梅雨まっさかりの7月11日、12日に名古屋港の金城埠頭で海上自衛隊の護衛艦”せんだい”が一般公開されました。

護衛艦DE-232”せんだい”は”あぶくま”型護衛艦の4番艦として平成3年3月に竣工しました。
基準排水量2000トン、満載排水量2900トンですから、満載排水量4000トンの護衛艦”はつゆき”型と比べると1回り以上コンパクトになります。
”あさぎり”型や”はつゆき”型と異なり、日本の近海警備を行う護衛艦で以前は地方隊に配備されていました。
現在は組織改編のため護衛艦隊所属となっています。
では中を見学してみましょう。
と、その前に

ちなみにASROC発射機が見えますが、これ艦尾じゃないですよ。
艦の中央部になります。
”せんだい”は最大幅は13.4メートルと”はつゆき”型(13.6メートル)と大きくは変わりませんが、長さが109メートル(”はつゆき”型は130メートル)とかなり短くなっています。
ヘリコプター格納庫や甲板がないという関係もありますが、コンパクトですね。

まず目に飛び込んできたのが艦尾の高性能20ミリ機関砲。
いわゆるファランクスCIWSとよばれるものです。
”むらさめ”型や”はつゆき”型などでは構造物の高い位置にありますからこんなに近い位置でファランクスがあるのは新鮮ですね。
以外にコンパクトなのがわかります。
ムーミンに出てくるにょろにょろみたいな形をした白い物の中にレーダがはいっていて、全自動で目標の捕捉、射撃の管制、評価を行います。
我の迎撃をくぐりぬけて突入してくる敵のミサイルを20ミリ機関砲により撃破するシステムです。

こちらはSSM発射筒。
この中にRGM-84ハプーン艦対艦ミサイルが納められていて、4連装の発射筒が左舷と右舷に2基づつ、計8発装備できます。
最近は写真のように2筒づつ装備していることが多いようですね。
射程は百数十キロだそうです。

後部エントツの後ろあたりに装備されてる3連装短魚雷発射管です。
上の写真が左舷、下の写真が右舷にあるものですね。
空気圧で魚雷を発射するもので、ASROCが遠距離、短魚雷は近距離での対潜戦に用いるんだそうです。

こちらは艦中央に設置されているASROC8連装発射機Mk112です。
”はつゆき”型などが艦の前方に配置してるのに対して、”あぶくま”型は艦の中央部、2つあるエントツの間に設置されてるのが特徴です。
小型でレイアウト上の関係かな?
そのため前方・後方には撃つことが出来ませんが前任の”ちくご”型も同じ艦中央に配置されていましたから大きな運用上の問題はなかったのかもしれませんね。
ASROCはロケット弾に対潜魚雷を搭載したもので、ロケットにより遠方に投射、魚雷を切り離しパラシュートで降下・着水して目標の潜水艦に突入していきます。

ASROC発射機をはさんで前部エントツ

そして後部エントツです。
”あぶくま”型DEはCODOGを採用しています。
CODOGとはガスタービン(平たく言えばジェットエンジン)とディーズルエンジンを組み合わせた推進方法で、巡航用2829馬力のディーズルを2基、13500馬力の主ガスタービン2基を用います。
では艦橋にあがってみましょう。

チャフランチャです。
敵の対艦ミサイルが突入してきたとき、これを速射砲や高性能20ミリ機関砲で迎撃しますがミサイルの目くらましもおこなって自艦を守ります。
対艦ミサイルはレーダー誘導なので、ミサイルのもつレーダーを妨害する手段の一つがこのチャフです。
電波を反射する薄板を大量に装填したもので、これを放出・散布します。
ミサイルのレーダの電波がこのチャフで反射されるため、誤認されることが期待できます。

ジャイロコンパスです。
艦の方位角やロール、ピッチ角を検出して関連機器に供給するシステムです。
艦の行動や武器の動作には欠かせない重要なシステムですね。

こちらは信号探照灯。
無線封鎖時などで僚艦と通信する場合このライトで発光信号を送ります。

海上自衛隊といえばやはりラッパですね(^^)
担当官がラッパの実演もしてくれました。

”せんだい”の艦長席です。
右舷に設置されていて赤と青のツートンカラーのカバーがかけられています。
まったくどうでもいいですが、「艦長」は「カんちょう」(カにアクセント)ではなく、「かんちょう」とアクセントがない平坦な発音をするそうですよ。

伝声管です。
ハイテクの塊の現代の戦闘艦ですが、伝声管は今でも使ってるんですね。
結構聞こえるんだそうです。
奥にはジャイロコンパスがみえます。

操舵盤ですね。
転輪は意外に小型なんですね。
出力や方位などをしめす計器がありますが結構シンプルですね。

艦橋から艦首をみたところ。
意外と高くないことがわかります。
覗き込んでるのは76ミリ速射砲。

艦橋を降りて艦首からみたところ。
確かに艦橋はさほど高くはないですね。

76ミリ62口径単装速射砲です。
イタリヤのOTOメララ社が開発した全自動の艦載速射砲でコンパクト砲とよばれています。
発射速度は実に毎分80~100発といいますからすさまじいものがありますね。
対水上目標の射撃だけでなく、対空目標、対ミサイル射撃にも用います。
手前のシュートから射撃後の空薬莢が排出されてきます。

76ミリ速射砲を後ろから覗き込んだところです。
非常に小型の砲システムなので無人となっていますが、点検用のドアがもうけられています。

76ミリ速射砲弾です。
もちろん訓練用の教練弾ですが、軽砲とはいえ砲弾は大きいですね。
重さは約6.4kgとのことです。
スマートホンと比べてみるとその大きさがわかると思います。
白いのが砲弾、その下は薬莢となっています。

”せんだい”の艦橋です。
艦橋上部にあるのは76ミリ速射砲の射撃管制用の射撃指揮装置2型(FCS-2)、その上部の網状のものはOPS-14対空レーダ、棒状のものはOPS-28対水上レーダとなっています。
艦体の割りに背の高いラティスマストが目を引きますね。

こちらは救難浮輪。
その下はその浮輪の近くに貼られていたプレートです。
「水中爆発およびサメに注意せよ」
この船がまぎれもなく軍艦だと感じますね。

”せんだい”の搭載艇です。
陸上との交通や洋上作業、ちょっとした輸送、救助活動などさまざまな用途に用いられます。

マストに信号旗が掲げられていますね。
どういう意味なのか気になったので調べてみましたが・・・・
「(指示) I LOVE NAGOYA」
いやぁ、さりげない心遣い、うれしいです(^^)
それにしてもラティスマストが高いですね。
浮輪の下にある丸いものは膨張式救命筏で、海面に落下すると内部のガスで膨張して救命ボートになります。

写真ではちょ~っとわかりづらいですが、艦体の舷側の傾斜が内側に7度切れ込んでいます。
これはステルス性をねらったためです。
ところで艦橋と76ミリ速射砲の間がずいぶん開いてますよね。
実はここにRAM(近接防空用のミサイル)発射機を設置する予定だったんです。
が、予算の関係上・・・・

艦尾。
甲板の下が開放式になっていますが、「こんごう」型や「むらさめ」型以降では開放式はとりやめています。
艦尾に誇らしげにかかげられている自衛艦旗、この旗は海外では軍艦旗と同等のものと認識されています。
軍艦旗は単なる自分を示す旗ではなく、軍艦であることを示し軍艦としての特別な権利を国際法で認められる非常に重要な旗です。

ポートタワーと並んだDE”せんだい”。
”せんだい”は護衛艦隊隷下の第12護衛隊に所属し、呉を母港としています。
以上、護衛艦”せんだい”の艦艇一般公開でした。

おまけ。
護衛艦”せんだい”の帽子です。
”せんだい”は宮城の都市の名前ではなく、九州を流れる川の川内川を名前の由来としています。
リバーモンスターはカッパで、”せんだい”のマスコットキャラになっています。
かわいい・・・