
甲州街道に面した八王子市横山町は、かつての宿場町で、20年位前までは小さな商店が沿道に立ち並ぶ、それなりに活気ある通りだったのですが、今ではシャッターを下ろした店が目立ち、一部は「八王子一高い」らしいマンションになっていたりして、ちょっと寂しさを感じさせる通りです。
そんな中に、来年創業100年を迎えるという老舗「荒井呉服店」があります。ここのご令嬢の名は荒井由美さん、そう、ここはユーミンこと松任谷由美さんのご実家なのです。
こういう建物の造りは宿場町独特のものなのでしょうか、間口はそれほど広くないのですが、店に入ると、とても奥行きがあることがわかります。商品が奥へ奥へと続いているのです。
地元の人はみなユーミンの実家だということは知っていると思いますが、店にはそれらしいことはいっさい書かれていません。ただ、着物姿のユーミンのポスターがさりげなく掲げられていたりするだけ。
なんて思っていたら、ホームページにはしっかり、
「荒井はユーミン(松任谷由美)の生家です」
と書かれてました。
我が家は、今までも何度かこの店を訪れたことがあり、ヨメさんが浴衣に似合う小物などを買ったりしていたのですが、今年は小学5年生の娘に浴衣を買ってあげることにして、数年ぶりに訪れたのが、確か2週間くらい前。
その時に「大商談会」のようなイベントに招待され、この日、また荒井呉服店を訪れたのでした。何しろ呉服屋ですから、安売りの商談会と言っても、我々一般庶民の感覚からすれば高価なものばかり。というか、和服を着る機会など、浴衣を除けば皆無。娘の成人式もとうぶん先のこと。
和服以外にも、毛皮のコートや宝飾品関係、バッグなどもあり、ヨメさんはお気に入りを見つけたようでしたが、何しろ安いものではないし、今回は断念した模様。
まあ、そんなことはわかっていたのです。ではなぜお誘いに乗って訪れたかというと、「藍染め体験」と「藍そば」に娘が魅かれてしまったから。無料ではありません、お一人様500円也。
藍染め体験といっても、真っ白なハンカチの所々を輪ゴムで縛り、藍染め職人さんに「よろしく」とお渡しするだけ。職人さんがこれを樽の中の藍で染め、乾かしてお返しいただくのです、
輪ゴムの縛り方によって模様は様々。縛った部分には藍がしみ込まず、白く残ります。
ボクは斜めに5箇所、真ん中を大きく、その他は小さく縛ってみました。でき上がった作品がこれ。どうでしょうか?
藍染めが乾くのを待っている間にいただいたのが「藍そば」。藍(愛?)を練りこんであるらしいのですが、見た目はそうと言われても気付きません。
味は、酸味がある、らしいです。店の人もヨメさんもそう言っていました。ボクは…、ごめんなさい、普通のそばとの違いがよくわかりませんでした。ボクにはグルメレポートは無理のようです。
でも、おいしくいただきました。
さて、冒頭の写真。もちろん、どなたかご存知ですよね。かのアインシュタイン氏。絵でも写真でもありません。藍染め絞りでの作品です。よく見ると、小さな点が無数に並んでいるのがわかります。新聞に載る写真と同じような感じです。
この小さな点が「絞り」によって生み出された模様なのです。さっき、藍染め絞り体験で、輪ゴムで縛る、と書きましたが、あれを極限まで小さく、数多くしたもの。もちろん、輪ゴムでやるわけではなく、専用の細い糸で、でき上がりをイメージし、強弱を付けつつ絞っていくわけで、想像するだけで気が遠くなります。
藍染め絞りは非常に高価なもの。その値段のほとんどは人件費だと、店員の説明。作業工程の説明を受け、現物をこの目で見た後では、そのことがよく理解できます。
いま、日本の多くの伝統工芸が後継者不足で悩んでいるとか。藍染めも例外ではないそうです。
店員さんがこんなことを言っていました。
「藍は薬としても重宝されてきました。薬を飲むことを『服用する』って言うでしょ? 呉服・衣服の『服』はそこから来ています。いま巷で売られている多くは、衣服ではなくて『衣料品』。その原料は服用できないから。日本古来の伝統品の良さを、ぜひわかって下さい。」
藍染めをはじめ、多くの呉服は高価なもの。でも、一生物と考え、また、それを自分の子供や孫に引き継いでいくことを考えれば、高い買い物ではない、のかもしれませんね。
もちろん、そうは言っても、おいそれと買えるものではありませんが。
Posted at 2009/08/01 09:58:19 | |
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