
リヤショックを交換をするつもりで、取り外しに掛かりました。
フロントフォークは突き出し量変更で車高を変えられますが、
純正リヤショックには全長調整機能はなく、後ろを高くした際の挙動を確認するべく、全長が5mm長い、SSie用を用意しました(やはり中古ですが)。
通常の整備では、リヤアクスルで支えるメインテナンススタンドを使い、
フロントを持ち上げたいときはエンジン下にジャッキを入れて行なうのですが、
リヤショック取り外しとなると車体後部が落下してしまいます。
兄弟車種用のセンタースタンドを使うと便利なのですが、
クランクケース側マウント穴をフットペグに使ってしまったため、一旦取り外さないと使えません。
そこでリヤショックの上下取り付けボルトを緩めておき(まだ取り外さない)、
大型の脚立にバイクを跨がせ、後方のフレームをタイダウンベルトで吊り上げます。
引っ張り式のものでは困難ですが、ラチェット式なら重量物を持ち上げられるので便利です。
先にボルトを緩めておいたのは、吊り上げてから力を掛けると車体がグラグラと動いて緩めにくいためです。
ベルトのラチェットでショックユニット全長と車体/スイングアームの取り付け穴がピタリと合う高さに調整し、確実にロックを忘れないように(落下の危険あり)。
ねじを傷めないようボルトに車重が掛からない状態で抜き出し、ショックユニットを取り出します。
側方からは抜き出せるだけのすき間がないので、シート下のブローバイボックスを持ち上げて、その隙間から上方に抜き出しました。
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取り外したショックユニットはオイル漏れやロッドの錆などはなく、バンプラバーも問題ないのですが、
上下とも取り付け部のピローボールがほとんど固着している状態で、素手ではブッシュを回せない状態でした。
とりあえず取付穴のピローボールを挟み込んでいるブッシュ(カラー)とOリングを取り出して、ピローボールの目玉部分を回しながら、パーツクリーナーで内部を洗い流してみます。
ブッシュは左右から圧入されているので、外周のすき間にマイナスドライバーを差し込んで少しずつこじって、数ミリ手前に出てきたところで反対側から中央部をポンチで叩いて抜きだしました。
荒業で少し傷がついてしまったので、ダイヤモンドやすりで端面や内外径を修正しておきました。
何度も繰り返して吹き付け洗いを行うと、大量に錆色の洗浄液が出てきました。上下ともに行います。出てきた錆の分だけ、摺動部が摩耗しているはずです。
ステアリングステムやホイールベアリング、ブレーキ回路などと同様、この部分も長年整備されていなかったようです。やはりわずかですがガタツキがあります。
本来は交換すべきですが、ひとまずグリスアップで様子を見ます。今までよりははるかにマシでしょう。
大方きれいになったところで、高荷重対応の硬めのモリブデングリスをすき間の中に押し込んで各方向に回転させることを繰り返し、内部に行き渡らせます。
再組み付けに際しては、外周にもグリスを塗ってブッシュを圧入しますが、
初めにプラハンマーで軽く打ち込み、斜めに押し込んでしまわないように、
両側のブッシュが直線上にあることを確認した上で万力で圧入します。
取り付けボルトを締めこめばブッシュも自然と押し込まれるので、
フレーム側/スイングアーム側の取り付け部の幅に収まればOK。
ピローボールやブッシュを傷めないよう、万力であまり強く挟み込み過ぎないようにします。
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【再組み付け後の変化】
別のショックユニットを試してみたい気持ちがとても強いので、特に期待はしていませんが、
今までの状態と比べ、どれくらいの変化(改善しろ)があるのかはやはり興味があります。
面倒だけれど、これを逃すと比べる機会は恐らくないので、
潤滑された本来の状態での乗車感も一応確認しておこうか、という程度の気持ちで、
シートを押してみると、リヤショックの動き出しが明らかに滑らかです。
これはかなり、走りに変化があるかもしれません。
なお、分解前に測っておいた、跨った際の車高と変化はなく、地面~リヤウインカー上端まで、730mmです。
実際に管理したいのは走行時の車高なので、静止状態での車高は整備前との違いを見る基準作りに過ぎませんが、不具合の際など、元に戻すための資料として記録しておくのが得策です。
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試乗してみたところ、乗り心地は大改善!
その昔、750F1のリヤショックをオーリンズ製に交換したとき以上の変化を感じます。
いつものテストコースには、継ぎはぎや窪みだらけで荒れた路面の区間があり、
今までもギャップで跳ねたり姿勢が乱れたりはしていなかったのですが、
突き上げを感じることはあり、お尻を浮かせて通過するなど、滑らかさなどとは無縁の状態で、
「恐怖を感じず通過できるのは、さすが倒立フォーク!」などと思っておりました。
驚いたことに潤滑後は、後輪はギャップを舐めるように、何事もないように通過していきます。
マジックカーペットライド(空飛ぶじゅうたんの乗り心地)という言葉が大袈裟でないほど!
【追記】数日経って冷静になってみると、さすがに何事もないということはないですが、
当たりが柔らかいので突き上げのような衝撃は感じません。
コーナリング時は、スロットルを開けた際の後輪のグリップ感が、今までになく伝わってきます。
アンチスクワット(駆動力がリヤサスペンションを伸ばそうとする)のレスポンスが上がっているということでしょう。
自分なりに自信をもって開けていける感触です。
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これは嬉しい誤算で、これならリヤショックを交換しなくてもいいや、と思えるほどです。
予定していたショックユニット交換はしばらく延期(笑)
本来のバイクの挙動を体得するまで、当分このまま調整しながら乗ってみようと思います。
今度はフロントフォークの動きの渋さを強く感じるようになってしまいました。
キャブレター最終仕様のSS/モンスター用の、グレードの高いはずのフォークですが…
分解組立用の治具は用意してあるので、折を見て以前使っていたフォークを練習台として分解してみたいと思います。
本格的オーバーホールはプロに任せるとして、定期的なオイル交換やばね組み替えテストくらいはできるようにしておきたいと思います。
それにしても、一巡したつもりの車体整備にまだ盲点が残っていたとは。。。
その分まだ伸び代があると考えた方が幸せだ(笑)