先日、親しい仲間と近場に走りに行ってきました。
日頃の試行錯誤の積み重ねで、キャブレターの設定は低速域からかなり良好で、
メインジェットやジェットニードルを変更して中速域以上の吹け上がりはかなり改善され、
スロットル開度に比しての速度の乗りというか、加速が向上していることもあり、
懸案事項の燃料消費もこのところは15~18Km/ℓと常識的なところに落ち着いてきています。
リヤタイヤ/ホイールをサイズダウンしたことで、浅いリーンアングルで用が足りてしまうようにはなったものの、
前輪の自然な舵角による初期旋回と共に、もう少し後輪側も小さく回り込むような操縦性を目指しているのですが、
今一つスロットルを早めに開けられないあたり、車両の特性なのか、運転者に起因するものなのかも確認したいので、途中で乗り比べをすることで改善のヒントが見つからないかとの思惑がありました。
内心、このところ調子を上げているキャブレター設定が、インジェクションよりも面白さを引き出しているのでは?などと自負(慢心?)するところがあり、
乗り比べることで「敵情を知る」というか、どの程度違いがあるものかを確認したい気持ちも大いにありました。
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共に出掛けた一台はSS800ie(写真は同型車でWebからの借り物、現車ではない)。
確か2003年モデルだったと思いますが、この年式(多分日本仕様のみ)に限り、
足回りが上級車種SS1000DSと同様の部品にグレードアップされている、いわば通好みのモデル。

一応大まかに説明しますと、筆者のSSからの最終進化型のひとつで、エンジンは旧パンタ系(スモールクランクケース)のSS750ieを拡大したモデル。
サフィックスの”ie”が示すように、電子制御フューエルインジェクション仕様です。
スタイリングには違いがあり、乗車姿勢はよりスポーティになっているものの、
車体はキャブレター時代のSSをリファインしたもので、走行特性に影響があるとすれば、
若干のディメンションの違い(キャスター角が-1度、ヘッドパイプ位置が10mm低下、リヤショックストローク+6mm)と、フロントフォークチューブ径がφ41→φ43に変更された程度。
構成部品に細かな違いはいろいろあれど、基本的に大きな変更はないはずです。
筆者からすると、乗車姿勢の違いは比較的大きけれど、
操縦性にそれほど大きく変化はあるまい、と高を括っておりました。
かなり以前ですが、乗り比べた際も「まだまだお互い要整備だな」と思ったくらいで(笑)
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ところが今回、SS800に乗り換えてみると、
なぜかギヤペダルがやけに上を向いていた(笑)ことと、
かなり下向きで無効ストロークの多いブレーキレバー以外に違和感がなく、
すぐにペースを上げられることにまず驚き。
基本的には同じ系統のエンジンとは思えないほど、排気音とメカノイズが少ないのにも驚き!
低回転域のトルクこそ100cc分のハンディを感じますが、スロットルを開けていくと意外とシャープな力感は、900と実質互角と思えるほど。
回転の滑らかさは言うに及ばず、スロットルのツキという点でも全く違和感なく、
SSシリーズとして2世代目のECUに進化していることもあるのか、むしろ負荷が高まるほど正確さを増しているように感じられます。
キャブレターのややラフな吹け上がりに比べて、いかにも燃料を無駄にせず、整然と熱エネルギーに換えているような感覚は、むしろデスモドロミックの合理性にマッチしているような印象を受ける。
◆ ◆ ◆
操縦性は、自車に比べればややゆっくり目に前輪舵角が入り、
前輪舵角を特に意識せずともシンクロして前後輪共に旋回していく実感があり安心感大。
欲しいだけスロットルを開けていける印象。
タイヤや車体アライメントの違いもあると思いますが、
やや遠目で垂れ角が大きなハンドル、実質幅が狭められたタンク後端~かなり後ろ気味で内幅の狭いフットペグの相乗効果のようで、
マシンの挙動に逆らわないように走れるというか、運転者が無意識にマシンの旋回を妨げることがない設定のように感じました。
内心、純正キャブレターを煮詰め、足回りもあれこれ試行錯誤中の当方車両に及ぶまい、と侮っていたのですが、
速さではほぼ互角、扱いやすさと操縦性は返り討ちにあったような気持ち(笑)
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問題はこの後。
馴染みのあるはずの自身の車両に戻ったところ、なぜか違和感大でペースを上げられない…
感覚的にはバイクが重く感じられ、とにかく曲がらない。
舵角は入っても後輪側が旋回しないような印象。
実はSS800の前に、前後足回りをグレードアップしたMVアグスタF3(675)を試させてもらっていて、
非常に軽い吹け上がりと自在な操縦性で、以前親しんだ750F1のようにほとんど250㏄感覚で走れていて、
そこから乗り換えたSS800でも、同じように軽快で”開けていける”操縦性を楽しめていたのでした。
そして自身の車両に乗り換えてからは全体に下り坂ということもあり、
何となく「重いは、曲がらないは、開けられないは」と三重苦。
こんなはずではなかった、と大いに戸惑うが、素直に現状を認めることこそ明日への第一歩(笑)
仲間との車両交換・比較試乗は、自車の相対的な”戦闘力”を測るには絶好の機会でもあります。
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一旦休憩をはさんだところで、出発前に対抗策として後輪側の車高を上げることにする。
(写真は使いまわし)
足回りは試行錯誤中なので、リヤショックのプリロードを調整できるよう(※)、金づちとアルミの棒をタンクバッグに入れて持ち歩いているのである。
テロ警戒中の検問などに遭うと、あれこれ詮索されそう(笑)
(※)リヤショックのプリロード調整リングナットはフックレンチでは回しにくく、スチール製ナットをいいことに(変形しないよう)アルミ棒で叩いて回している。
普段走っていない(路面の状況がわからない)遠征先ということもあり、
リングナットを半周程度締めこむに留めたが、その程度でも効果はあったのがせめてもの救い。
車体がリーンしてからの「二次旋回」能力向上は体感でき、前よりも曲がるし開けていける。
但しまだまだSS800には及ばないように感じられた。
あくまでも現状の個体間の話として、あえて言うなら、
余計なことを意識せずとも、自然にコーナリングに集中して楽しめるSS800
対して、
”乗れている”状態を目指し、早目にスロットルを開けられるような戦略的配慮が必要な900SS
といった印象。
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以前、SS900用リヤショックを組むつもりでひとまず見送ったことを記しましたが、
これはやはり試してみる価値は大きいと思える出来事でした。
ということで、次回の記事はリヤショック交換に関することになりそうです。
(上がSS900用、下が今まで使っていた900SS純正+ハイパープロ製スプリング)
似たような車体でも、筆者の車両とは10年近い年式の違いがあり、
車両オーナー自身による整備(たぶん)も加えて、
見えない部分にも、時間とともに技術の進歩を積み上げているようでした。
ということで、そのうちにまた雪辱戦だな(笑)