アイドリングが不調だったスプラウトが
2泊3日の入院から戻ってきた晩
いつもの道を走っていたら
鼻の奥がツンとした。
年をとると涙腺がゆるくなっていけない。
そんなこんなで、翌日、仕事終わりに
写真を撮りがてら少し遠出をすることに。
最近、都会の写真が多いから田舎に行こうか。
海ばかりだから内陸はどうかな。
いくつかの選択肢をあげる。
選んだのは、ここ。ひなびた無人駅。
千葉にはローカル線がいくつかあって
その一つに小湊鉄道というのがあります。
味わいのある駅舎と列車が人気で
でも観光客が大挙して訪れる訳でもないのが良いところ。
以前、なんどか会社をさぼって
ビールと文庫本を手に乗ったことがある(ナイショ)。
あと、カメラも持ってたな。
そのうちのひとつに来てみたのでした。
上総久保ってところ。
民家と田んぼの中にある駅で
駅舎の脇にある大銀杏が素敵。
人気もなくて、とても静か。
あわよくば列車も撮りたいなと思って
時刻表を見たら、1時間ほど来ない。
うーん、どうするかな。
さすがに1時間はきついな。
なんて思いながら写真を撮る。
ふと気づくと、あっという間に
30分が過ぎてた。
なんだか時間の流れがおかしくて
ゆったりなのにすぐに過ぎる。
民家の脇にスプラウトを停めたので
ちょっと気になってたんだけど
よく見ると、その民家もその隣も空き家だった。
駅隣りの一等地なのにね。
一時間待った列車がホームに入る。
誰も乗らず、誰も降りない。
列車はディーゼルの音を響かせて
がたんと動く。
むかし「秘境駅に行こう」って番組がスキで
よく見てたな。
秘境駅探訪家の牛山さんのレビューが素敵で
だいすきな番組だった。
さてと、もう少し足を延ばしてみますかね。
少し行くと、湖があって、その脇に美術館を発見。
寄るべきか寄らざるべきか。ちょっとだけ迷った。
園内にはゲージツがあります。
ゲージツとは、無用のもののことで
実用性のない物体のことです。
ここに展示されてるからサマになってるけど
他所にあったらジャマだろうなあ。
売店でオレンジジュースを買う。
いくつかあるメニューから選んだけど
正解だったかも。
写真に撮ったらキレイだった。
ギアが付いてる、巨きい装置がある。
ううむ。
無用のものなのか、実用のものなのか。
とりあえず登れるみたいだけど、どうするかな。
ーって思ってたら、そんな装置どころじゃない
不思議な物体が湖にあった。
うわ。なんだ。
桟橋みたいなところがあって
近づくことができた。
なるほど、巨大な虫のオブジェですよ。
作った人や観光客はいいかもだけど
日ごろからこれを目にする土地の人にとっちゃ
どうなのか、これは。
湖内に虫を建てた工事のおっちゃんの気持ちはどうなのか。
ゲージツに難癖つけるのはナンセンスかもだけど
流石に、これはどうもなあ。
ほかに選択肢はなかったのか。
さっきの建造物に上ってみた。
どうやら、オブジェではなくて、昔使ってた
水をどうこうする装置らしい。
壊れて動かないので、オブジェちゃあ、オブジェだ。
ゲージツちゃあ、ゲージツだ。
高みから湖を見渡す。
良い景色。
でも、あの虫がどうしてもきになるなあ。
写真に撮ると、まあ、被写体としては
おもしろいのかもしれんけども。
帰りしな、館内に入るかどうかちょっと迷った。
どうしようかな。
虫とか作っちゃう美術館だからな。
まあ、いいや。
帰り道、沈む夕日に向かって走る。
いい按配に日暮れてきたな。
夕暮れの駅もいいな。
もう一駅、寄ってみようかな。
またもや選択肢がちらり。
道を外れて、少し走って、駅に着いた。
ここも無人駅ですよ。
お、電車を待ってるコがいる。
立膝にくわえタバコでスマホを見てる。
ひなびた駅舎に不似合なとこが面白いね。
ホームに出る。ここもしみじみした駅だ。
喫煙女子のジャマにならないように
パチリとシャッターを切る。
間もなく列車がやってきた。
本数の少ないこの路線で、このタイミングは
実にありがたい。
この選択は正解だった。
今日一日、いろんな選択をした。
選択の積み重ねで、人生ができてるんだけど
振返ってみると、ほんとうにその選択肢があったのかな、と思うことがある。
今日だって、海に行こうか山にしようか迷ったけれど
山を選んだ時点で、海に行く選択は霧消してしまう。
今日この時に、海に行った自分はどこにもない。
そう思うと、選択肢があるなんて、まぼろしなのかなあって。
複数から選べるような気がしてるだけで
自分で選んだような気がしてるだけで
その実、一本道だったりして。
人生の選択肢がもうあんまりなさそうだなって
最近よく思ってたけど、
そもそも選択肢なんてないって思えば気も楽だ。
ただ、ひとには妄想しちゃう癖があるので困る。
この街で暮らしながら、遠くの汽笛に思いをはせる
そういう癖。
別の人生があったのかもよ、って。
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♪ 遠くで汽笛を聞きながら アリス
Posted at 2014/06/16 23:54:39 | |
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