なんだかずいぶん久しぶりになってしまいました・・・
今年は厄年ということもあって妙に体調が悪く、本当なら11月のはじめに伊勢神宮へ参拝+明野駐屯地航空祭見学というのを考えていたのですが、見事に風邪を引いてしまってキャンセル。
その後もたびたび風を引いたり直ったりの繰り返しで、医療機関への受診が11月だけで10回を超えました(苦笑)
このうち半分は眼圧測定や胃薬などを処方してもらう通院ですが、それにしたって11月は多かった。
さて、南のほうでは新田原基地で航空祭前日となる12月3日、浜松基地ではちょっとしたイベントが開催されていました。

T-400ジェット練習機のデモフライト&地上展示です。

現在T-400を運用しているのは第3輸送航空隊隷下の第41教育飛行隊で、島根県の美保基地(米子鬼太郎空港に隣接)におかれていますが、近い将来ここ浜松基地に移動してくることがきまっています。
航空自衛隊の教育は新隊員教育や航空機整備や電子機器の取り扱い、武器取り扱い、航空機の操縦、幹部教育などをする部隊や学校は航空教育集団という組織の中にあるのですが、なぜか小牧基地の救難教育隊と美保基地の第41教育飛行隊はその組織とは別の組織にあるわけです。
この第41教育飛行隊を航空教育集団に入れることで教育の一本化を図るのが目的なのですが、浜松基地に移動になったことを考えると美保基地が手狭になってきたこともあるんでしょうな。

一緒に地上展示されたT-4練習機。
ビジネスジェットがベースのT-400と比べるといかにも「軍用機」という感じがしますね。
浜松基地にT-4が配備されたのは昭和63年ですから既に30年。
まさにT-4とともに歩んできた浜松って感じですね。
T-400の大きさは全長14.8m、全幅13.3m、自重4.6トン。
T-4は全長13m、全幅9.9m、自重3.7トンなので機体の規模としてはだいたい同じぐらいでしょうか。

地上展示を終え、飛行展示に向けて駐機場所を移動するT-400。
タグ(トーイングカー)にひっぱられています。
来場者のほうに機首を向けているとエンジンをかけたときに吸い込まれてしまう恐れもあるので危険ですものね。
胴体に窓が4つ見えますが操縦席に2人、キャビンに4人乗ることが出来ます。

エンジンをスタートさせ、飛行前の最終点検をしています。
T-400は自衛隊装備年鑑には「輸送機・救難機等基本操縦練習機T-400」というえらい長い名前がつけられています。
その名前のとおりそのまんまですが、輸送機や救難捜索機などの基本操縦の練習を行う飛行機です。
航空自衛隊の戦闘機は単座または複座ですが前席は1人が座って操縦します。
輸送機や救難機、早期警戒機は操縦士と副操縦士が並んで座って操縦します。
同じ飛行機といっても戦闘機は操縦桿、輸送機などは操縦輪ですし、戦闘機は操縦席がむき出しで周囲が全部キャノピーとよばれる窓ガラス(樹脂ですが)でおおわれていますが、輸送機などは窓ガラスは前と横のみで操縦席は機体の中にあるなど結構違うわけです。
そこで戦闘機と同じ操縦教育をやるとどうしても不都合がでてきちゃうわけです。
昔は航空自衛隊の輸送機などの基本操縦は対潜哨戒機など大型機をたくさん運用している海上自衛隊に委託してたのですが、このT-400を導入することで航空自衛隊が自前で基本操縦教育が出来るようになったわけです。
さあ点検が終わりランウエイに向かってT-400がタキシングしていきます。

離陸するT-400。
こうしてみると見た目は完全にプライベートジェット機ですが、実はそうなんです。
機体にいくつものアンテナがありますがGPSや航法システム、通信アンテナなどが設置されてはいますが基本的にプライベートジェット機そのままです。
米国のレイセオンエアクラフト社のビーチジェット400Aというプライベートジェットの機体を練習機仕様にしたもので、米空軍ではT-1ジェイホークという名前で使用されています。
最大速度は真っ赤0.78(870km/h程度)、航続距離は3000kmとなかなかのもので、推力1.3トンのターボファンエンジンを2つ搭載しています。
飛行中は本当に静かなんですよ。

こちらは第1航空団第32教育飛行隊のT-4中等練習機。
T-400に続いて離陸していきます。
T-400と比べてパワーがあるからなのかT-4はT-400よりもずいぶん手前の位置で脚が地面から離れていきます。
同じぐらいの規模の飛行機ですが離陸一つとってもずいぶん違いますね。

上空をフライパスするT-400。
高度が比較的あったとはいえ、静かそのもの。
移動してくることで騒音に苦しめられるのではないかなど不安に感じる住民もいると思いますが、実際に飛ばしてみてもらうことで理解を深めてもらうことは大切ですものね。

同じくフライパスを行うT-4。
航空祭のときのように機動飛行を行うのではなくあくまでもT-400と同じように飛んで、騒音などの不安はいかがでしょうか?という感じでした。
T-4そのものも機体が小柄で戦闘機のような大パワーなエンジンを搭載しているわけではないので上空通過しているときは結構静かだったりします。

脚を出した状態で比較的低い高度でフライパス。
この状態でもやはり静かですね。
T-400は米国のレイセオン社製と書きましたが、実は開発は日本が行っているんです。
もともとは三菱のMU-300ダイヤモンドというビジネスジェットだったわけです。
非常に優秀で性能もよく、低燃費で乗り心地も良い。
さあいよいよ売り出そうというときになって米国で連邦航空局がその前に起きた大型旅客機の事故の関係で航空審査が遅れに遅れ、しかも悪いことにその間に不況になったことで米国では航空機需要が一気に冷え込んでしまい、大赤字の三菱は・・・
続きのほうはもう疫病神でもいるんじゃないかというぐらいあまりにあんまりな不憫さなので、ぐぐって調べてみてください。
たぶん泣きます。
結局なんやかんやで三菱の手を離れてしばらくするとこの機体に米空軍が目をつけ、T-1ジェイホークの名で練習機として採用するなどして売り上げがどんどん伸び、航空自衛隊も「米国製」のホーカー400をT-400として導入することになったわけです。
MU-300の名前で、国産機として導入してもらいたかったというファンは多いはず・・・・・

こちらはT-4。
T-400が艶のある白に塗られているのに対しT-4は機体が灰色ですね。
T-4は戦闘機の基本操縦教育としても用いられるので機体は灰色、ただし垂直尾翼や主翼などの先端は視認性のよいオレンヂ色に塗られています。
機体に比べ比較的大きなエンジンを背中に背負っているT-400と比べるとT-4は胴体の後部に見える小型のノズルの大きさからそれほどパワーがないように感じますが、T-4が搭載する国産のF3エンジンは約1.7トンの推力があります。
機体の自重が3.7トンに対して、2つのエンジンで3.4トン近い推力ですから結構パワフルだったりします。

続いてタッチアンドゴーをおこない、滑走路右手側からフライパス。

飛行展示を終え着陸するT-400。
着陸もやはり静かですね。
日の丸がついていなければ自衛隊機だと気がつかない人も多いんじゃないでしょうか。
T-400が配備されたのは平成6年度で、まだ数がそろっていないときに運用の研究などを行う準備部隊の臨時第41教育飛行隊が美保基地の第3個輸送航空隊隷下に編成されました。
翌年平成7年に臨時第41教育飛行隊が廃止され、第41教育飛行隊として編成されて現在に至ります。

T-4もタッチアンドゴーをおこない、再度アプローチして着陸を行いました。
後輪が接地後、しばらくのあいだ機首をあげたまま滑走していきましたがこのパイロットは元F-15のパイロットなのかな?
こうして着陸の様子の違いなどを比較できるのも浜松ならではですね。

飛行展示を終え、地上展示のためふたたび広報館前のエプロンにもどってきたT-400です。
このデモフライトは14日にも行われるようで、騒音などに不安を感じる住民の方々に理解をしてもらえる試みとして意義のあるものだったんじゃないでしょうか。
ちなみに・・・・
この展示が行われているとき、基地の外では怪しい団体がデモやってましたよ。
すご~くさびしい人数でしたが(笑)
以上、T-400展示でした。