7月21日は海の日。
ということで各地で海の日イベントがあるようですが、愛知県の三河港の豊橋エリアでも海の日イベントが開催されます。
そのプレイベントとして7月17日(平日じゃん・・・・)に海上自衛隊の艦艇広報が行われました。

今回三河港に入港したのは海上自衛隊練習艦隊に所属する練習艦TV-3513「しまゆき」(満載排水量4200トン)とTV-3517「しらゆき」(満載排水量4000トン)の2隻です。
ともに「はつゆき」型護衛艦を練習艦に種別変更したものです。
元々練習艦は老齢護衛艦を練習艦にしていましたが、電子装置や主機など第一線の護衛艦との差が大きすぎて訓練にも支障があるために当時まだ現役バリバリだった「はつゆき」型から練習艦を選んだという経緯があります。
では軽く見て行きましょう。

練習艦「しまゆき」の浮き輪です。
「しまゆき」は「はつゆき」型護衛艦の最終12番艦で昭和62年2月17日に竣工しています。
平成11年3月18日に練習艦として種別変更をうけています。
今回入港したのは同型艦の「しらゆき」とともにでしたが、公開されたのは「しまゆき」のみとなっています。

「しまゆき」(左)と「しらゆき」(右)の艦橋です。
同型艦なので基本は同じですが、よーく見ると2隻は細部で異なっています。
「しまゆき」は艦橋上部に大型の白いドーム(NOQR-1衛星通信アンテナ)がありますね。

「しまゆき」のラティスマストです。
NOQR-1衛星通信アンテナの後ろにある円盤状のものは81式射撃指揮装置2型(FSC-2)です。
主砲(76ミリ単装砲)の射撃管制に用いられます。
見切れてしまいましたがその上にある巨大な網状のものはOPS-14対空レーダです。
対空捜索用に用いられます。

62口径76ミリ単装速射砲です。
2枚目の写真は「しらゆき」のものですね。
イタリヤのOTOメララ社で開発された無人の省力化砲で非常にコンパクトなのが特徴です。
「はつゆき」型や「あさぎり」型、「むらさめ」型護衛艦のほかにミサイル艇や掃海母艦などにも搭載されています。
発射速度は可変で10発~100発/分となります。
「速射砲」の名前は伊達じゃないですよ。
「はつゆき」型では樹脂製の丸いカバーで覆われていますが、「はやぶさ」型ミサイル艇ではステルスを考慮したシールドでカバーがされています。
射撃管制は上の射撃指揮装置2型で行いますが、警告射撃などわざと命中させないような場合はカメラを用いて照準を行うそうです。

こちらは「しまゆき」の艦首に掲げられた艦首旗です。
日章旗(日の丸)なのですが、自衛艦で重要なのはこちらではなく艦尾にある自衛艦旗になります。
艦首旗は航海中は掲揚されず、停泊時のみ掲揚されます。
なのででぃあごすてぃーにの自衛艦モデルは艦首旗が掲げられているので停泊中になるのです。

この巨大な箱状のものは「しらゆき」のアスロックSUM8連装発射機Mk112です。
VLSを搭載していない護衛艦に搭載されているもので、アスロックを装填し投射するものです。
アスロックとは対潜用の短魚雷をロケット弾に接続したもので、遠方にいる敵潜水艦の近くに投射してパラシュートで着水、魚雷を切り離します。
魚雷は自分のセンサーを使って敵の潜水艦を探知して突入していきます。

アスロック発射機の後部にあるこのドアはアスロック用弾庫です。
8発のアスロックを撃ち尽くしたらこの弾庫からアスロックを出して装填することができます。

ムーミンに出てくるにょろにょろみたいなこの白いものは高性能20ミリ機関砲です。
護衛艦が艦隊を組んで作戦を行う場合、敵の対艦ミサイルをまずミサイル護衛艦の長距離艦対空ミサイルが迎撃を行います。
それをくぐりぬけてきたミサイルには個艦の短距離艦隊空ミサイルで迎撃を行い、さらにそれをくぐりぬけたミサイルは速射砲で対処します。
もちろん同時に敵ミサイルの目くらましを行う妨害電波とチャフと呼ばれる妨害用の箔を展開しますが、それでもくぐりぬけて突入してくる敵ミサイルの最後の防禦手段としてこの高性能20ミリ機関砲が3000発/分という発射速度で弾幕をはってミサイルを破壊します。
白いドームの中に入っているのが追尾レーダと捜索レーダ、火器管制レーダで、その下に20ミリ機関砲(ヴァルカン砲)と弾倉がセットされています。
捜索・探知・追尾・射撃評価・射撃を全自動で行います。

これな~んだ?
潜水艦攻撃用の爆雷・・・なんかではなく、これは膨張筏です。
万が一艦が沈没するような際に使う救命ボートです。
これがどうやって救命ボートになるんだと思いますが、これが海に着水すると樹脂製のカバーが割れて、炭酸ガスで中に収められたゴム製のボートが膨らむんです。

「しまゆき」と「しらゆき」のハープーンSSM発射筒です。
艦の中央部、煙突の横付近に設置されているもので、内部にRGM-84ハープーン艦対艦ミサイルが装填されています。
(このしまゆきには本当に装填されてるぞ)
非常に大型のミサイルで、1発の重さがブースター含めて667kg、長さは4.6mにもなります。
百数十キロの射程があり、敵の水上艦艇を破壊します。
ミサイルが装填されたチューブを4連装で左右に1セットずつ、計8発装備できます。
写真では2連装となっていますが、遠洋で作戦を行う場合はフル装備ですが、近海で行う場合はこのように片側2~3発でセットされることが多いそうです。

「しまゆき」の煙突です。
左側に見えるのはハープーンSSM発射筒、右側がスライディングパッドアイです。
スライディングパッドアイは補給艦との洋上補給の際に貨物を受け取るときに使われます。
それにしても煙突が巨大ですね。
「はつゆき」型護衛艦、「しまゆき」型練習艦の主機は実はガスタービン(平たく言えばジェットエンジン)が使われています。
ガスタービンは燃費が悪いという短所がありますが、小型な割りに大出力という長所があります。
「はつゆき」型、「しまゆき」型には4基のガスタービンエンジンがあり、巡航用のロールスロイスRM1Cと高速用のオリンパスTM3Bを2セット搭載されています。
出力は45000馬力、速力30ノットをたたき出します。

「しまゆき」の68式3連装短魚雷発射管です。
口径は324ミリで、中に対潜用の短魚雷が装填されています。
発射時には圧縮空気を使って短魚雷を押し出します。

こちらは艦尾のシースパロー短SAM8連装発射機です。
「はつゆき」型や「あさぎり」型、「しらね」型などに搭載されている個艦防空用の艦対空ミサイルシースパローを発射するランチャになります。

こちらがシースパロー発射機に装填されているシースパロー短距離艦対空ミサイルの模擬弾です。
シースパローはF-15やF-2などで使われているAIM-7スパロー空対空ミサイルを艦隊空ミサイルに仕様変更したもので、艦側の誘導装置から誘導をうけます。

こちらはシースパローの弾庫です。
この中に予備弾が収められていて、ランチャに装填されていたミサイルを撃ちつくした場合にここから予備弾を出します。

こちらは「しらゆき」のヘリコプタ甲板です。
奥はヘリコプタ格納庫になっていますが、現在は練習艦ということもあって中に講堂が設置されているのでヘリコプタの運用はできません。
護衛艦だったときはHSS-2B又はSH-60J対潜哨戒ヘリコプターを搭載していました。
2機種とも比較的大型のヘリコプターですが、全長19メートルにもなるSH-60を運用していただけにかなり広大な甲板です。

「しまゆき」のヘリコプタ格納庫です。
上部にある巨大な白いドームは81式射撃指揮装置2型で、シースパローの射撃管制にもちいられます。
右舷と左舷の張り出しにある白いドームはスーパーバード衛星通信アンテナです。

ヘリコプタ格納庫の上部には矢印がみえます。
これは艦載ヘリコプタの誘導用インジケータになります。
それにしても格納庫内はかなり複雑な配管がありますね。

こんな感じでこのヘリコプタ格納庫と甲板があるのはシースパローがある甲板よりも一段上になっています。

こちらはヘリコプタ甲板に設置されているヘリコプタ誘導室。
ここから離着艦時の指示を出します。
航行している艦船からのヘリコプターを飛ばすということは、船は前に進んでいますが、波が来るわけですから船は進行方向から左右に流されるわけです。
さらに波で上下に揺れるわけで、タイミングをあわせて着艦させるには船と速度を合わせてホバリング状態(でも実際には船の速度に合わせて前進している)にして甲板の指定位置に降ろすわけですから、運用は非常に難しいわけです。

ある意味で練習艦「しまゆき」型の象徴的なもの?
がこのヘリコプタ格納庫内に設置されたプレハブ式実習講堂です。
元が護衛艦ですから講堂として利用できるスペースが限られているからでしょうか。
この講堂が設置されている関係でヘリコプタの搭載はできなくなってしまいました。

「しまゆき」を横から。
比較的コンパクトな船体に対水上戦、対空戦、対潜戦が可能な装備をもち、さらに対潜ヘリコプターを搭載しているのは世界的にも珍しいのではないでしょうか。
1番艦の「はつゆき」が昭和57年に竣工してから同型艦が12隻建造されました。
既に多くが引退していますが、一部が寿命延長改修をうけて護衛艦隊に、「しまゆき」「しらゆき」「せとゆき」の3隻は練習艦隊でもうしばらく現役で活躍をします。

マストには信号旗がかかげられていました。
どういう意味なんだろう?
とおもって読んでみました。
「W」「E」「L」「C」「O」「M」「E」、「WELCOME」でした(^^)

「しまゆき」の搭載艇です。
簡単な輸送や交通、救難活動など作業の際に用いられる小型の船ですね。

こちらは「しまゆき」(手前)と「しらゆき」(奥)の自衛艦旗です。
2枚目は「しらゆき」。
自衛艦旗はいわゆる軍艦旗と同じもので、船が日本国の自衛隊の船であることを示す重要な旗です。
そういえば今回、前から全体を写した写真がないって?
それはね・・・

これが理由(笑)
水深の関係もあって、展示されたのがこの岸壁なんです。
そのすぐ横が自動車運搬用の岸壁なのでスペースがぎりぎり。
前から写そうと主っても写せなかったわけです(^^;
ちなみにこの写真は近くの展望タワーから望遠レンズを使って写しています。
以上、艦艇広報in愛知でした。