえます。
ここから艦首側を第1格納庫、後方を第2格納庫と呼んでいるようです。

格納庫の後部は整備庫となっていて、その後方は支援車両の車庫になっています。
救難作業車や高所作業車などがみえます。

高所作業車ですね。
伸縮式のアームの先端にゴンドラがついていて高所作業を行うわけですが、これだけ格納庫・整備庫の高さがあると作業も難しいでしょうからこういった作業車両があると艦内での作業でも重宝するんでしょうね。
同じ作業車両は「ひゅうが」にもありました。

第1格納庫と第2格納庫を区切る防火シャッタ。
広大な格納庫ですから火災時には被害が広がらないよう防火シャッタを降ろします。
防火シャッタの奥は第2エレベータを管制する格納庫管制室。

艦内にはいくつもの紹介パネルがありましたが、これもそのひとつ。
「いずも」のエンジンについて紹介されていました。
護衛艦「いずも」型はCOGAG方式。
・・・なんのこっちゃ?
ですが、平たく言えば護衛艦「いずも」型はガスタービン(ジェットエンジン)を使ってスクリュをまわしているわけです。
「いずも」が搭載するガスタービンエンジンはボーイング767などのエンジンを艦艇用にしたるLM2500というものです。
この改良型のLM2500IECというものを搭載しています。
ガスタービンは小型な割りに大出力で、「いずも」はこれを4基搭載しています。
「いずも」の速力は30ノットとされていますがずっと小型の「あたご」型(それでも満載で1万トンですが)も同じLM2500を4基搭載しています。
これだけ規模の違う船で同じようなエンジンを同じ数搭載して速力も同じぐらいって何かすごいですね。
(もっとも「あたご」のLM2500の4基合計出力が10万馬力に対して「いずも」のLM2500IECは11.2万馬力と1割以上のパワーアップをしていますが)
ところで・・・この女の子は・・・誰?
LM2500IECの解説をしてるので「LM娘」とでも名づけますか(笑)

第2格納庫には横断幕が貼られてました。
格納庫に隣接する第3甲板左舷には整備員待機室、第5甲板左舷には航空機整備室、航空電子整備室があるようです。
ということで後編に続く。
いずも特別公開 前編/後編