ちょっと前ですが、3月25日のニュースで東京の在日米軍横田基地が例年8月に開催している日米友好祭が中止になることが報じられました。
http://flyteam.jp/news/article/20858
また、5月5日に開催が予定されていた山口県岩国市の米海兵隊岩国基地のフレンドシップデイも中止になる可能性があるとの情報が出ています。
http://www.mccsiwakuni.com/friendship-day/pressmedia.aspx
岩国基地は地元との重要なイベントであると開催を申請していますが、危険な状態ではあります。
中止かどうかは4月15日に発表されるようです。
さて、これだけなら地元の人たちの経済活動や私たち航空マニアなど一部の人たちががっかりするだけのことなのですが、実はこの奥には非常に深刻な問題があります。
中止の理由は米連邦政府の「財政の崖」問題による歳出削減による国防費大幅抑制からくるものです。
広報イベントは地元との関係やリクルート、納税者に対するアピールなどかなり重要な機能があるのですが、横田や岩国だけでなく米国での主だったショーがのきなみ中止になる異常な事態になっています。
米空軍のアクロバットチーム「サンダーバーズ」も活動停止になりました。

これはどういうことでしょう?
事の発端はリーマンショックとオバマ政権が福祉という名の盛大なばらまきを行ったことにあります。
景気悪化で2010年末までの時限減税を2012年末まで続けたことや景気対策の財政支出増加、それに加えて福祉を盛大にばらまいたために財政が悪化したことで米国の債務が法定上限に達してしまいました
法定上限に達しても議会で上限を引き上げれば問題なかったのですが、米議会は上下院がねじれ国会状態でうまくいかなかったわけです。
なんだか半年ほど前にどこかで聞いたような話ですね・・・
当然歳出削減のためにかなり乱暴な削減がされる上に時限減税が切れる(=増税)ので、米国民の深刻な消費の落ち込みがまるで崖から落ちるように米国の景気が転落し、軽く世界恐慌の引き金になるレヴェルになりかけたんですね。
とりあえず1月2日に2ヶ月間の回避はできました。
が、オバマ政権は膨れ上がった社会保障費には手をつけず、増税に反対していた共和党が増税を認めるのをいいことに、富裕層のみの増税でやろうとしたからさぁ大変。
民主党、共和党とも完全に物別れで具体的な歳出削減案の合意ができず、その2ヶ月を超えて3ヶ月目の3月1日を迎えてしまったわけです。
3月1日、オバマ大統領は強制歳出削減措置にサイン、10年間で1.2兆ドルの一律削減が決まってしまいました。
国防費はその約半分で、今後10年間で4870億ドルの削減義務に加えて毎年547億ドル強制歳出削減されます。
しかも今は暫定予算執行中なわけで、その状態で強制歳出削減ということはシャレにならないことになるわけです。
ではどんなことになるのかというと・・・・
今月号の「航空ファン5月号」に詳しく乗っていました。
対応案は・・・
・陸軍のいくつかの部隊は分隊規模以上の訓練は中止
・2013年1月以降に申請された陸軍の比較的大きなレヴェルの修理は全て中止(車両1300両、火器17000挺/門なんだとか・・・)
・陸軍航空部隊の飛行時間削減
・陸軍の大幅な兵員削減(最大14万人・・・・)
・海兵隊の大幅な兵員削減(最大5万7千人・・・)
・北アラビヤ海、ペルシャ湾に展開する空母戦闘グループを2個から1個に削減
・いくつかの空母戦闘グループの訓練延期
・4個空母戦闘グループの活動停止(!!!)
・いくつかの艦船の修理の延期および活動停止
・核戦力や一部の部隊を除いて空軍の飛行時間を全面的に18%削減
・空軍の大規模演習の中止
・空軍の新規取得調達数の削減
・空軍のパイロット教育の高等過程を4月1日で停止
・24時間警戒態勢のレーダーサイトのいくつかを8時間体制に(ちょ、おまwww)
という目を疑うものばかり。

この結果がまたシャレになりません。
・陸軍の78%以上の部隊で即応状態が悪化(!)
・陸軍の兵站能力の大幅な低下(デポ整備を停止すりゃぁねぇ・・・)
・サイバー攻撃に対して脆弱化
・空母や強襲揚陸艦展開の中止や活動停止による抑止力の大幅低下(!!!)
・活動停止になる4個空母戦闘グループは作戦不能に(今のレヴェルに戻すのに1年近くかかるようです)
・2013年に増派可能な空母戦闘グループは1個のみに
・2013年9月には増派可能な揚陸部隊がゼロに
・2個海兵遠征旅団による敵前強行上陸が実施不可能に
・空軍の一部の部隊では6月より飛行停止状態に、7割の機体が戦闘不能状態に(!)
・輸送や空中給油などに深刻な影響
・・・・・
おっそろしいでしょ?
平たく言えば米海軍は半数が活動できず、陸軍は8割がまともに展開ができず、空軍は飛べないというとんでもない状態になるわけです。
そりゃサンダーバーズどころの騒ぎじゃありません。
そうなると当然米軍の影響力が深刻なぐらいに低下します。
そういえば最近北朝鮮がやたら強気じゃないですか?
もちろん「平常運転」な挑発的発言ですが、例年に比べるとちょっとトーンが激しい気がします。
またここにきて中国海軍がヴェトナム漁船を砲撃するなど、南沙諸島周辺で非常に挑発的な行動に出ています。
そして今、沖縄周辺海域ではまさに中国軍が尖閣諸島を本気で取りにきています。
中国は少しばかりの資源がほしいから尖閣がほしいのではなく、国家戦略であの海域を押さえて海軍の活動の自由を目的としています。
尖閣が目的ではなく沖縄そのもの(上陸部隊で沖縄本島を占領するという意味ではなく、中国の影響下において日本や米国の活動をさせない)ですよ。
仮に日本と中国が武力衝突になっても米軍が投入できる大規模な戦力がないのですから、どれだけ危険な状態なのか推測できると思います。
さすがに日米同盟の関係もあって沖縄本島に中国軍のミサイルがぶち込まれることはないでしょうが、尖閣周辺海域が戦場になること、いくつかの島嶼で小部隊の上陸作戦が行われる可能性は無いわけではありません。
なぜかほとんど報道されませんが、財政の崖に関する国防費強制削減は世界規模ニュースなんですよ。
米軍の活動縮小は何気に日本人の生命財産にかかわってくるわけです。