
日産自動車が開発した「
アラウンドビューモニター」は、2007年秋にE51系エルグランドに初めて採用され、以後C25系セレナ等に続々と採用されて好評を得ています。アラウンドビューモニターは、車両の前後左右に取り付けた4個の超広角(180度)高解像度カメラから得た映像を、車両上方から見下ろしたような映像としてディスプレイに表示する技術で、縦列駐車や車庫入れなどを行う際に、自車と路面の駐車枠との関係が一目で分かり、ドライバーのスムーズな駐車を可能にします。
さて、日産自動車は「
アラウンドビューモニター」に関してどのような特許を出願しているのでしょうか? 私は
独立行政法人工業所有権情報・研修館の
特許電子図書館で特許を検索してみました。
先ずは
公報テキスト検索のページを開いて、出願人と請求の範囲の欄に検索キーワードを入力。出願人のキーワードはもちろん「日産自動車」。請求の範囲には取りあえず「カメラ、車両、周囲、上方」といったキーワードを掛け合わせてみました。すると、7件の特許がヒットしました。(下記は検索結果)
ヒット件数 7 件
1. 特開2008-262333 路面判別装置および路面判別方法
2. 特開2008-158958 路面判別方法および路面判別装置。
3. 特開2008-017311 車両用映像表示装置及び車両周囲映像の表示方法
4. 特開2007-282060 車両周囲映像作成装置及び車両周囲映像作成方法
5. 特開2007-235529 車両周囲監視システム及び画像表示方法
6. 特開2007-230371 駐車支援装置及び駐車支援方法
7. 特開2007-183877 車両用運転支援装置及び俯瞰映像の表示方法
別のキーワードを入力すれば違った検索結果が出るんでしょうけど、先ずはこの7件に絞ります。その中で最も早く出願された「特開2007-183877号」のクレーム(請求項)を見てみましょう。
【請求項1】複数の車載カメラで撮影された映像をそれぞれ車両上方の仮想視点から見下ろした映像に視点変換して繋ぎ合わせた車両周囲映像に、前記車両を表す仮想自車画像を重畳して、前記車両周囲の様子を運転者に認識させるための1つの俯瞰映像として表示装置に表示する車両用運転支援装置において、
前記仮想自車画像が画面中央に固定され、前記車両周囲映像が前記車両の移動に伴い変化する表示形態の第1俯瞰映像を作成する第1俯瞰映像作成手段と、
前記車両周囲映像が画面上で固定され、前記仮想自車画像の位置が前記車両の移動に伴い変化する表示形態の第2俯瞰映像を作成する第2俯瞰映像作成手段と、
前記表示装置に表示する俯瞰映像を、前記第1俯瞰映像と前記第2俯瞰映像とで選択的に切り替える切替手段とを備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
難解な技術用語が羅列されており、一般ピープルの私には解読困難かも。でも、何となくイメージは分かりますよね?
これはアラウンドビューモニターの関連特許の1つであることは間違いなさそうですが、開発時期から判断するともっと早期に基本特許が出願されている可能性が高いと考えられます。
再び検索画面に戻り、キーワードを「車両、カメラ、駐車、支援」として検索。
ヒット件数 6 件
1. 特開2007-230371 駐車支援装置及び駐車支援方法
2. 特開2007-183877 車両用運転支援装置及び俯瞰映像の表示方法
3. 特開2006-306224 駐車支援装置及び駐車支援方法
4. 特開2006-117165 駐車支援装置
5. 特開2005-309660 車両用右左折支援装置
6. 特許4156181 駐車支援装置
1と2は先ほどヒットした特許ですが、3~6の特許は先ほどの検索ではヒットしませんでした。その中で、登録になった特許(=特許庁の審査により特許権として認められたもの)が1件(特許4156181号)あったので、そのクレームを見てみます。
【請求項1】車両に搭載されて駐車支援動作の開始時に目標駐車場を撮像する側方カメラと、車両に搭載されて車両後退中に車両進行方向の撮像を継続する後方カメラ と、前記側方カメラで予め撮像した前記駐車支援動作の開始時の目標駐車場の映像と、前記後方カメラで撮像した車両後退中の車両進行方向の映像とに基づいて、前記目標駐車場の映像上での車両後退中の自車の現在位置を検出する現在位置検出手段と、前記目標駐車場の映像上の前記自車の現在位置に自車の画像を重ねて合成する画像合成手段と、前記合成画像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする駐車支援装置。
この特許は2000年7月に出願されて2008年7月に登録されています。よく分かりませんが、これが日産自動車が保有するアラウンドビューモニターの基本特許っぽいかな?
アラウンドビューモニターの特許についてWEB検索していたところ、次のような記事を見つけました。
『日産自動車が自動車技術の特許のライセンスを異業種に売り込んでいる。建設機械メーカーなど複数の会社・団体と交渉中で、近く契約を結ぶ見通しだ。売り込み中の技術の一つは、自動車につけた四つのカメラの画像を合成して、自車を上から見下ろしたような映像を車内に表示できる「アラウンドビューモニター」。クレーンなどの大型の建機や潜水調査船、農業機械につければ、作業中の事故を防ぎやすくなるとみている。ゼネコンの鹿島や独立行政法人海洋研究開発機構などが採用を検討している。』
~2008/8/17付け
asahi.comより~
『日産の4つの広角カメラを用いて自動車を真上から撮影したような合成映像を作るアラウンドビューモニター技術は、潜水調査船「
しんかい6500」に搭載が検討されている。』
~2008/09/09付け
日経ITProより~
アラウンドビューモニターは深海調査船や建設機械にも搭載が検討されているのですね! 日産自動車は特許を異業種にライセンスして特許使用料を得て、次の技術の開発資金に充てるんでしょう。
・・・と言う訳で、以上がアラウンドビューモニターの特許に関する調査結果です。
今日は3連休の初日でたまたま時間があったんです。私は暇人ではありませんので、その点は誤解の無いようお願いします。(爆)
Posted at 2008/11/01 16:39:53 | |
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