
二千年前。
イスラエルはローマ帝国の支配下にあった。
イスラエルの民はローマ皇帝、そしてイスラエルのヘロデ王への二重納税に苦しめられた。
彼らは聖書に預言されていた救い主、新しい王を待ち望んでいた。
アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。 ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。 ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。
さてザカリヤは、その組が当番になり神のみまえに祭司の務をしていたとき、 祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。 香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。 すると主の御使が現れて、香壇の右に立った。 ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。 そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈が聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。 彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。 彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、 そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。 彼はエリヤの霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。 するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。 御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。 時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったから、あなたはおしになり、この事の起る日まで、ものが言えなくなる」。 民衆はザカリヤを待っていたので、彼が聖所内で暇どっているのを不思議に思っていた。 ついに彼は出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内でまぼろしを見たのだと悟った。彼は彼らに合図をするだけで、引きつづき、おしのままでいた。 それから務の期日が終ったので、家に帰った。
そののち、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、 「主は、今わたしを心にかけてくださって、人々の間からわたしの恥を取り除くために、こうしてくださいました」と言った。
ルカによる福音書より転載
ナザレにマリヤという女性がいた。彼女はヨセフと婚約することになった。
但し、一年間家族を増やす行為は禁じられていた。
御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。 この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。 御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。 この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろうかと、思いめぐらしていた。 すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。 見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。 彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、 彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。 そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。 御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生れ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。 あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、はや六か月になっています。 神には、なんでもできないことはありません」。 そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。
ルカによる福音書より転載
マリヤは複雑な心境であった。
家族や夫となるべくヨセフにこの事実をなんと説明すればよいのか、また人々になんと言えばよいのか・・・。
彼女は御使ガブリエルのお告げにあった親族エリサベツの妊娠を確かめる為、ユダの町へ向かう・・・
そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、 ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつした。 エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内でおどった。エリサベツは聖霊に満たされ、 声高く叫んで言った、「あなたは女の中で祝福されたかた、あなたの胎の実も祝福されています。 主の母上がわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄でしょう。 ごらんなさい。あなたのあいさつの声がわたしの耳にはいったとき、子供が胎内で喜びおどりました。 主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。 するとマリヤは言った、「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救主なる神をたたえます。この卑しい女をさえ、心にかけてくださいました。
ルカによる福音書より転載
遠く離れた東方の国(トルコという説もある)の占星学博士達は三ツ星の異常な接近に興味を抱いた。
それは新しい王の出現を示す印であった。
さてエリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。 近所の人々や親族は、主が大きなあわれみを彼女におかけになったことを聞いて、共どもに喜んだ。 八日目になったので、幼な子に割礼をするために人々がきて、父の名にちなんでザカリヤという名にしようとした。 ところが、母親は、「いいえ、ヨハネという名にしなくてはいけません」と言った。 人々は、「あなたの親族の中には、そういう名のついた者は、ひとりもいません」と彼女に言った。 そして父親に、どんな名にしたいのですかと、合図で尋ねた。 ザカリヤは書板を持ってこさせて、それに「その名はヨハネ」と書いたので、みんなの者は不思議に思った。 すると、立ちどころにザカリヤの口が開けて舌がゆるみ、語り出して神をほめたたえた。
ルカによる福音書より転載
エリサベツの出産後マリヤはナザレに戻る。
身重になっていたマリヤに家族、ヨセフは戸惑う。
マリヤは御使ガブリエルのお告げを説明するが信じてもらえず、ヨセフは内心離縁しようと考えていた。
ある夜、ヨセフは夢を見た。
不貞をしたと、村人達はマリヤを石打ちの刑にしようとした。
村人達はヨセフに「お前が先に投げろ」と命じる。
ヨセフは石を手に取りマリヤへ向かい投げようとする・・・その時、御使が現れて言う。
主の使が夢に現れて言った、「ダビデの子ヨセフよ、心配しないでマリヤを妻として迎えるがよい。その胎内に宿っているものは聖霊によるのである。 彼女は男の子を産むであろう。その名をイエスと名づけなさい。彼は、おのれの民をそのもろもろの罪から救う者となるからである」。 すべてこれらのことが起ったのは、主が預言者によって言われたことの成就するためである。すなわち、 「見よ、おとめがみごもって男の子を産むであろう。
その名はインマヌエルと呼ばれるであろう」。
これは、「神われらと共にいます」という意味である。 ヨセフは眠りからさめた後に、主の使が命じたとおりに、マリヤを妻に迎えた。
マタイによる福音書より転載
ヨセフはマリヤを妻と認める決断をする。
彼女が身ごもった子を自分の子供と認めることにした。
マリヤはヨセフの深い愛に感謝した。
ヨセフとマリヤは村人達から掟破りと村八分にされ、つらい日々を送る。
そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。 これは、クレニオがシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。 人々はみな登録をするために、それぞれ自分の町へ帰って行った。
ヨセフもダビデの家系であり、またその血統であったので、ガリラヤの町ナザレを出て、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。
ルカによる福音書より転載
ヨセフとマリヤはナザレを離れ、ベツレヘムへ向かう事となる。
ヨセフはマリヤに言った。
「これで噂も消えるね。」
東方の博士達も三ツ星を追い、イスラエルへと向かう。
ヨセフとマリヤは様々な試練に耐え、ベツレヘムを目指す。
東方の博士達はエルサレムに到着した。
救い主の預言を恐れるヘロデ王は彼らを食事に招いた。
博士達より救い主の居場所を確認するためであった。
彼らから得た事実、ヘロデ王は成人男性と思い込んでいた救い主が幼子と初めて知る。
彼らが去り際にヘロデ王は言った。
「救い主がお生まれになった場所を知らせてほしい、私も拝みに行くから。」
ヨセフとマリヤはベツレヘムへ着く・・・が、マリヤは急に産気づく。
ヨセフは宿を探す。
どこの宿屋もいっぱいで彼らが泊まれる余地等なかった。
ヨセフは「どなたか、休むところはありませんか!」と、助けを求める。
その時ある村人が言う。
馬小屋なら空いていると・・・
ヨセフはマリヤを抱き馬小屋に入る。
彼らがベツレヘムに滞在している間に、マリヤは月が満ちて、 初子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。客間には彼らのいる余地がなかったからである。
ルカによる福音書より転載
さて、この地方で羊飼たちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。 すると主の御使が現れ、主の栄光が彼らをめぐり照したので、彼らは非常に恐れた。 御使は言った、「恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。 きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。 あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである」。 するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使と一緒になって神をさんびして言った、 「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように」。
ルカによる福音書より転載
羊飼いたちは導きの星が照らす先へ向かう。
貧しい馬小屋で預言通りの救い主に出会う。
やがて東方の博士達も訪れ、感謝の捧げものをする。
ほんとうのクリスマスは誰にも知れず、ヨセフとマリヤ、東方の博士達、貧しい羊飼い、家畜が祝った。
東方の博士達はヘロデ王に事実を伝えるのをやめた。
ヘロデ王は博士達の裏切りに気づき、兵隊達にベツレヘムに住む二歳以下の幼子男子を殺すよう命じた。
兵隊達は二歳以下の男子を殺す為、ベツレヘムへ向かう。
御使がヨセフの夢に現れ、幼子を連れエジプトへ逃げるよう告げた。
ヨセフはマリヤと幼子を連れエジプトへ向かう。
マリヤは言った、「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救主なる神をたたえます。この卑しい女をさえ、心にかけてくださいました。今からのち代々の人々は、わたしをさいわいな女と言うでしょう、力あるかたが、わたしに大きな事をしてくださったからです。そのみ名はきよく、そのあわれみは代々限りなく主をかしこみ恐れる者に及びます。主はみ腕をもって力をふるい、心の思いのおごり高ぶる者を追い散らし、権力ある者を王座から引きおろし、卑しい者を引き上げ、飢えている者を良いもので飽かせ、富んでいる者を空腹のまま帰らせなさいます。主は、あわれみをお忘れにならず、その僕イスラエルを助けてくださいました、わたしたちの父祖アブラハムとその子孫とをとこしえにあわれむと約束なさったとおりに」。
『誕生物語』日本語タイトルは『マリヤ』として上映された。
イエスの受難を描いた『パッション』程話題にならなかったが個人的にはこちらの作品が好きである。