
やっとまともに動かせるようになってきましたが、運転手がブランク明けでまだ調子が出ていない(?)ことはそれとして、
気持ちよく操れないので、車体の姿勢を見直しました。
原因は車体姿勢・車高調整だけではなく、スロットル開けはじめのレスポンス、タイヤ空気圧やプロファイル(断面形状)、ハンドル・燃料タンク・シート・フットペグの形状・位置関係(側面図だけでなく立体的に)、サスペンション設定などいろいろな要素が関連してくると思います。
特にステムベアリングやキャブレター及び周辺整備前は、四つ角を曲がる際などリーンの際の安心感がなく、スロットルを開けても閉じてもギクシャクしてしまい、
なるべく寝かさずに半クラッチでごまかしながらよたよたと曲がるような有様。。。
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変化を確認するため、実際は一度にいじらずに一箇所ずつ変更しています。
様子を見ながら、場合によっては元に戻して、次の作業に進むようにしました。
●問題点を洗い出し、調整・変更による弊害も見るため、いろいろな条件を織り込んだ筆者独自のテストコースを設定しています。
最終的には動きやすさと安定感の妥協点を探ることになりますが、知らない出先での不慮の挙動に慌てないように仕上げていきましょう。
(小さな切り返しが必要な連続コーナー。舗装の荒れた路面。先が見通せず途中で曲率が変わったり、状況によって速度を調整する必要のあるカーブ。右左折を伴う坂道発進。信号での発進停止を繰り返す市街地走行などを織り込んであります)
●試運転の際は無理に速度を上げる必要はありません。低速時ほど慣性による”ごまかし”が効かない分、アライメント変化(静的・動的)による動きやすさや安定感の違いがわかりやすくなります。
キャブレターセッティング同様、操縦性も低速域から最適化していくのが定石と思います。
日常速度域でまともに走れないバイクをサーキットなどの高速度領域で信頼して走らせられるはずがありません。
●良い状態になると好みの操縦性に加え、交差点で停止する際など「停まってから(着地のため)足を出せばよい」くらいの安定感が伴ってくると思います。
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●フロントフォーク突き出し量調整&伸び切り時の内圧適正化
前輪の舵角のつき方が遅く感じ安心できなかったので、多めに突き出されていた(タイトル写真参照)フロントフォーク突き出し量を、アッパーブラケット上面から25mm→15mmとしてみました。始めは10mm単位くらいで動かすと挙動の変化が判りやすいと思います。
併せて、フロントフォークのトップキャップを緩め(ねじ部のOリングが見えるところまで)、伸び切り時のフォーク内圧を大気圧に合わせておきました。
XZ400整備時同様、空気を吸い込む音がしたので、冬季ということもあり内部はかなり減圧されていた(=伸び切り時負圧だった)ようです。
●フォーク突き出し量増加=キャスター角が起きて曲がりやすくなる、と短絡的に思い込んでいる向きも多いようですが、逆に舵角の入り方が弱くなり、曲がるきっかけが掴めないまま何となくイン側に寄ってしまって理想的なラインを取れず、スロットルを開けられない、ということも十分起こりえます。
ではなぜ曲がるようになるのか?という根拠はなんでしょうか。
むしろキャスター角が強いほど、キャンバー変化による前輪セルフステアトルクは大きくなるのではないでしょうか。実際に突き出し量を加減して試してみると面白いですよ。
前上がりにしたことで以前より舵角の入り方が強く速くなりましたが、キャスター角変化によるというよりも、重心高の変化による操縦性への影響と思います。
●リヤサスペンションの減衰力調整。伸び側、縮み側とも最弱に
車体取り付け側が縮み側、スイングアーム取り付け側が伸び側の、調整スクリューです。実用速度域での姿勢変化を速く(大きく)して動きをわかりやすくしました。リーン開始が軽くなるのがわかります。
減衰力=サスペンションのストローク速度を管理するもので、荷重を受けた際のサスペンション作動速度を遅くするので、あるところまでは乗り心地もよくなりますが、
概して強くするほど曲がろうとするアクション開始のタイミングがつかみにくくなり、動きを重く感じると思います。
特に縮み側はばね反力が重要で、状態にもよりますが一般ユーザーの日常的ツーリング速度域では減衰力最弱から始めて、ギャップを踏んだ際の収束が悪いなどの弊害がある場合に必要に応じて伸び側を段階的に強くすればよいと思います。
●リヤサスペンションのスプリングプリロード調整
標準品に対してどう違うのかよくわかりませんが、社外品(ハイパープロ)のばねが組まれています(以前のオーナー曰くフロント側も)。
スプリングプリロードとはショックユニットに組み付ける際のスプリングの初期荷重で、ばねの反発力と重さ(車両+乗員)が釣り合う位置の調整です。結果として後輪側の車高も変わりますが、伸び側と縮み側のストローク長のバランスはメーカー設定値に合わせるのがベストと思います。
以前、友人のS1000Rでも調整をしましたが、乗車時にリヤショックが沈まない=サスペンションが伸びきった(伸び側残りストロークが無い)状態なので荷重が抜けると後輪が浮いてしまい、
さらには前後の荷重移動を妨げてしまうので車体の動きが過敏で不安感が高くなります。
特に下りの荒れたコーナーなど、接地感がなく恐ろしくて乗れたものではありません。
※誤解している向きが多いようですが、ばねの硬さ(ばねレート=荷重に対するストローク量の割合の比率。比例グラフの傾き角度で考えると判りやすい)はプリロードを掛けても変わりません。荷重に対してストロークが過大な場合、ばねレートを上げる必要があります。
実のところ乗り心地やストローク感には不満はなかったのですが、
先に減衰力を弱めた分、ばねの伸びが速くなった(落ち着きが減った)気がしたので対処してみます。
とりあえずリングナットを一回転(ねじピッチは1.5mm程度か)緩めてみて試乗してみたところ、気になっているリーン開始時の後輪側の反応が余計に鈍くなったようなので、半回転締めなおしました。調整前よりも半回転緩めた位置で、若干後ろが下がっているはずです。
違和感はなく、更にばねを締めこんで(後ろも高くして)伸び側減衰力も上げてみるのも面白いかもしれません。

調整用リングナットは燃料タンクを外さないとフックレンチで回せない位置にあり、タンクを都度脱着するのは非常に面倒(3本ある燃料配管と燃料ポンプ配線を全て脱着し、ヒンジのピンを抜き差しする)なので、アルミの棒を当ててリングナット(鉄製)を叩いて回しました。(以前親しんだ750F1にはプリロードリモートアジャスターを組み込んでいたのと、タンク脱着も非常に簡単だったので、意識したことのない部分でした)
リングナットが下側ならば、調整のハードルは下がるのですが、ばね下側を少しでも軽くしたいんでしょうね。
※リングナットにはどれだけ回したかわかるよう、マーカーで印をつけておきます。
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【調整後の印象】
リーンと共に前輪が素早く切れていく、筆者が考えるドゥカティらしい挙動が感じられ好ましくなってきたのですが、後輪側が同期して傾こうとしないような感覚があります。
標準よりワンサイズ太く(180/55VR17)中央ばかりすり減ったリヤタイヤに要因があるように思えるので、ひとまず別の摩耗の少ないタイヤ・ホイールセットに組み替えて試し、できれば400/750SS標準の4.5インチ幅+160/60R17サイズも試してから、新品タイヤを導入したいと思います。
キャブレターやタイミングベルト張り調整で全閉からの開けはじめがやや使いやすくなったものの、まだ開け始め時、想定より駆動力が強くかかってしまい、速度も上がってしまうことに対処しきれていませんが、
リヤブレーキを使って駆動力に伴うサスペンションの伸びを抑えることで、四つ角も何とかスロットルを開ける方向でしのげるようになってきました。
いろいろ工夫しながら走らせていて、現状も意識して腰で曲がる感覚で乗れば我慢できないほどではなく、アクセルを開けていける中速以上のコーナーでの据わりの良い安心感は750F1とは別次元の印象です。
とはいえ前後のバランスが悪い分、前輪の舵角を抑えるように力が入ってしまいがちで本来のコーナリングを妨げている気がするので、乗り手にも変な癖がつかないよう早めに対処したいと思います。
この辺りのハンドリングの煮詰め、変化を「よく分からない」という声が周囲では多いのですが、
曲がり始めのリーンアングルと舵角の入り方=いわゆるセルフステアや、そこからのスロットルの開けやすさは無意識に反応して操作しているはずの領域で、とくに一般道でのコーナリング”戦闘力”を大きく左右する部分です。
また、筆者自身もまだまだ試行錯誤の連続ですが、風説や他人の意見を参考にはしても、鵜呑みにするのではなく、
「なぜそうするのか?」因果関係を自分なりに考えて実践し、自身の感覚に正直になって結果を判断することが重要と思います。
思い入れのある(はずの)愛車。自身の好みに合わせた調整を見つけ出し、不安が少なく走りが楽しくて仕方がない境地を目指したいところです。
【追記】
調整に励んでいる時は「よくなるに違いない」というバイアス(偏った先入観)が働く可能性もあるので、後日冷静に再試乗し判断することも重要と思います。
筆者などは日々「次はどうしようか?♪」「何かできることはないか?」などと考えてばかりいるので(笑)
違った角度からの対応策を思いついたり、書物などで気付かされたりすることもあり、一度仕上がったと思っても、新しい考え方を取り入れてみることも新鮮さを運び込み、楽しみを広げることと思います。