
どんな車両も整備の勘所があり、必要な工具もそれぞれと思います。
また、筆者のように数十年も経過した、程度もそれなりの車両をいじっていると、
やすりや砥石、たがね、タップ&ダイスといった加工工具の使用頻度は、スパナやドライバーと同じくらいかそれ以上だったりして「いったい何をしているんだろう」と思えることもしばしば(笑)
以前関わったXZや、今回のSSの場合、結果としてキャブレター調整の頻度が高く、調整や脱着に際してはマイナスドライバーを多用しました。
調整箇所が奥まっていて手が入らなかったり、正面にスペースがなかったりすることも多いので、
安価な多様な工具を買ってみたり、すでにあるものを加工・改造して使ったりしています。
プラスドライバーは浮き上がらないよう、強く押し付けて回すため、磨耗が避けられないので、出来るだけ硬い材質の、正確な形状のものを使う必要がありますが、
マイナスドライバーは大きな力で締め付けることはほとんどないので、筆者は安いものを素材に、使い勝手がいいように加工・改造して使うことが多いです。

主にマイナスドライバーを並べてみましたが、いずれも加工してあるものです。加工の内容は
●柄(持ち手)部分の小型化(短縮・テーパー化)
●ブレード(先端)部の幅の切削
●ブレード部のとがった角を丸める
●ブレード部手前の、幅が広がった箇所の切削(寸胴化)
といったところが中心です。
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右から順に
◆いちばん右は、ただの直径12mmのアルミの棒です。柔らかいため相手に傷がつきにくいので重宝します。
アクスルシャフトの抜き出し・組み付けや、リヤショックのスプリングプリロード調整用リングナットを回す際など、鉄のハンマーで叩いて使います。
両側とも変形して広がってくるので、時々やすりを掛けて整形しています。
打撃による影響が懸念される場合は、ナイロン系と思われる樹脂製の棒を使っています。
◆2番目はアンテナ式マグネット。奥まった場所まで磁石に付けて運んだり、落としたねじ類などを探したり拾ったりする際に重宝しています。
◆右から3番目が”最新作”で、現在整備中のSSのパイロットスクリュー調整用。
辛うじてオイルクーラーを外さず作業できるようになりました。現車合わせ&運転者合わせのチューニングには手間を省いて作業に集中できることも重要。
SS運転中に立ち寄った職人向け工具・道具店で「思いっきり軸が長くて細いマイナスドライバー」がほしい、と相談して入手したもので、たしかVESSEL製。
試運転中ゆえ、その場ですぐ使えるもう少し細く長いものが希望だけれど、500円程度の安価なものなので「まぁ、改造すれば何とかなるだろう♪」ということで、タンクバッグに入れて持ち帰る。
帰路運転中、「サンダーで干渉部分を削りまくり、ベルトサンダーで角を丸める」図が頭に浮かんで(笑)、バイクの調子をチェックしながらも、どこから攻めようかとウキウキ気分♪
筆者は吝嗇家ではないが小心者ゆえ、1000円以上もする高級工具(?)は恐れ多くて新品を改造できないのである(笑)
パイロットスクリューの正確な真正面からはアクセスできないが、少しずれたところからフィットさせて回せるように、軸の広がった部分を細く寸胴形状に、先端ブレード部を狭くしつつ、現物合わせで角を丸めていきます。
パイロットスクリュー調整程度ならば大して負荷も掛からない。幅や角度がピッタリではなくても、マイナス溝やスクリューが収まる穴を傷めないで先端を溝に合わせられればOK。
柄(持ち手)はお尻の部分を10ミリほど短くし、軸につながる部分をテーパー形状に少しでも細くして、他の部品に干渉しないようにします。
筆者は器用では無いので、小一時間ほど要する作業だったと思いますが、店員さんとのやり取り含めて楽しいひと時でした。
◆4、5番目は、昔セットで買ったシグネットの製品。これも先端部近くの左右に張り出した部分を削り取っています。
本当は好ましくありませんが、てこにしたり、隙間に突っ込んでこじって使うこともあります(力を掛け過ぎないよう注意)
◆6、7番目は、恐らく十代の頃から使っている、柄が木製の取っ手を貫通しているもの。
おぼろげですが、RDやTX愛用の頃、パイロットスクリュー調整に使っていた気がします。
今ならもっとマシな調整が出来るだろうに・・・思い返すと切ない。。。
これも先端部分をストレートに削ってあり、特に7番目は先端を1ランクくらい細く削ってあります。
貫通式なので、お尻側をハンマーで叩いたりします。てこにしてこじることが多かったので、少し曲がっては修正を繰り返しています。よく見るとグニャグニャ(笑)
◆8番目(青)は、20代の頃から重宝している軸の長く細い使いやすいもの。確かVESSEL製。
やはりストレート形状に削って、先端は角を丸くしてあります。柄が細く狭いところにも入るので、若干幅がせまいけれどエアボックスのホースバンドを緩めたり締めたりに使っています。
◆9番目(黄)は、ミシンか何かの付属工具と思います。いかにも安物(笑)。
1週間ほど前に加工したもので、キャブレター装着状態でのパイロットジェット交換に使っています。
【追記】8番目と一緒にリヤショックのエンドアイブッシュ抜き取りという、こじり作業に使った結果、先端が折れて破損。やはり材質や熱処理がそれなりの品と思われます。【追記ここまで】
◆10番目は、確か750F1の頃に使っていたもので、先端がコレットになっていて差し替えできるもの。
中間部がスプリングになっていて、曲げて(しならせて)使うことができる。FCRのパイロットエアスクリュー調整に使っていたような気がします。
◆11番目はXZ400のキャブレター調整に使っていたような気がします。
4・5番目と同じ形状の短い柄を持っていましたが、サンダーで散々切ったり削ったりして、これ以上小さくすると力を入れて回せないほど小さくなってしまいました(笑)
回転角度を管理しやすいよう、サイコロよろしく、1~6の点を書いてあります。
◆12番目はやはり750F1の頃に車載工具にしていた差し替え式の小型ラチェットレンチ。
今はSSのキャブレターを装着したままの状態でスターティングジェット(メインジェットを固定している)の着脱に使用。
◆上の写真、右の赤い差し替えドライバーは、750F1に装着したFCRの底面にあるパイロットスクリュー調整に使っていたもの。柄(赤い部分)は短縮し、マイナスビットは差し込み部(+側)を残し、荒業で全体に一回り小さく削ってある。どれも長いドライバーが入らない部分に使うもの。
上の写真は「最新作」のドライバーの柄。両端を削り込んで流線形状になりました。
ブレード部を幅狭く削り込んで、角を丸めてあります。少し傾いたところから穴の中のパイロットスクリューを回すため、角が穴の壁面に引っ掛かりにくいようにしてあります。
マイナスドライバーはプラスとは違い、いざとなれば先端を切り落とし、形状を何度でも作り直せるのがありがたいですね。
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【例のごとく余談】
筆者が使い勝手や好みにあわせて手を加えているのを「カスタマイズですね」といわれることがあるのですが、言葉が独り歩きしているような違和感を覚えた。
店が顧客の依頼に基づいて行なっているわけではないので「パーソナライズ」ということになるのだろうか。
直接筆者には関係ないが、毒吐き(笑)
●雑誌などで顧客向けに改造を行なうショップを「カスタマー」と表現しているのを時折見かけるが、「customer」は顧客そのものを意味する言葉であり、噴飯ものである。
改造ご法度時代には「カスタマイザー」と書かれていたもので、リスペクトを持って物を言って(書いて)ほしいものだ。
●同様に、ボルトオンのキットパーツてんこ盛りの車両を「フルカスタム」と称しているのを時折見かける。
下取り時にはさっさと元に戻せるような、ゼニ勘定計算ずくの車両をカスタムマシン呼ばわりされるのに非常に抵抗があるのは筆者だけだろうか?
挙句はメーカー純正オプションで固めたものまで「フルカスタム」と称する場合もあるようで、まさに大メーカーの掌で踊らされているのを誇っているようで滑稽に思える。
当方含め、人の子は間違いもあるのが当たり前なので、粗探し的な言動は慎むべきではあるが、
上っ面だけをすくい取るような言葉の使い方は避けたいと思うこの頃。