
風が吹いたりして結構寒い日が続いていますが、じっとしていられず(笑)気になるところに手を入れています。
コミネの乗車用オーバーパンツを着用して作業してみると、寒さが気にならないどころか少し力仕事になると汗ばむほど(!)で驚いています。
膝下にパッドが入っていて、膝をつく作業も苦にならず、整備用にもおすすめです。
味をしめて、お客さんが来ない時間帯のデスクワーク時も着用しています(笑)
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【カウルマウント用サブフレーム修正】
電装系の改善にあたり、左側のカウルマウントフレームの取り付けを一ヶ所弛めたら、フレーム側ボスとねじ穴一つ分くらいずれて(歪んで)いたので、どうやって直すか思案していました。
修正したつもりが余計に歪ませていては話にならないので、どこがどう歪んでいるのか、各部も弛めてみたり、大まかに中央から右側の寸法を基準に比べてみると、どうやらこの部分だけのようでした。
ちょうどヘッドライト下から後方に伸びる直線状部分、右側で定規を当ててみると真っすぐなんですが、左側は下の写真の指の奥あたり、クロスメンバーとの溶接部を基点に曲がっているようです。
転んで曲がるような場所とは思いづらいのですが…
これなら話は簡単で、少々荒療治ですが、太いパイプをクロスメンバーのところまで被せて、下向きに曲げ直してやればOKです。
曲げ直しの際、弾性で戻ろうとするので、若干行き過ぎのところまで振ってやります。下は修正後、ボルト締め付け。フレーム側ボスとピッタリ合いました。
無理やり固定されていた曲がったサブフレームによる変な応力がなくなったので、操縦性にも変化があるかも??
★カウル用サブフレームの形状は、750F1までのドゥカティの流儀とは一線を画す、
タンブリーニ時代のビモータの手法を思わせるものです。
現車は黒塗りで存在感を消している上、惜しいことにカウルを取り付けるとほとんど見えなくなってしまいますが…
ステアリングヘッドパイプから前方に伸びるヘッドライトブラケットが主構造体なのは旧来のドゥカティ同様ながら、
小径鋼管を組み合わせた立体形状で、無粋な板状のブラケットを極力排除し、
フロントフォーク外側を経由してヘッドライトやミラーのマウントを兼ねた合理的構造です。
ヘッドライトのマウント方法に至っては、なんと3ヶ所の光軸調整スクリューを活用した工具不要なクイックリリース方式!
すでにパゾなどでドゥカティ(カジバ)の仕事(デザインスタジオのCRC所長)をしていたタンブリーニの息が掛かっているのでは?という気がする凝ったもので、いじっていても楽しくなってきます。
90年代後半、後にMH900eで名を上げたテルブランチによるデザイン、インジェクション仕様SSの世代になると、カウルフレームは簡略化され、
一括ユニット式マウントだった電装品の配置は最短距離のロケーションを目指したのか、カウルに隠れるとはいえあちこちに部品が(見た目の)指向性なく配置され、整備の際にも垣間見えるイタリア車らしい美的スマートさは大いに減じてしまったように思えます。
同じくタンブリーニによるドゥカティ916と、テルブランチによる999の違いにも通ずるような気がします。
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【メインハーネスの取り回し修正と、電装品配置換え】
●現車はステアリングヘッドパイプ脇(車体中央より)にメインハーネスが通されていたのですが、アース線取り出し位置などが不自然だったので、他の車両と見比べてみました。
ヘッドライト後方左側で集中コネクタ群を介して接続されたメインハーネスは、上の写真のように、そのまま左側カウルフレームに沿ってフレーム本体に到達するのがオリジナルのようでした。
それに合わせて、ヘッドライト背面の配線取り回しをできるだけ絡まないよう見直し。
(ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返し、これだけでほぼ一日仕事でした)
●フレームに沿って配線類を束ねるのに、近代イタリア車同様にホックのついたゴムバンドで見える部分を留め、カウル内側で隠れる部分にはベルクロバンド(マジックテープ)を使って束ねてみました(写真は使い回し)。ベルクロは柔らかい側を内側にして巻いています。

現車にはタイラップが多用されていましたが、配線を圧迫し、トラブルの原因になりかねないのと、切り口で手を傷つけたり、タイラップを切る際に配線被覆も傷めてしまうリスクがあるので、純正部品のゴムバンドを見つけた時には「これだ!」と我が意を得たりの思いでした。
配線やケーブルの取り回しに、諦めがつくまで試行錯誤したい筆者としては、都度タイラップを切って捨てなくてもいいのも嬉しい限りです(今回20本ほど切断排除しましたが、切って短くなったものも再利用できなくはないので取ってあります)。
★クラッチやスロットルのケーブルなどをできるだけ抵抗なく作動させるため、何かに沿わせるのではなく空間の”とある部分”を通したい場合は、規制するガイドのように、タイラップ複数を鎖状にして使用することもできます。
●エアボックスと電装品・バッテリーマウントをユニットにして、SSとMで共用した90年代前半のドゥカティ空冷車両のやり方は、メーカーの車両組み立て工程を考えると膝を打ちたくなるほど合理的で面白いものですが、
キャブレターのメインテナンスや設定変更をおこなおうとすると、電装品やバッテリーごと脱着することになるので、乱雑な処理がされていた現車の場合、配線が引っ掛かったり接続を間違えたりしないよう対策が必要と思いました。
写真では判りにくいので文字にすると、
〇マウントケースに穴を開け、ハイテンションコード(プラグコード)を通した。
迂回することで不自然な急な曲がりになるのを対策。コード短縮も可能。
〇各気筒独立のイグナイターや各配線に「O」「V」とマーキング。同時に取り回しを整理。
〇バッテリーマイナス側に、スターターモーターからのアース線をはじめ、他のアース線もできるだけまとめて直接接続。セルの回り方やエンジン始動性が劇的に改善!
〇スターターリレーを車体左側、フルカウル用ブラケット取り付け部内側に移設。
下の写真は純正品ブラケット切断加工検討中の図。切断成形後、裏面にポップナットを挿入。
これにより手を入れにくい位置(エアボックスユニット下面)のスターターリレーを都度脱着する必要がなくなってストレスが減った。
〇同じ部分の外側に、充電レギュレータを仮移設。

ステアリングヘッドパイプ下がオリジナルの位置だが、スロットルケーブル取り回しの妨げになっていたので、冷却も兼ねて車体左側外部に”仮”装着。
フレームのカウルマウント取り付け部を挟み、ボルト(後方のみ)は奥に見えるスターターリレーブラケットと共締め。前方はタイラップ留め(あくまで”仮”)。
Vバンク側シリンダーとフィンの角度を揃えたかったが、カウルに当たるので妥協。
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何のことはないような、元に戻しただけみたいな作業もありましたが、
ダイヤグラムを確認しながら配線を整理したり取り回しを考えたりすることで、電気配線や配管の大まかな概念が頭に入ったような気がします。
見ただけでは苦手意識が起こりますが、この時代の車両は触ってみると面倒でもさほど難解なものではありません。
各部の確認や修復作業はまだまだ続きます。次は何が出るか?楽しみは尽きません(笑)