私が10代の頃は、まだビデオデッキは高嶺の花でした。ビデオ機器といえばソニーが第一でとても高価なものでした。だからタメ息を付きながらカタログを眺めていたものです。それとビデオの性能の面では音声部分が全然ダメで、そもそもテレビの音声多重がはじまる前なのでビデオも当然モノラル、しかもその記録方式はテープの端っこに固定ヘッドを使って録音するというものだったため、オーディオレベルには程遠いものだったようです。その時期にテレビの音声多重がはじまり、それに合わせせてビデオもステレオ録音に対応するモデルが出現し、オッと思ったものです。
ところが記録方式は同じままヘッドはもともと狭いところにそれを更に2分割してLRヘッドにしたので音質はますますヒドイものになったのではないかと推測します。カタログを見てもステレオ録音を謳っている割にはなぜか音質には触れていないのが当時としても不思議に思っていました。
そうこうしているうちにビデオデッキのスタイルがオーディオのコンポサイズにまで小型化されてきました。つまりオーディオ機器と並べて置けるようになったのです。見た目も超スタイリッシュになりました。それまでも徐々に小型化されてきましたがまだオーディオの一部にはなれませんでした。ところが肝心の音声だけは相変わらず固定ヘッドのままでした。
そこへ衝撃的な製品が現れました。ソニーSL-HF77です。(1983年)いままでと全く違う音声記録方式で映像ヘッドと同じく回転ヘッドに音声も記録するというものでした。ビデオの固定ヘッドへの記録はカセットテープに比べてもとても遅いスピードの上にヘッド幅もメチャクチャ狭いので原理的に良い音は録れるはずがないのです。
私はカタログを見て震えました。遂に自分のためのビデオが出た!ソニーが満を持して発表したフラッグシップモデルでもあるため値段も299,000円と超高価でした。
このモデルが出るすこし前にSL-F11というコンポサイズで薄さ8センチという超スタイリッシュなモデルが出た(1982年 278,000円)がステレオではあるがまだhifiではなかった。思わず買いそうになるほどカッコは良かったが我慢して良かった。
SL-HF77は機能が満載なだけあり、厚さ(薄さではない)10.5センチになった。
ビデオでは初めて音声レベルメーターが搭載された!(しかもデジタル)
色はメタリックシルバーとメタリックブラックの2色あるが、なぜか型式は区別されてない。(私はメタリックブラックを買った)
このキー(操作ボタン)がとても先進的で、薄いパネルをペコっと押すとわずかに凹む感触を今でも覚えている。他にこういうやり方のものを見たことがない。
テレビの方では一足先に画期的なチューナースピーカー別体の「プロフィール」が出現していよいよ映像機器がオーディオレベルに肩を並べるようになった。
ソニーにとっても歴史に残る(と思う)hifi第一号機だったがその後の方がいろいろあって…
次にSL-HF77の記事を載せます。
以降はSL-HF77のモトになったと思われるSL-F11のカタログ。SL-HF77が8ページなのにこっちは13ページもある。hifiモデルをこれのわずか1年後に出したのが後ろめたかったのか?
ステレオ録音できる割にはその事にはあまり紙面を割いてないように感じる。
カタログは書いてある事ではなく、書いてない部分が大事という事を教わった。(新聞などもそう)
※この記事の作成には「ソニー坊やと呼ばれた男」に掲載されたカタログ写真を使わせていただきました。
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Posted at
2023/07/17 18:32:48