
初愛車R32スカイラインのタイプMに乗っていた頃、何かの媒体を見て目に突き刺さったスタイルと、ちょっと背伸びすれば6気筒モデルでも手が届く価格であることを知り、アルファロメオ156に強烈に興味が沸いた。
1998年、自分はまだ20代での出来事。
まだ「ガイシャに買い換える」なんて(当時の自分にとっては)大胆な行動を起こす気は無かったが、実車を見たいのと、現実的な購入金額(諸経費や値引き)に興味があり、さっそく取り扱いディーラーへ。
156の赤い試乗車があり、乗せてもらうことに。
エンジンはツインスパーク(4気筒)。
「イタ車」だから国産車とは全く違うだろうと想像したが、乗り味は意外と普通なクルマ、という第一印象だった。
おっかなびっくりで高回転まで回さずに試乗したこともあるだろうが、後述するように、系列化・グローバル化の進展でメーカー(≒国)による違いが少なくなってきていたからだろう。
室内の各種操作ボタン・スイッチの操作方法やタッチに違和感が無かった。
話を試乗に戻すと、V6は155ならあるとのことで試乗させてもらうことに。
156とは違って、こちらは乗り込んだ瞬間に異国の香りというか空気感に包まれた。操作系のレイアウトや操作感、内装のデザインや素材感、立て付け、匂いなどあらゆるものが国産車とは異なる。
未経験の左ハンドルのマニュアル車ということで更にたどたどしい試乗となり、やはり回転をあげることができなかったが、低中回転でもV6エンジンの音・フィーリングに心を撃ち抜かれた(本番の4000回転~を知らずして)。
乗り出して1~2分後には、これでいーじゃん、と。
当時のクルマ選びでは(今でも)、エンジンの音を重要視していた。
156と155を一度に試乗してみて、相当に世代が異なる印象を受けた(155がかなり旧世代に思える)。
当時の自動車業界では経済のグローバル化に合わせてメーカーの系列化・インターナショナリゼーションが進められていたせいなのか、1992年登場の155と1997年登場の156を比べると、156はかなり国際基準に基づいた製品、
言語に例える共通語としての「英語」という印象を持った。
対する155は、国産車しか乗ったことがなかった当時の自分には、「聞いたことがない言葉」という印象。文化の違い、もっと言うと知らない世界からやって来たクルマといった印象を持った。
156と155価格差を訪ねると、V6同士の比較で155在庫車(登録済み未使用車)のほうが6~70万円安価に購入できることがわかった。
156のデザインのインパクトで興味を持ったアルファロメオではあるが、その価格差なら(デザインには目を瞑って)155の新古車もアリだと考えた。
ここまで現実的になってくると、20代男子はもう抑えが効かない。
当時お付き合いしていた女性(今の嫁)にカッコつけたかった気持ちも押印を後押ししただろう。
そんな流れ、勢いでR32タイプMから155に乗り換えることに。
155購入の検討段階、あるいは購入直後、アルファロメオの情報を収集するために、当時は関心がある記事が載っている雑誌を買い漁っていた。
156のムック本や、CAR MAGAZINE誌、Tipo誌など。
記事のポイントは今でも覚えているが、20年ぶりぐらいにCAR MAGAZINEのページを開いてみることに。

155と156 V6同士の新旧比較記事は、自分にとって非常に興味深いテーマであった。

「DOCH化によりハイパワー化された156のV6よりも、2バルブSOHCの原形を留めている155のV6のほうがフィーリング的には勝ちだ」といった結論の記事は、155を購入した自分の選択を肯定してくれているように感じて、読んでいて嬉しかった。
155を自分で乗るようになり、ますます惚れ込んでいったV6エンジン。

そのエンジンの設計者、ジュゼッペブッソ氏のインタビュー記事が掲載された号もあった。
「フェラーリ要らず」などの表現で音・フィーリングが絶賛され、純血アルファロメオの設計で最後(2006年)まで生産されていたこと、生産終了からわずか3日後に開発者(ジュゼッペブッソ氏)が亡くなったという伝説もあって、今でこそ「ブッソV6」と呼ばれ名機とされるエンジンだが、これら記事が書かれた当時は、まだその開発者の名前は一般にはあまり知られていなかったように読み取れる。自分もこの記事を読むまでは知らなかったと思う。
今回、CAR MAGAZINEなどを読み直しながら初めて知ったこと~
そうした、156よりSOHCの155のほうが良いという記事とか、ジュゼッペブッソ氏のインタビューの記事を執筆しておられたのは、最近、時々カーグラフィックTVに出演されている齋藤浩之氏なのだと今回気が付いた。

つい
先週の放送でも、アルファロメオ トナーレ/ホンダ Z-RVの比較試乗でご出演。

当時のCAR MAGAZINEでは「職人 齋藤浩之」と紹介されている。
CGTVを視聴しながら、25年前にあの記事を書いていたのはこの人だったのか、或いは、この人が当時あの記事を書いていたのか、というちょっとした驚きを覚えた。
そんなAlfa Romeo、なんとEV専業ブランドになると宣言している。
しかも、内燃機関からの転身メーカーとしては最速ではないかと思える2027年、あと4年後には。
内燃機関だからこそAlfa Romeoの素晴らしさが表現されていたと感じる自分にとっては、ショックである。
果たして、EVでどのようにAlfaRomeoらしさ、個性を表現してくれるのだろう?
早々とエンジンを諦めてしまう、いや前向きに新しい時代にチャレンジしていくAlfa Romeoの歴史において、ブッソV6はますます語り継がれる存在になっていくのだろう。
自分がそれに触れる機会があったことは良かったと思う。