天気もよかったので久しぶりにドライブにいってきました。
目的地は愛知県刈谷市にあるフローラルガーデンよさみです。
いや、そこそのものではなく、本当の目的地は・・・

ここ。

依佐美送信所記念館です。
建物の横にある鉄塔がシンボルですね。

鉄塔はいい。
心が洗われる。
実はこれ、本当はこの10倍の高さがあったんです。
250メートルの高さの鉄塔でしたが、現在は解体されてこのようなオブジェとして1/10の25メートルのものが展示されています。

これは鉄塔の先端部です。
この鉄塔って何?
ここは以前依佐美送信がありました。
まだ高度な通信設備をもっていなかった日本は海外との通信には海底ケーブルを用いていたようです。
とはいってもこれは海外の通信会社のもの。
外交には独自の情報伝達システムが不可欠です。
そこで第1次世界大戦後の大正10年に逓信省(今で言うNTTや日本郵便を統括する役所ね)が愛知県の依佐美村(今の刈谷市)を無線送信所の候補に挙げたことにはじまります。
三重県海蔵村(今の四日市市)に受信所を、依佐美村に送信所を作ることが大正14年に決定、昭和2年に建設が始まりました。
送信所は昭和3年に完成し、長波による欧州への通信がはじまりました。
写真の250メートルの巨大な鉄塔が8本あって、その8本から空中線を張って巨大なアンテナ装置にしていました。

鉄塔の基部。
鉄塔がまっすぐ地面から生えているわけではなく、意外にも基部は非常に細いんです。
それをワイヤで支えているんですね。
250メートルなんていう高さの鉄塔ですから普通の固定では折れ曲がっちゃいますし、第一台風が毎年直撃する日本では耐えられません。

これが鉄塔を外したところ。
鉄塔があたる部分はこんな感じで球状になっています。
この鉄塔、東京タワーがたつまで東洋一の高さだったんですよ。
依佐美送信が運用を開始された頃、既に時代は短波通信の時代でした。
長波は大電力が必要ですし、規模も大きい。
それに比べて短波は小電力でできますし規模も小さくて済むので海外通信の主力となりました。
せっかく長波をメインで作った送信所も、運用が始まると短波がメインで長波がそれを補完という形になりました。
が、長波には他にまねできないものがあります。
それは水中へ電波を届けること。
潜水艦への通信は長波で行います。
戦時中は日本海軍が、戦後は米海軍がこの送信所を用いて潜水艦への通信を行いました。

これは米海軍の当時のプレートですね。
米海軍は昭和25年に施設を接収してから平成5年まで送信を行っていました。
現在はE-6という潜水艦への通信中継専用の航空機が代わりに通信を行っています。

手前から主誘導電動機、直流発電機、主直流発電機、高周波発電機です。

主直流機励磁用電動機発電機
あれ?と思った人はさすがです。
実は色を塗りなおされてるんですよ。
以前は灰色で塗られていましたが塗装がボロボロだったこともあって2012年に設置された当初の色に塗りなおされたんです。

バリオメータ型高周波コイルとローディングコイル

コンデンサ。
電流容量は87.5Aなんだとか。

電流計。
単位が・・・・
主誘導電動機を一定回転数で駆動させ、主直流発電機を回転させることで直流電圧が発生します。
直流電動機が高周波発電機を動かし、主直流電動機を使って高周波発電機を動かします。
この高周波発電機は5.814kHzの周波数を発生します。
高周波電流を周波数三倍機を使って3倍にし、送信電波に必要な17.442kHzにして送信を行います。
・・・ごめん、パンフ見ながら書いていてなんのことかよくわからん。
信じられます?
これって昭和3年に完成してから平成5年まで現役だったんですよ?
これらの設備はドイツから輸入されたといいます。
送信所内にはこれらが予備を含めて2セットあったようです。
記念館はそれをイメージできるような配置になっています。

自動速度調整装置と送信機の操作盤ですね。
意外とシンプルです。

米海軍が使用していた時のプレート。
なぜかちょっとイラッときます(笑)
でもここに書いてあるのは本当で、通信所は海軍が使用していましたが、送信所の運用は民間会社に委託されていました。
終戦までは日本無線電信が、戦後は電気興業が運用を続けていました。
依佐美送信所は昭和16年の真珠湾攻撃の暗号を潜水艦に送信したことでも知られています。
洋上の艦艇には船橋送信所から中波と短波を使って送信されていたようですね。
依佐美送信所は平成5年に米海軍の運用が終わって送信が停止され、平成6年に日本に返還、平成9年に鉄塔の撤去、平成18年に送信所本館が解体されました。
現在はこの周辺はフローラルガーデンよさみとして公園が整備され、平成19年に完成した依佐美送信所記念館内が開館しています。
以上、依佐美送信所記念館でした。
Posted at 2014/06/02 00:29:14 | |
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