さて横須賀での艦艇一般公開は残り1艦。
護衛艦「あたご」です。

ミサイル護衛艦DD-177「あたご」(満載排水量10000トン)は平成19年に竣工した「あたご」型護衛艦の1番艦で、「こんごう」型をベースに建造されました。
ヘリコプター格納庫を設置してるので「こんごう」型よりも柔軟な作戦が行えるようです。
「こんごう」型をアーレイバーク級フライトⅠ型とするならば、「あたご」型はフライトⅡAといったところでしょうか。
では砲熕から・・・といきたいのですが、なぜか写真を撮り忘れてしまいました。
残念。
「あたご」型は艦首に「あきづき」型と同じく5インチ62口径単装砲(Mk45-mod4)を装備しています。
「こんごう」型はOTOメララ127ミリ54口径速射砲を搭載していましたが、速射砲を射撃統制するために別に81式射撃指揮装置FCS-2型を搭載していました。
「あたご」型はより対地・対水上目標に対して長射程・精密射撃が可能なMk45-mod4を採用しました。
射撃統制はスタンダードSM-2艦対空ミサイルの射撃統制を行うSPG-62射撃指揮装置で併用しています。

なんだこりゃ(^^;
あたごちゃん・・・・なのかな?

「あたご」型のメインウエポンになるスタンダードSM-2艦対空ミサイル、VLアスロックが装填されるMk41VLSです。
艦首側に64セル、ヘリコプター格納庫天蓋部に32セルの合計96セルとなっています。
「こんごう」型の90セル(前部29セル、後部61セル)に比べて6セル多いのは前部VLSと後部VLSにそれぞれ装填用のクレーンを3セルづつ搭載していたためです。
「こんごう」型に対して前部VLSの数が増えたためか「あたご」型は幅は同じですが長さが4メートルほど延長されています。

「あたご」の艦橋構造物。
「こんごう」型と同じく非常にボリュームがありますね。
艦橋前方に高性能20ミリ機関砲、艦橋構造物前面にAN/SPY-1D(V)レーダのアンテナが設置されています。
見た目は「こんごう」型のAN/SPY-1Dと同じですが、捜索・追尾能力が向上しています。
「こんごう」型と比べると艦橋構造物の上部はかなり異なっています。
特徴的なのは艦橋天蓋部(06甲板)で、ここは一段高くなっています。
ここには四角い板が敷き詰められているのがわかります。
いったい何のアンテナ(?)なんでしょうか・・・Jshipsやモデリングガイド、世界の艦船にも見当たらないので誰かおしえてください。
その天蓋部にあるパラボラアンテナはSPG-62射撃指揮装置。
スタンダードSM-2と5インチ砲の射撃統制用です。
艦橋横の張り出し(ウイング)天蓋部に四角いNOLQ-2B電子戦装置がみえます。
敵艦艇の射撃統制レーダを照射された際に分析して電子妨害を行う装置です。
またマストにはORQ-1ヘリコプター用データリンクアンテナ、その上部の円盤状にみえるのはUPX-29敵味方識別装置で、リング状になっています。

艦橋手前に設置されてるのはおなじみ高性能20ミリ機関砲です。
高性能20ミリ機関砲に使われている機関砲はF-15戦闘機などに搭載されている20ミリ機関砲(ヴァルカン)とほぼ同じものが使われています。
発射速度は航空機用が1分間に4000~6000発ですが、高性能20ミリ機関砲では1分間に3000発となっています。
「あたご」は艦橋手前のほかにヘリコプタ格納庫天蓋部の2箇所に設置しています。
その上にある球状のものはUSC-42衛星通信アンテナで米海軍のフリーサットを利用した衛星通信用です。
その横はNORQ-1スーパーバード衛星通信アンテナ。

艦橋構造物を後方から。
マストが従来のラティスマストではなく、ステルスマストになっていますね。
しかも護衛艦としてはかなり細く、面形状も複雑です。
重い三次元レーダをマストに設置しなくて済んだ結果ですね。
艦橋構造物後方にはAN/SPY-1D(V)のアンテナが設置されています。
「こんごう」型よりもさらに上部にアンテナが設置されてることがわかります。
これはヘリコプター格納庫設置のためレーダの射角を確保するためとされているようです。
AN/SPY-1D(V)のアンテナ上部に見える四角いものはNOLQ-2電子戦装置(電子妨害装置)、マスト基部の張り出しに設置されてるやや大型の白い金魚鉢状のドームはNORA-1Cスーパーバード衛星通信アンテナ。
マスト先端にはTACANアンテナが見えます。
艦橋構造物とマストは電子装置の塊ですね。
さて、「あたご」のSPY-1レーダは「こんごう」型よりもさらに発展したAN/SPY-1D(V)なわけですが、イージスシステムとしては「こんごう」型はベースライン4.1Jに対して「あたご」は7.1Jにバージョンアップしています。
情報処理システムは「こんごう」型が1台の大型のコンピュータで行うのに対して、「あたご」型は複数のコンピュータで分担・連携しています。

第1煙突横のボートダビット。
搭載艇が設置されています。
必要に応じてこの搭載艇を下ろすわけですが、その際はクレドルが舷側に振り出すことで搭載艇を降ろします。
手前に見えるのは膨張筏。

搭載艇のボートダビットの下あたりです。
HOS-302単魚雷三連装水上発射管が設置されています。
上は右舷、下は左舷の写真になります。
HOS-302のHは発射管、Oは水上艦艇、Sは単魚雷、3は3連装を意味しているようです。
この発射管の蓋には右舷側には「1」「3」「5」、左舷側には「2」「4」「6」と記載されています。
使用時には手動で発射しますが艦内からも発射操作が可能なんだそうです。

第1煙突と第2煙突の間には4連装艦対艦ミサイル(SSM)発射筒が装備されています。
最近はSSMは2~3連装で搭載されることが多いようです。
発射筒の基部は複雑な形に切り欠きがついていますが、これはSSM発射時にブラスト(発射時の炎)を避けるためなんだそうです。

4連装SSM発射機を別角度で。
こうしてみると「こんごう」型のハープーン発射筒と異なってリベットがごっつく打たれているんですね。
この巨大な筒の中に90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)を搭載します。
ハープーンの直径は34センチ、SSM-1Bの直径は35センチですからややSSM-1Bのほうが大きい感じでしょうか。
1発の重さが660kg、弾頭は225kgと非常に大型のミサイルです。

第2煙突です。
太細2種類の排気筒が見えますが、太いほうが主機のガスタービンエンジン用、細いほうが発電用のディーゼルエンジン用です。
煙突は「こんごう」型に比べると鋭く直線的になっていますね。
「あたご」型に搭載されるガスタービンエンジンは「こんごう」型と同じくLM2500が4基で、元は大型旅客機用のCF6エンジンを艦艇用にしたものです。
2本の長い棒が見えますが、これは第1煙突に設置されたホイップ空中線。
送信用のアンテナですね。

第2煙突前方に設置されたスライディングパッドアイ。
真ん中に上下に可動するフックを通してワイヤを張り、ハイラインを使って物資のやり取りを行います。
ステルス性を考慮してなのかやや傾斜して設置されています。
上部についているのは照明で夜間は赤い光で照らします。

後部艦構造物です。
天蓋部の02甲板、03甲板にあるパラボラアンテナのように見えるのはSPG-62射撃指揮装置。
スタンダードSM-2艦対空ミサイルの誘導用イルミネータで、SM-2ミサイルの最終誘導に使われます。
ちなみに後部VLSはこのSPG-62のさらに後方に設置されています。
艦舷側の通路はシールドで覆われ、甲板から1段上がったところには複合艇(ゴムボート)が搭載されていますね。
その後部に見えるのは搭載艇揚収用のクレーン。
搭載艇搭載部の下にドアのようにみえるのは舷梯子収納部。

「あたご」型は「こんごう」型と同じく舷側の通路はステルス性のためシールドで覆われています。
2枚目はそのシールド内の通路で、艦橋構造物からヘリコプター甲板まで通路が設置されています。
シールド内は消火設備や訓練用人形などが収められています。
2枚目の写真には掃除用のモップのほか大量の木材が見えます。
この木材は緊急事態時の応急措置用で、浸水などを防ぐために木材でふさぐ等のときに使われます。
イージスシステムという現代科学の粋を結集したハイテク艦ですが、最後は人の力がモノをいうと感じますね。

ヘリコプター甲板です。
「こんごう」型と外見上一番大きな違いはこの艦尾で、ヘリコプター格納庫を設定したことです。
「むらさめ」や「てるづき」と比べるとヘリコプター格納庫の開口部が半分ぐらいしかないですね。
ヘリコプター1機を収納し、右側にはヘリコプター用弾庫としています。
海上自衛隊では哨戒ヘリコプターはヘリコプター搭載護衛艦と汎用護衛艦に搭載し、ミサイル護衛艦には基本的には搭載しません。
護衛艦8隻と複数のヘリコプターで護衛隊群を編成しますが、常にフルの8隻で作戦を行うわけではなく、時には数隻で行動する場合もあります。
哨戒ヘリコプターの運用は作戦時に欠かせませんがヘリコプター格納庫を搭載しているため必要に応じて「あたご」型にも搭載できますからより柔軟な運用ができそうです。

ヘリコプター格納庫内です。
SH-60ヘリコプターを2機搭載できる「むらさめ」や「てるづき」と比べるとちょっと狭く感じますね。
また整備に使用するホイストクレーンもありません。
「むらさめ」などに比べると限定的といった感じでしょうか。
2枚目のロッカーにかけてある赤い棒はアプリケーターといって、消防ホースに接続して霧状に散水するためのものです。

後部艦構造物を後ろから。
天蓋部中央には高性能20ミリ機関砲とヘリコプターに水平の指示を出す水平灯が設置されていますね。
後部艦構造物の左側はヘリコプター格納庫、右側はヘリコプター用弾庫となっています。
右側壁面にみえる窓はヘリコプター管制室。

後部艦構造物脇に設置されたNORQ-1スーパーバード衛星通信アンテナ。
Kuバンド用で、艦橋構造物前方にも設置されています。

ヘリコプター甲板に半埋め込み式で設置されているヘリコプター管制室。
ヘリコプター発着艦の指示を出すLSO(Landing Ship Officer)がここで管制を行いますが、管制室そのものもLSOと呼ばれます。
ワイパーがついてますね。
ヘリコプター格納庫横にもヘリコプター管制室がありますがなぜ2つあるんでしょう・・・・?

艦尾の自衛艦旗。
艦首には艦首旗(日の丸)が、艦尾には自衛艦旗(旭日旗)がかかげられています。
自衛隊施設は朝8時から日没まで国旗を掲揚しますが自衛艦も停泊時はそれに準じて艦首旗を掲げます。
自衛艦旗も停泊時は同じく朝8時から日没まで掲揚しますが航海時には常に掲揚しているようです。
自衛艦旗は旧帝国海軍から引き継いだデザインで、中心は左辺に縦の1/6偏しています。
以上、護衛艦「あたご」一般公開でした。
次はラストです。
平成27年度自衛隊観艦式一般公開
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