
先週のショートツーリングで浮かび上がった問題点に対処していきます。
●燃料消費過大対策⇒パイロットジェット変更(#52.5⇒#50)
(タイトル写真は手持ちの番手違いパイロットジェットの保管容器)
重かった排気音質が、アイドル時から角が取れてマイルドかつ軽快になった印象。
試運転をすると、吹け上がりも以前より軽快になった。
パイロットスクリュー戻し回転数は、一般的な1と1/2程度となった。
空燃比、あるいは燃料霧化の具合が変わったゆえと思われるが、スロットルON/OFFの瞬間的なツキが改善したようで、
タイミングを取り辛かったアップシフト、駆動系バックラッシュを使って瞬間的に容易にできるようになったことも、運転の楽しさを大きくしている。
燃料消費は様子を見る必要があるが、パイロット系はほぼ確定と思われる。
現状の低速域で開けやすい状態でしばらく走り込んだ後で、中高速域の調整に入りたい(メインジェット選定煮詰めは公道では不可能だが)。
※現車は純正エアボックス+K&N純正エレメント型フィルター+STDカム+インマニ/ポート合口段差除去+若干のポート加工(インマニ側から覗いた範囲。詳細不明)という仕様。
900SSの標準パイロットジェットは#42.5らしいので、7.5番上げたところが現状で一応のベストとなった。
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【余談】
ドゥカティ発行のワークショップマニュアルは、キャブレターの構造原理に多くのスペースを割いているが、具体的な記述が少ない。
同じ形式のキャブレター装着のヤマハTDM850(4EP1)のサービスマニュアルを入手して目を通してみたが、XZ400のような構造解説までは記載がない。
この当時の日本はすでに、構造を理解して対処を考えるような整備は要求されない時代になっていたということだろうか。
それはともかく、ヤマハ発行の資料はパーツリストも同様だが、記載の不備や誤記が多く、参照すると却って混乱させられそうだ。イラストにしても、例えばホンダの場合、遥かにクリアで見やすい。
サービスマニュアルのキャブレターの項において、筆者がすぐに気付いただけでも、
〇部品名が「パイロットエアスクリュー」と記載されている(パイロットスクリューが正しい)。
〇二つあるパイロットエアジェットが図と表では逆に記載されている。
〇セッティング表「パイロットスクリュー 2」との記載では何を意味するか分からず、
別のページには「パイロットエアスクリュー標準戻し回数 3」とある。作業者は戸惑うこと必須。
SSやモンスターは出先でもアイドリングさせながら微細に調整できるが、TRX/TDMの場合はどうなのか?日常の使用において、いちばん重要な調整箇所なのだが…

筆者自身、職業として印刷物の編集に関わっていて、「顧客(ユーザー)目線」を常々意識するように心がけているが、それでも後から気付くことは往々にしていろいろとある。重版の際に修正されているとよいのですが。。。
製造・販売者側、あるいは執筆・編集者の一方的な「判るであろう」という思い込みや慢心、技術理解不足や、文章力や語彙の不足が、読者のニーズに合わない説明書を生み出す原因となる。
パソコン関連品や電化製品の説明書などで、表記の揺れ(部品名や機能など)や文章の不備がゆえに理解不能で、たびたび混乱させられるのと同様である。
筆者は自動車関連ならばある程度予備知識と好奇心がある分、想像を働かせることはできるが、
例えばパイロットスクリューとパイロットエアスクリューでは機能はまるで違う。
(調整する(弛めるほど流量が増える)対象が燃料量なのか、空気量なのか)
経験の浅い作業者ほど頼りにする必要がある、整備の根拠となる重要資料なので、本質的な部分のケアレスミスは許されず、車両設計者が最終責任をもって校正してほしいものだ。
※苦言を呈しましたが、ヤマハTRX/TDMのパーツリストがあると、ヤマハ経由でミクニBDSTの細かな部品単位で発注できるので、SS/モンスターのDIY派オーナーには入手をお勧めします。
但しTPS(スロットルポジションセンサー)や加速ポンプの有無、ジェット類など、細部の違いはあるので、あくまで参考レベルです。
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●ステアリングステムベアリングを、ほんのわずかに締め込んだ。
時計の目盛りでいうと1~2分程度。
調整後、スタンドから降ろしての押し歩きで、わずかなコトコトという感触がなくなった。
走らせてみると、舵角の入り方にはほとんど影響はないようだ。
わざと路面のギャップや継ぎ目を拾って走ると、以前と大きな変化はないが、コツコツと響くような感触が減っている。以前は僅かにガタが出ていたようである。これもひとまず確定。
ドゥカティはシートにどっかり座り込んだ”お地蔵さん走り”では「曲がってくれない」印象を受けるかもしれないが、
いわゆる肩と腰を入れる、身体の動きを先行させるような走り方をすると、積み重ねた整備の甲斐もあり、思うような動きになりとても楽しい。
整備も走りも「再現性」が重要ではないかと考える昨今である。
※一度分解整備・十分に給脂しておけば、アッパーブラケットを浮かせるだけで簡単に調整できるので、こまめにベストの締め具合(ガタが出ないぎりぎり軽い締め付け)を狙って手を入れたい。
ハンドリングが不調のドゥカティなど、本来の魅力の半分以下しか味わうことができないだろう。
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●フロントブレーキの摩擦面(ローター・パッド)を脱脂。
ベアリングからしみ出たグリスが摩擦面にも付着している可能性があったので、
パッドを外し、ホイールは浮かせて、摩擦面をパーツクリーナーを染ませたウエスで拭き取り。
特に制動力に変化はないが、状況から念のための処置。
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【対処後の試運転の印象】
試運転中は遅いクルマに詰まってしまうことがしばしばだが、やむを得ず後ろについて一定速度を維持する場合も、
30Km/h以下の場合(=ローギヤでパイロット⇔メインノズルのキャブレター領域切り替わりの回転域らしく、排気音がばらつく)を除けば以前に比べて心地よい。
ドゥカティVツイン特有かもしれないが、スポーツ走行用に回転部マス軽量化などで吹け上がり/回転落ちが俊敏になると、市街地走行などで一定速度を維持するのが難しくなり、遅いクルマに追従するのが大変な苦痛になるが(スロットルON⇔OFFを定期的に繰り返す走行パターンになりがち)、メーカー標準状態はその点も配慮されているのかもしれない。
現在の筆者の運転スキル・乗車環境には、現状のセットアップが心地よい。
さほど飛ばさなくても走らせること自体が楽しく感じられる。
運転者が齢をとったせいかもしれない(笑)