私の記憶が確かならば、H82Wは三菱自動車史上一番まじめなクルマ作りがされたのではなかろうか。初代H81Wもまじめではあったが、目に触れる場所に従来車の部品が使われていることもあって、結果的には消化不良のままだった部分も残っていた。
1シャシーで2世代のクルマ作りを行う三菱車の中で、先代とよく似た外観のクルマといえば過去にはA160ギャランΣ・Λが思い浮かぶ。しかし5ナンバー枠までにはまだ余裕があったから、全体の雰囲気は先代のままでも全長240mm、全幅25mm、全高10mm、ホイールベースは15mmも大きかった(新旧ギャランΣ2000GSR比)。
それに対して2代目eKワゴンは、軽自動車枠いっぱいの大きさと全高1550mmというこだわりのために、外寸を変えることなく室内長65mm、室内幅55mm、室内高10mmも拡大させた。
メーターの視認性や各所の操作性をできる限り改善して、不足気味だった収納スペースの容量も増やした。後続車からの視認性・即応性・メンテナンス性に長けているLEDテールランプをいち早く採用したことも大きな特徴だし、雑誌やテレビではそればかり強調し過ぎた感もある後席左側のパワースライドドアもユーザーの利便性を追求したからこその装備であろう。
エンジンはキャリーオーバーであったが、それは3G83の更なる改良に踏み出せなかった当時の三菱の懐事情が大いに影響したためだろう。とはいえ、現状でもトルク特性がフラットで許容回転数の7000rpmまで一気に吹き上がり、とても扱いやすいエンジンである。
但し、素のeKワゴンのままでは高回転域がうるさいのかも知れない。が、錆対策として施工したアンダーコーティングがどうやら遮音性にも効果を発揮してくれているようだ。
『まじめ・まじめ・まじめ』と謳って1代限りで再び消えてしまった例もあるが、こちらは2代続いたことで『eKワゴンの理想』を一応完成させたと見ることができるだろう。
3代目は本格的に日産と協同したことでコンセプトもシャシーも一新し、従来の三菱車には無い魅力も持った。しかし失ったeKらしさも無視できない程に大きかったと思う。
愛車は2代目としては生産時期が一番長い5型の末期モデルである。
ファイナルモデルでは三菱特有の不可解な装備変更も見受けられるから、結果的に最良の時期に購入したと思っている。
だからこそ、なおさら大事に乗ろう。
初代・2代目eKワゴンは、ユーザー本位だった古き良き時代の三菱の香りが残る最後の三菱車なのだから。