時折浅い開度の3速5000rpmあたりで息つきのような現象が起こるようなので対策すべく、ジェットニードルの高さを変えてみようかと取り出して、何気なく予備の純正品と見比べてビックリ!
タイトル写真のように、似ても似つかない、強烈なテーパーの別物が入っていました。
※ジェットニードル(針)と、それを受けるニードルジェット(穴)のすき間から燃料を吐出するので、
細い針ほど、テーパー角がきついほど、針の高さを上げるほど、吐出量は増える傾向になります。
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【ジェットニードル】
今回のニードルは現車に付属してきた純正キャブレターに組まれていたもので、詳細は不明です。
全長は僅かに長目ですが、クリップ溝が多いので、上に伸びているのかもしれません。
一覧比較できるように並べて撮影してみました。
先日購入した社外品のヤマハTRX用リペアキットに入っていたニードルは両者の中間のような形状で、先端に5本、溝が入っているのが興味深いところ。
念のためストレート径(いちばん太いシャンク部分)を比べてみたところ、
今まで使っていたものは、5/100mmほど純正品よりも細いもので、刻印もありません。
(乱筆とカメラのレンズに埃が入っていて見づらいのはご容赦を)
併せてスライドバルブのリターンスプリングも撮影しました。
短いのはまだ使っていない、社外品キャブレターチューニングキットの”ダイノジェット”製で、やや細めの線径で20mm近く短い全長です(2本で長さが数ミリ違うので、差分をワッシャーでプリロード補正すべきと思います)。
想像ですがほぼ同じばねレートで、短い分プリロードが少なく、動きやすい(速く上がる=吹け上がりが速くなる)仕様と思われます。
ドゥカティに特別な思い入れがなく、当分の間、面白おかしく遊びたいだけならば、多少の粗があっても今までのニードル+短いスプリングを組んでみるところでしょうけれど、
筆者はオリジナルの状態を理解するのが目的で、以前からのアイドル回転不安定の症状が残っているのも気になっているので、ひとまず純正品を標準高さで組み付けて症状が出ないか確認してみることにします。
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【スライドバルブ】
純正ジェットニードルを、メーカーオリジナルの組み方でスライドバルブに差し込んでみたところ、うまくセットできないことが判明。
先日ヤマハ用の社外補修部品に交換したばかりですが、スライドバルブ内径部の底が、元々装着されていたもの(ドゥカティ純正?)とは形状が異なってました。
元々の装着品は、スライドバルブを作動させるための負圧経路穴からニードル下のワッシャーを浮かせるための1/3円弧状の土台(拡大すると、いちばん奥の中心部右寄りに見えます)があり、
実際のニードルセット高さも土台の厚み分だけ、基準に違いがありそうです。
できるだけオリジナルの状態を知りたいので、元々装着品を再使用します。
バルブ摺動面の荒れを#1500耐水ペーパーで研磨してから、ガスライターで炙って均してみました(樹脂表面の微細なささくれを焼いて滑らかにするため)。
左のツヤがなくガサガサしているのは修正前、右が修正中(試しに炙っただけ。その後研磨し、再度炙り)
リターンスプリングは当然、標準品を使用しました。
この程度の変更作業をするにも、エアボックス/電装品/バッテリーケースユニットを脱着する必要があり、エアボックス部を分離して作業性向上を図れるか、後日考察してみたいと思います。
フューエルインジェクションの場合、ECUやチップにアクセスできる機器があれば、
機械構造部分を触ることなく任意の範囲の空燃比や点火時期を変更でき、ジェット類などの交換部品もないので良いですね。
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【再組立後、試運転】
夕方の時間帯は交通量が非常に多くロードテストに不向きなので、その時間に作業を行い、交通量の少なくなった夜間に試運転を行うことにしています。視界が限られるので操縦性の機微を試すには向きません。
自宅前で暖機・パイロット再調整をするのも憚られる時間帯だったので、随時のアイドル回転調整を除き、組み替えたスライドバルブとジェットニードル以外は前回試運転のまま。
結論は、パイロット系含め煮詰める余地はありそうですが、アイドル回転が下がらなかったり、時折上がったりする症状は収まったようです。
あくまで仮説ですが、5/100mmとはいえシャンクの細いジェットニードルにがたつきがあったと想像でき、穴に対するズレや傾き(低速域を受け持つ先端ほど変位が大きくなる)が再現性のない症状の原因だったようにも思えます。
テーパー角がまるで違う標準品では、もっさりして気持ちよく吹けないのではないか?と懸念していましたが、多少吹けがマイルドになった気がする程度で、点火プラグの焼けにも大きな違いは見られませんでした。
3速5000rpm程度までの負荷ではスライドバルブはそれほど作動しないということでしょう。
パイロット系の調整をしながら、試運転を重ねて様子を見たいと思います。
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手を入れる楽しみも大きい空冷ドゥカティゆえ、車齢30年ともなるとオリジナルからの変更部分もいろいろあるだろうと想定はしていましたが、
思いもつかなかった部分が変更されていたり、不具合があったり、他機種用同型品とは部品の違いがあったりで、基本的な状態を把握するだけでもなかなか大変です。
筆者は愛好家として試行錯誤は苦ではありませんが、バイク屋の業務として考えると、専門のノウハウがないと採算が合わない可能性がありますね。
改造に関しての車検合否基準が緩和された時期の車両で、底値を経験した中古車相場や、ダイノジェットや社外のリペアキットの存在が、部品混用や粗雑な修理改造に輪をかけていますが、
エンジンも車体も手を入れやすく、制限速度+α程度の領域で楽しめる、絶対的価値として素晴らしい素質のある車両です。
まずはメーカーオリジナル本来の”不具合のない状態”を把握してから、
順列組み合わせ変更などの現車合わせや発展的チューニングを楽しみたいと思います。