さて静浜基地航空祭その3です。
午後は地元部隊の飛行展示とF-15戦闘機の飛行展示が行われます。
そういえば毎年思うのですがF-2の展示が終わるぐらいに観光バスがぞろぞろと到着して客を降ろしていましたけど、あれってどういうつもりなんでしょうね?
F-2やT-4、T-7など飛行展示を見たくても到着しないんですから。
楽しみにしていた人は気の毒だと思いますよ。
ブルーインパルスの飛行展示が始まる前に集合をかけるバスツアーもたまにありましたけど、こういう旅行会社って航空祭見たこと無いんでしょうか?

午後一番の飛行展示は静岡県警航空隊です。
今回飛行展示を行ったのはAS365N3型で、警察ヘリコプター「ふじ2号」を命名されています。

警察らしく刑事ドラマのテーマをBGMに飛行展示が始まりました。
見た目からはどっしりした印象を受けますがAS365は最大離陸重量は4.3トンと陸上自衛隊で使われている多用途ヘリコプターUH-1Hと同程度で長さは少し短いのでコンパクトなんです。

脚を格納して高速で航過する「ふじ2号」。
滑走路の端までくると急激に方向転換をして再び会場方向へ進入します。
ロールを打って旋回。
軽快な機動を披露します。
メインロータが黒・黄色のトラ模様になっていますね。
「ふじ2号」の展示飛行ではヘリコプター独特の「バタバタバタ」という低い音がそれほど聞こえず、モーターのような「ヴぅうううううううん」という比較的高い音が聞こえます。
それはテールローターに理由があります。
UH-1やAH-64など、多くのヘリコプターはテールに小型のローターが回っていますよね。
これはヘリコプターが機体を回転しないようにたもつためのものです。
ヘリコプターはメインローターをまわして浮かびますが、この強力な回転で機体が逆方向に力がかかって回転させられちゃうわけです。
これを打ち消すのがテールローターで、小さなローターをまわして横向きの力を発生させて機体を回転させようとする力を打ち消しているわけです。
「ふじ2号」のテールにはテールローターがなく、フェネストロンというものになっています。
ローターではなく、中にファンが高速で回っています。
テールローターはローターがむき出しなので障害物や石などが当たると事故につながりやすいですし、メインローターとちがって低い位置にあるので人が接触する恐れもあります。
フェネストロンはファンを覆っているのでそういったリスクを減らすことが出来ますし、風切り音をなくすことができます。
比較的高い音に聞こえるのはこのファンの音なんですね。

脚を再び展開して急上昇・急降下を披露。
とてもスピーディに感じます。
「ふじ2号」の最大速度は320km/h、巡航速度は250km/hと実はUH-60やAH-64よりも高速だったりします。
静岡県警航空隊には「ふじ2号」「ふじ3号」の2機のヘリコプターが配備されています。
「ふじ2号」は平成14年に、「ふじ3号」はアグスタA109Eを平成19年に導入されて上空からのパトロールや警備活動、災害救助などに用いられています。

飛行展示を終えて着陸態勢に入る「ふじ2号」。
以上、静岡県警航空隊による飛行展示でした。

次はT-7初等練習機による大編隊です。
T-7練習機は少数が岐阜基地と浜松基地に配備されているほかは防府北基地と静浜基地にほとんどが配備されています。
T-7は49機が調達されていますがその約半数の20数機が静浜基地に配備されていることになります。
整備中や地上展示などで動けない機体を除くと静浜基地で飛べる機体の大部分がこの大編隊に参加することになります。
1機、また1機と合計11機のT-7が離陸していきます。

大編隊最初の科目は「富士山」です。
静岡といえばやはり富士山。
11機の大編隊で雄大な富士山の姿を見事に表現しました。
そういえばこのT-7を製造したのは富士重工ですね。

続いては「S」です。
鳥だ!飛行機だ!のあの超男の「S」のようですが、静岡、スーパー、スカイ、スペシャル・・・
いろんな言葉に「S」が使われていますね。
大編隊は単に形がそれっぽくみえるように機体を位置させているわけではありません。
地上から見上げたときにしっかりと形にみえるよう計算された配置になっています。
見事な「S」の文字が大空に描かれました。

ラストは巨大なハートです。
戦闘機などではお互いが警戒する範囲をカバーしあうなど戦闘の基本で編隊飛行は行われますが、このような複数の機でおこなう編隊や十数機にもなる大編隊は通常の訓練ではまず行われません。
航空祭などのためだけに編成されるスペシャルな飛行です。

編隊の展示を終えたT-7が着陸のために3隊にわかれて進入してきました。
1機づつ編隊を解散して着陸態勢に入ります。

1機、また1機と次々に着陸を行います。
T-7は岐阜基地にも少数が配備されていて単機での飛行展示を行いますし、浜松基地航空祭では静浜基地からT-7が3~4機展示飛行を行いますが、T-7の大編隊をみることができるのは第11飛行教育団が常駐している静浜基地と第12飛行教育団が常駐している防府北基地のみです。
T-7の機動飛行とこの大編隊を見に来るだけでも静浜にいく価値は十分すぎるほどあります!
さてここであまり役に立たない豆知識。
T-7だけではないですが機首に3桁の数字、垂直尾翼にもハイフン付きで数字が記入されています。
これは機体番号です。
垂直尾翼には○○-○○○○と数字がはいっていますがこれには全て意味があります。
最初の1ケタ目は領収年号、2桁目は登録順位(機種タイプ)、ハイフンの次の3桁目は機種区分、4~6桁目は製造番号を示しています。
領収年号というのは自衛隊が受け取った年です。
機種タイプは「1」ならT-400、「2」ならF-15とU-125AとYS-11を、「3」ならF-2、「4」はE-767とE-2C、「5」はC-130HとU-4、「6」はT-7とT-4、「7」はF-4とRF-4とCH-47とKC-767を、「8」はUH-60とC-1、「9」はU-125を、「0」は政府専用機B747を示します。
機種区分は「1」は輸送機、「3」はその他固定翼機、「4」はヘリコプタ、「5」は練習機」、「6」は偵察機、「8」は戦闘機を意味します。
製造番号は例えばF-15Jなら801~、F-15DJなら051~、F-4は301~、F-2Aは501~、F-2Bは101~、T-7なら901~をそれぞれ1号機の番号にあてています。
写真の機体では例えば66-5937なら「2006年度に納入されたT-7というタイプの練習機の37号機」を示しています。
ここまでみていて「あれ?」と思った方もいるんじゃないでしょうか?
だいたい昼前頃行われる救難展示が今年はなかったんです。
機体が揺れると救難員や要救助者をたたきつけたり、おおきく振り回すことに繋がってしまうため、
安定したホバリングで救難員を降ろして要救助者を収容するには非常に技術の必要な展示なのですが、今回は最初からプログラムにはいっていませんでした。
楽しみにしてたのに~!
さて静浜基地航空祭2015、最後の飛行展示となりました。
ラストはF-15戦闘機の飛行展示です。

F-15J戦闘機が進入してきました。
今回展示を行うのは茨城県百里基地に常駐する第7航空団第305飛行隊のF-15J 2機です。
F-15は脚を出したダーティ状態で進入、会場を通過するとアフターバーナを作動させて会場を離脱します。

再度会場に進入するF-15戦闘機。
アフターバーナを使った大パワーの轟音が会場を支配します。
F-15が搭載しているエンジンはF100-IHI-100またはそれを電子制御化したF100-IHI-220Eというターボファンエンジンです。
非常にパワフルなエンジンで推力は8.6トンですからこのエンジン1つで陸上自衛隊で使っているUH-1H多用途ヘリコプターを2機まとめて持ち上げるだけの力があります。
アフターバーナを使えばそのパワーは実に10.6トン!F-15はこの強大なパワーのエンジンを2基搭載しています。

アフターバーナを使って非常にパワフルな旋回をみせるF-15戦闘機。
F-15は巨大で重たそうな増槽(投棄できる予備燃料タンク)を3本搭載していますが、これだけ巨大なら抵抗もありますしハードポイントにかかる荷重も相当なものがあると思いますがそれを全く感じさせない機動性を披露しました。
この増槽ですが1本で2300リットルぐらいの容量ですから3本で6800リットル!
これでレヴォーグを走らそうとするなら燃費が仮に14km/lとするならこの増槽3本で95200km、地球2周以上走れます(たぶん重くて走れませんが 笑)

やはりF-15はパワーの塊という感じがしますね。
アフターバーナの炎が薄暗い空に赤く光っていました。
F-15戦闘機はF-104戦闘機の後継として昭和55年度から調達が開始され、複座型とあわせて213機が導入されました。
これは米空軍以外で最大のF-15保有数になります。
現在アラートを担当する7つの戦闘機部隊と1つの教育部隊に配備されて防空の中核を担っています。

飛行展示を終えて機体を左右に振って観客にご挨拶。
この後百里基地にむかって会場をあとにしました。
以上、F-15戦闘機による飛行展示でした。
ブルーインパルスの飛行展示や救難隊の救難展示が行われなかったなど寂しい部分がありましたが、各種航空機の飛行展示を堪能できて大満足でした。
心配していた天候も幸運にも降雨はなく、プログラムどおりの展示が行えました。
ちなみに航空祭終了後は駅までのバスが長蛇の列になるのですが・・・
ここで今年はいろいろ考えましてタクシー会社にタクシーを拾えそうな場所を聞いておきました。
これが大当たり!
タクシーを普通に呼ぶことが出来ました。
F-15の展示が終わったのが14時半頃だと思いましたが、早くも14:50には駅ちかくの喫茶店でコーヒーを飲んで一服できました(^^)
但し・・・その代償で地上展示を全部は写せませんでしたし買い物もできませんでしたけどね(^^;
以上、静浜基地航空祭2015の模様でした。
静浜基地航空祭 その1/その2/その3