今流行のオスプレイに便乗するぞ(笑)
そもそもオスプレイって何?
どんな機体?
何が問題?
と素朴な疑問に思ってる方もいらっしゃると思います。
といっても私は専門家でも詳しいわけでもないので手元の資料(過去の航空ファンのバックナンバーや書籍など)ひっぱりだしてます。
細かなところで異なる部分があるかもしれないけどそこは指摘してもらえるとありがたく思います。
さてオスプレイです。
「オスプレイ関門海峡を通過」「オスプレイ岩国に到着」「オスプレイ貨物船から搬出」「オスプレイプロペラを動かした」・・・
これ最近の報道ですが、パンダの赤ちゃんやカルガモの赤ちゃんじゃないんだからさぁ(^^;
【オスプレイって何?】
↓の本の写真、これがオスプレイです。

V-22という垂直離着陸機の愛称が「オスプレイ」です。
今のところ空軍向けのCV-22と海兵隊向けのMV-22の2タイプがあります。
【ヘリコプターと飛行機の違い】
普通の飛行機は・・・・
・速度が速い
・離着陸するには滑走路が必要
・遠くまで飛べる
ヘリコプターは・・・
・滑走路が要らない
・速度が遅い
・遠くまで飛べない
というざっくりとした長所と短所があります。
普通の飛行機(固定翼機といいます)は大きな翼がありますが、この中に燃料が燃料タンクになっているんです。
また、スピードの遅いプロペラの輸送機でも時速500キロぐらいで飛ぶことが出来ますが、ヘリコプターはせいぜい時速200キロちょい。
ヘリコプターには主翼がありませんので燃料タンクも大きくとれないので遠くまで飛べず、また速度も遅いんです。
(燃料タンクを増やすと機体が重くなって飛べなくなります)
でもヘリコプターは滑走路が不要という普通の飛行機には絶対に真似できない利点があります。
オスプレイは通常のプロペラ飛行機とヘリコプターの良いところを併せ持った「全く新しいジャンルの機体」になります。
【全く新しいジャンルって?】
上の本の写真ですが、プロペラが上に向いていますね。
これはヘリコプターと同じで、この状態で垂直離着陸やホバリングができます。
このプロペラを水平にすると普通のプロペラ飛行機と同じように飛ぶことが出来ます。
この動画、よくみてみるとプロペラ(エンジン)の向きを変えています。
こういう飛行機を「チルトローター機」といいます。
「チルト」というのは車のハンドル(ステアリングコラム)を上向きや下向きに調整するあれと同じですね。
飛行モードによってエンジンの向きをかえることでヘリコプターと普通の飛行機両方の飛行特性をもたせることができます。
言うのは簡単ですがものすご~く難しい技術で、何と50年以上前から構想があって試験機も作ったのに、軍用実用機としてはこのオスプレイが初めてということになります。
ちょっと考えただけでもエンジンの方向をかえれば潤滑油がちゃんと回らなさそうとか難しいですものね。
オスプレイはヘリコプターでも通常の飛行機でもない、全く新しいジャンルの飛行機です。
【オスプレイって何に使うの?】
オスプレイはヘリコプターと飛行機の両方の特性を持ってますので、ヘリコプターが行う任務はだいたいオスプレイで代替が可能です。
オスプレイには空軍型と海兵隊型があります。
空軍型は特殊作戦に使われます。
特殊部隊を戦場に送り込んだり回収したり、墜落した味方機の乗員を救助するために使われます。
一方最大のオスプレイユーザーになる海兵隊は兵員や火砲、物資の輸送を行います。
今まではCH-46という輸送ヘリコプターを今まで使っていましたが、このヘリコプターはかなり昔に作られたものですので老朽化しています。

(写真は航空自衛隊の救難ヘリコプターのV-107ですが、CH-46はこれの海兵隊版です)

写真はかって佐世保に配備されていた強襲揚陸艦エセックスですが、海兵隊のオスプレイは強襲揚陸艦に搭載され、作戦地域に投入されます。
もちろんオスプレイだけでは搭載能力に限界がありますので、まず装備を持った兵員をオスプレイで送り込み、さらに物資や車両を搭載した別の大型輸送ヘリコプターや揚陸艇で送り込みます。
もちろん先日の東日本大震災で海兵隊が大活躍したように、災害派遣でも大活躍することは間違いありません。
【オスプレイの何がすごいの?】
ヘリコプターが行っていた仕事の置き換えとして考えた場合、
・速度が速い
・航続距離が長い
が非常に大きな武器になります。
ヘリコプターがせいぜい時速200キロ(新幹線より遅いぐらい)なのに対してオスプレイは最大巡航速度が約時速500キロ、荷物を機外にぶらさげた状態でも400キロ以上で飛ぶことが出来ます。
また航続距離は搭載する燃料(MATという臨時の燃料タンクを機内に搭載できます)や貨物の量でガラっとかわりますが・・・一例として
垂直離陸・貨物4.5トン搭載した状態で648km以上、貨物が3.6トンに減らせば1300km以上といわれています。
ちなみに垂直離陸ではなく、離着陸に滑走路での滑走を使えば貨物4.5トン搭載して1750km以上にもなります。
なのでオスプレイが展開する距離から搭載量を調整することになります。
(空中給油も受けられるので柔軟に運用可能ですよ)
航続距離が1300kmあれば普天間から尖閣諸島まで行って帰ってくることが余裕でできます。
この速度と航続距離はとても重要なんです。
海兵隊は上で紹介した強襲揚陸艦に載せますが、航続距離が短いヘリコプターでは、離艦させるために強襲揚陸艦を作戦区域まで近づけなければなりません。
ヘリコプターより艦船はさらに遅いのですから、大きな問題ですね。
オスプレイならより遠方から離艦させることができるので作戦開始が数時間から半日近くかわってきます。
これは大きい!
【でも事故が心配・・・】
おっしゃるとおり、やはりマスコミがあれだけ騒いでるのですから事故が心配なのは当然です。
専門家(なぜか日本の専門家でなく、外国の専門家?を出しますよね)が「構造上の・・・・」と説明しながら
この映像が流れるのがパターンだと思います。
実はこの事故の映像、構造の欠陥とは何の関係もないものなんです。
この事故は1991年6月11日におきたものですが、その原因は・・・
配線ミスです。
確かにショッキングな映像ですが、この映像を持ってきて欠陥だといわれても何の説得力もないですよね・・・・
まず、大切なのは主観抜きに「どうして事故が起きたのか」「いつ事故が起きたのか」です。
オスプレイは1991年から2000年までに4件の重大事故を起こしています。
マスコミはこれを大きく取り上げていますが、この4件は実働部隊配備前のものです。
つまり新規の飛行機を開発してる最中や部隊での運用研究をしている間の事故ということになります。
どんな飛行機でも事故はおきてしまうものですが、開発中の機体に事故が起きてしまうのは避けられないことです。
(トップガンで有名なF-14トムキャットも試作初号機が墜落しています)
多くの犠牲を伴う悲しい事故ですが、こういったトラブルを踏まえて設計変更に織り込んだり、部隊での運用に反映されるわけです。
なので厳密には配備前後はしっかり分けたほうが良いと思います。
では実働部隊配備後は?
2012年7月現在、2010年から合計3件の重大事故が発生しています。
原因についてはまだよくわからない(2012年の事故ならまだ事故原因はつかめれいないのも仕方ないですが・・・)のですが、2010年の事故では自らが作った下降気流が原因とも、その下降気流が巻き上げた砂塵で視界が奪われたのかわからないとされています。
【事故って本当に多いの?】
「事故が多発」「相次ぐ事故」と報道されていますが、言葉ではどうとでもいえます。
ではそれを数字で表して判断できるかですが・・・。
「事故率」という言葉が使われます。
これはクラスA事故という大きな事故または100万ドル(2009年からは200万ドル)を超える財産の損失(墜落していなくても機体や電子機器・武器などが200万ドル以上の損害ならカウント)または乗員の死亡や終身全身障害のアクシデントを10万飛行時間あたりで計算した数値です。
これで海軍のFY11会計年度(2012年の2回の事故が含まれてないですが・・・・)で比較すると
実働部隊配備前の2件の事故を含め2010年の事故とあわせて3件(そもそもCV-22は空軍のもので運用も全く別なので含めてない)
H-46:10万飛行時間あたり5.69
CH-53D:7.78
CH-53E:2.32
AV-8B:10.08
MV-22:3.32 ←海兵隊型オスプレイ
と現役の多くの海兵隊機より10万飛行時間あたりの事故率は低くなっています。
2012年に1機の海兵隊オスプレイが事故を起こしてますが、それをカウントすると4チョイになると思いますが、それでも現在の海兵隊の輸送ヘリCH-46より低いことがわかります。
実働部隊配備前の事故後、徹底的に機体を改修していますので海兵隊はオスプレイが特別問題だと考えてはいません。
ちなみに米大統領もオスプレイに乗ったことがありますし、要人輸送用の構想がありますし、海外の航空ショーでもオスプレイはデモフライトをしています。
「危険な飛行機」なら要人輸送にも航空ショーで飛ばすこともしませんよね。
余談ですが、今普天間に配備されててオスプレイに替わられるCH-46ヘリコプターですが、作られて45年になろうかというすさまじくベテラン機があるようです。
古い機体のほうが危険なのは当然で、オスプレイ以上に老朽化したヘリコプターを飛ばすほうがはるかに危険だと思います。
(もちろん海兵隊員の命がかかったものですからしっかり整備や点検はしてますけどね)
【テレビで話題のオートローテーション?】
最近良くこの言葉を聞くと思います。
ヘリコプターがエンジントラブルになった場合、自分が降下していく気流の動きでプロペラ(ローターといいます)がまわるので緩やかに下降していくことができ、不時着できるというものです。
オスプレイはこれができない(実際にできるのかできないのか知りませんが・・・・)といわれていますが、それ以前にオスプレイは2つのエンジンがあります。
1つのエンジンが動力を失っても、もうひとつのエンジンで飛行することが可能です。
【騒音は?】
こんな巨大なプロペラがまわるのですから騒音がすごそう・・・に思えるのですが、実に意外。
離発着で
250フィート CH-46E:101dB-A MV-22:93dB-A
1000フィート 同:94dB-A 同:88dB-A
3000フィート 同:87dB-A 同:81dB-A
結構な差があります。
もうひとつ大きいのがヘリコプター独特の「バタバタ」という音が小さいようです。
このバタバタ音は数値にあらわれない不快な音に感じますから実際の騒音としてはかなり改善されるかもしれませんね。
【では不安な部分は?】
単純な事故率は他の海兵隊機より低いわけですが、重要なものがあります。
それは「全く新しい航空機」だということです。
つまり運用が難しいことになります。
ヘリコプターでも通常の飛行機でもないのですから、操縦そのものはコンピュータの自動制御で他の飛行機と比べて難しくはないようですが、猛烈に砂塵を巻き上げて視界がなくなったり(普天間は飛行場がコンクリートなので問題ありませんが砂漠でも使用しますからね)、ヘリコプターモードから飛行機モードになるとき時間がかかるのでその間の高度に気をつけたり、下降速度を注意する必要があるようです。
とにかく従来の飛行機でもヘリコプターでもない全くの新しいジャンルということで操縦者も気を使うようですね。
それとまだまだ誕生して間もない全く新しい航空機ですから運用実績がどうしても少ないわけです。
何百機が何十万時間、何百時間飛んだ従来の機体と比べてやはりその実績がないのは弱い部分といえるかもしれません。
と、簡単ですがオスプレイについてまとめてみました。
あえて普天間問題には触れていません。
が・・・
県外からきている怪しい団体が大騒ぎしているのを無視しても

この状態では確かに不安なのもわかります。
相対的に事故が少ないといわれても、ひとたび事故が起きれば大惨事で納得しがたいというのもよくわかります。
イデオロギーや変な思想ではなく、あれだけ危険とさわがれれば漠然とした不安を持たれるのも当然です。
だからこそ政府は信頼関係を住民の方々と築い説明をして、必要であれば作戦に支障のない範囲で一定の運用上の制限(特別な場合を除いてエンジンの方向を変えるのは海上に限るなどね)も検討するなどして少しでも住民の方々(奇声をあげて大騒ぎしている労組とか怪しい団体は無視してok)の不安を解消する努力が必要だと思いますね。