では続きです。

軽装甲機動車が進入してきました。
高射隊が展開する陣地設営の前に進出して安全の確保と周囲の警戒を行います。
警備部隊が周囲の安全を確保した後、ペトリオットシステムが展開します。

続いて進入してきた車両はアンテナマストグループ(AMG)です。
高射部隊間で通信を行う際に必要なアンテナを展開する装置です。
通信装置も車載にしているのでペトリオットは迅速な展開が可能です。

続いて進入してきたこの巨大なトレーラはレーダ装置(RS)です。
高射部隊が以前使用していたナイキJでは目標の捜索・追尾・射撃誘導を行うには複数のレーダが必要でしたが、ペトリオットではこれらを全て1つのレーダで行うことが出来ます。
レーダは多機能フェイズドアレイレーダを用いています。
その出力は電子レンジ1万台分で、お弁当をわずか0.1秒で加熱してしまうほどの出力なのだとか(?)

続いて進入してきたのは発射機(LS)です。
ペトリオットミサイルはこのチューブの中に装填されています。
車両後方からみて右と左で発射機のチューブが異なっているのがわかります。
右側には対航空機用ミサイルが1発、左側には対弾道弾迎撃ミサイルが4発のミサイルが装填されています。
航空自衛隊のペトリオットは対航空機用のPAC-2弾と対弾道弾用のPAC-3弾を運用しています。
このミサイルは全くの別物で、発射機はPAC-2弾なら1機あたり4発、PAC-3弾なら16発を搭載できます。

続いて進入してきた車両は射撃管制装置(ECS)です。
ペトリオットシステムの頭脳というべきものでここでミサイル発射・誘導等の統制を行います。
ペトリオットシステムは各車両にはもちろん人員はいますが、ミサイル運用時には有線や無線でシステムをつなぐので各機材は無人で行います。
唯一人員が配置されるのがこのECSのみになります。

最後に進入してきた車両は電源車(EPP)です。
ミサイルシステムは電子機器の塊。
捜索・誘導を行うレーダ装置や統制を行う射撃管制装置は多量の電力を必要としています。
この電源車にはガスタービン発電機を2つ搭載していて、万が一発電機が故障した場合はもう一台の発電機に切り替えて継続して電力を供給することができます。

全ての車両が所定位置につきました。
各車両の前には作業要員が整列をしています。

これより展開を行う。
作業開始!

作業要員がそれぞれ持ち場の機材に向かって駆け寄っていきます。

アンテナマストグループではアンテナ展開作業を行っています。
このアンテナマストは起立を油圧で、伸縮を空気圧で行います。
5段階までアンテナを伸ばすことが出来、最大で30メートルの高さまで展開が出来ます。

電源車では各機材に電源を確保するためのケーブルを展開しています。
発電機の出力は150kwといいますからかなりの電力を供給できそうですね。

発射機でも設置作業を行っています。
発射機には発電機を持っていてミサイル発射機を動かす電力は確保できているようです。
発射機は複数配置したりレーダ装置から離して設置するので自前の電力が必要なんでしょうね。

レーダ装置、発射機から牽引車が切り離されました。
準備が整うとレーダ装置や発射機は完全に無人で稼動することになります。

射撃管制装置ではアンエナの起立やケーブルの接続などの準備を行っています。
非常に手際が良い感じがしますね。
ペトリオットは米陸軍が開発した地対空ミサイルシステムですが、米軍以外では航空自衛隊、ドイツ、スペイン、オランダ、イスラエルなどが採用しています。
非常に高性能なミサイルシステムなのでシステム規模も大きいのですが当然展開するにも時間がかかります。
各国は米国に機材を持っていって実射撃訓練を行いますが、もちろん航空自衛隊も米国で実射撃をおこないます。
航空自衛隊の高射部隊のペトリオットの展開時間は十数分といわれています。
これはペトリオット保有各国の中でもトップクラスの早さなんだそうです。

発射機・レーダ装置から牽引車が切り離され、レーダ装置はレーダの展開が完了、発射機もいつでも射撃が出来る角度に展開がおわりました。
ペトリオットミサイルはPAC-2弾の誘導はTVMという誘導方式を用いています。
ミサイルが目標に向けて発射されると、レーダ装置で電波を目標に照射します。
その反射波をミサイルがとらえ、地上にあるレーダ装置に情報を送り、さらに射撃管制装置でその情報を分析・処理し、さらにレーダ装置で処理された情報をミサイルに送信します。
ミサイルはこの受信した情報を元に飛翔して目標に向かっていきます。
ムチャクチャ複雑な誘導方式なのは、高速で動き回る敵航空機に正確に命中させるには小型のミサイルの誘導装置の処理は限界があったり、敵の航空機から発進される妨害電波への対処などの意味があるからです。
そこで高性能で大型の処理システムを使ってより高度な誘導を行ってカバーしているわけです。
一方対弾道弾用のPAC-3弾はTVM方式ではなくあらかじめプログラムされているとおりに飛翔した後に指令誘導で目標の近くまで接近するとミサイル本体のレーダを使って目標を探知・突入していきます。
「ペトリオット」と一言で言ってもPAC-2とPAC-3ではシステムも大きく異なるわけです。

機動展開完了!
隊員が整列します。

アンテナマストグループ、電源車、発射機、レーダ装置、射撃管制装置の展開が終わり、いつでも射撃が行える準備が整いました。
各車両では射撃管制装置をのぞいて無人で動いています。
以上、浜松広報館ペトリオット展示でした。
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浜松広報館ペトリオット展示その1/その2