2019年04月29日
近年報道される意図せぬ悲惨な自動車暴走事故。
高齢者の運転が問題視され、その権利を剥奪するかの免許返上や神頼みかの自動運転技術への期待が言われていますが、そもそも『基本的な発生の根本原因を置き去りにしていないか?』と思われて仕方がありません。
また、それに関連して事故一歩手前の予備軍的状況へ目を向けようという取り組みの乏しさもある様に思います。
クルマにおけるゴーアンドストップと言うかストップアンドゴーの機構の変遷に目を向けるなら、特にそのゴー機構があまりにも安易に容易化、ある意味自動化されてしまったことが挙げられ、昨今至極当たり前のこととしてほぼ全面的なAT化が進む中、それを構成する機構があまりにも意図に対して容易に高速走行を可能にする状況に変遷していることが、どの報道を聞いてもほぼ問題とされていない様に思います。
漠然と言うなら、ゲームのジョイスティック感覚で車両の発進と高速走行が可能になっているという事実。一方、それを構成する一つ一つの具体的な機構へはほとんど目が向けられず、ほぼ闇雲に「一刻も早く自動運転技術を!」と締めくくるかの一辺倒な状況?
その前に考えるべき基本がある様に思います。
そして、安易に『自動運転技術への期待』を言うには、ある意味矛盾ないしは時期尚早と思える具体例としては、いわゆる操作アシストの関連があると思います。
1. パワーステアリング
その昔なら『重ステ』と揶揄されるのが当たり前だったものが、今では軽自動車でもパワーステアリングがほぼ標準で非力な方でも操舵できてしまいます。
走行のライン取りの精度を改善するというメリットはあるものの、ひとたびライン取りを誤った場合の修正ならぬ誤りの増幅に寄与してしまう場合もあるという事実。
道路脇に激突しながら、重ステならそのまま停止するものが、あろうことか走行を続行して事故を最悪化してしまっているケースがある様に思います。
そういう意味において自動運転に絡めて言えば、その様な衝突・衝撃の状況を検出した場合は、エアバッグと言うよりエマージェンシーストップする仕様とするのも一案と思います。
2. 電子スロットル(アクセルペダル)
今、大多数の方が全く意識すること無く踏んでいるアクセルペダル。
その昔なら機械的なケーブルがエンジンルームの燃料気化器のところまで引かれていて、開閉していて微妙に重かったものが、かなり軽く家電機器のボリューム感覚で電子的に開閉できるようになってしまっています。
そして、ファミリーカーにおいてはそのレスポンスが概してダルです。
タイヤで例えると、ガチガチのスポーツタイヤですと大多数の方は乗り疲れすることでマイルドな設定とする様な味付けがアクセルレスポンスにも取り入れられている感じ。
ゆえに、微妙なテーストなのですが、意図せぬ異常な高速域へ入っていても、マイルドで緊張感を伴わない傾向になりがちと思います。
実際に加速したい状況もあることから、アクセルの味付けとして『キックダウン』する際の踏力、特にベタ踏みの状況では定速走行踏み込み比でそれ相当に重くする仕様が望ましい様に思います。
3. AT
CVT含め、これまたかなり当たり前となってしまったトランスミッション機構。
前記、軽妙なアクセルペダルに合わさり危ないと思えるのがこの圧倒的採用のAT系。
MTなら不用意に誤ってアクセルを踏み込んだところで、おおよそハイギアード過ぎてノッキング気味になるか、そもそも基本操作を誤るとエンストしてしまうことで、重大事故に繋がる高速走行に意図せず陥ってしまうことは皆無ではないかと思います。
先日も近所のマンションの駐車場から出ようとしたMT車が目の前でエンスト。
ミスれば瞬時止まってしまう訳です。
片や、AT、CVTでは、走行時のアクセルオンによりいわゆる『キックダウン』がいとも容易に発生して、暴走に対する歯止めが効かない状況に陥る。
それがほぼ全ての暴走事故の根本原因ではないかと思います。
そういう意味において、『運転に自信が無い方ほどMT車』という論理は正しく、むしろ免許返上の勧めより有効ではないかと思います。
厳しい様ですが、人命が失われてしまってからでは手遅れで、昨今の悲惨な事故を顧みて敢えて言うなら、『半クラッチがまともにできないなら免許返上した方が無難』と言え、家族の方からの提案もありかと思います。
昨今、バスやタクシーのプロドライバー車両においても、AT車による重大事故が後を絶たないことを考えると、全てが一足飛びに行けるはずも無い自動運転の推進以前に、この野放しのAT一辺倒の方向性を営業運用含めて見直す必要がある様に思います。
4. サイドブレーキ車の減少
昨今、補助ブレーキがペダル等の非サイドブレーキの傾向が高くなっています。
走行中にサイドブレーキを引っ張って減速したり曲がったりするテクを全面的に非道と言ってしまえばそれまでですが、ブレーキとアクセルを踏み間違える事故に関連して、間違ってアクセルを踏んでしまって暴走するケースを想定するならば、『何だか知らないが暴走傾向にある』時こそ、足を全開放してサイドブレーキを引くという停止法は実用上かなり有効と思います。
実際、私自身、踏み間違いかけて微妙に加速状態になり、ペダルを全開放してサイドブレーキで事無きを得たことが1回だけあります。
ちなみに、どうして踏み間違ったのかは確たることは言えませんが、その時のシートポジションが微妙に踏み間違い易い腰掛け方をしていた様に思います。
報道では、レアで大事故になった事例のみしか考察しませんが、個人的にはこういった大多数の潜在的予備軍の経験こそ『どうして踏み間違うのか』の根本原因がわかり、対策を容易にし、安易に『自動運転の推進』以前に為すべきことがあると思って止みません。
なお、出荷時期や台数の関係もあり、絶対的なことは言えませんが、暴走事故は補助ブレーキがペダル式である3代目までのプリウスでよく見かけ、サイドブレーキのアクアではあまり見かけない様な気がします。
少なくとも私が踏み間違いに遭遇した際には確実にサイドブレーキを引いて回避するであろうことから、何らかの相関があるのかは興味深いところです。
さすがにペダルパーキングブレーキをサイドブレーキと同様にエマージェンシーブレーキとして利用することは困難ですが、昨今増えて来た電動パーキングブレーキ(EPB)車については、イザという時のエマージェンシーブレーキとしても定義し、教習内においてエマージェンシー動作の実習を義務化することが有効ではないかと思います。
5. アクセルペダルの形状(仕様)
それから考えると、指摘する報道を聞いたことがありませんが、概してアクセルペダルの下端(手前)が左のブレーキ側に出っ張っていることが圧倒的で、そもそもその出っ張りを無くすか減少させるだけで、大幅な機構変更を行うこと無く踏み間違い対策できると思います。
マツダ等で右前のタイヤハウスに追われていることに対して位置関係をオフセットするかの取り組みがある様ですが、それ以前にアクセルペダルの下端の左出っ張りをある程度カットしないと意味が無いと思います。
なお、一部に『オルガン式ペダルは踏み間違いが無い』といった見解もありますが、これは動作上の支点がブレーキペダルと大きく異なることにより、結果として踏み込んだ際の微妙な力点移動や踏面の摩擦が異なることで、無意識の中でブレーキとの誤認を確実に防止できているのではないかと思います。
6. ブレーキ踏力の軽さ
制動への補助・介入の関係で、かつての車両に比べると、ブレーキが利き始めるところまでの踏力が異様に軽い車両が当たり前になり、アクセルの電子スロットル化とあいまって、アクセルを踏んでいるのかブレーキを踏んでいるのかの官能的な差が感じ取り難くなっている様に思います。
操作系を軽くすれば、運転時の負荷を減らし、特に渋滞時の疲れの軽減にはなるものの、それが一因となり重大事故を招く可能性があるのであれば、横断歩道手前で不快感を感じる凹凸同様、節度のある重さにすべきと思います。
その他
7. プッシュスタート車のリスク?
キースタートの車両ですと車両から離れる際に、キーを抜いて持って出る限りは確実にシフトをPに入れることになる機構と習慣がありますが、スマートキーのプッシュスタート車ではうっかりしているとPに入れないままクルマを離れてしまうリスクがありますので、特に高齢とか慣れない方は注意が必要の様に思います。
youtubeには、レバーの仕様の関係でエンジンのかかったままのRやDのまま降車する例を警告する動画が挙がっていますが、そのケースでは恐らく降車時に即車両が動いてしまうことで気付きますので、そのまま降車してしまうケースはかなり稀でしょう。
ところが、本ケースにおいては降車時にはある程度の傾斜が無いと動き出すことがありませんので、緩やかな傾斜の場合は気付かずに降車してしまう可能性が高くなります。
最悪のケースは、非ロック時に最初ほぼ停止する傾斜であって、その後ジワジワと動き出し、その延長上で傾斜がきつくなる場合で、マニュアル車でローギアに入れずにサイドブレーキの引きが甘く傾斜地に停止した場合と同様なことが起り得ます。
それゆえ、デザインを壊してさえ認めなかったドアミラーのことから考えると、どうしてこの様なことが想定されるゲーム感覚のプッシュスタートを認めてしまったのかが不思議でならないところです。
当たり前と言えば当たり前なのですが、キースタートの車両ですとエンジンオフはキーをオフへ回さねばならないところが、プッシュスタート車ではシフト位置がどこにあろうとプッシュボタンで停止してPになっていないことへの警告的な物が出ないことが多い?ことで、アクセルとブレーキを踏み間違える様な方では要注意と思います。
関連で、前出EPB車ではエンジンストップで原則ブレーキオンを必須とすることも一案と思います。
8. ABSが必ずしも止める訳では無いという事実?
ABS万能で『何が何でも止まる』と思っているとそうではありません。
昨今は横滑り防止機能等が絡んだりしていることも手伝い、車両によって動作は千差万別でしょう。
端的に言うと、車両の右半分と左半分の路面の摩擦状況が異なり(スプリット路面と言う)、特にブレーキを踏んで片側のみが滑り出した場合、グリップしている側の制動も緩めてしまう車両が圧倒的に多いと思います。
これは、横滑りに繋がるスピン状態を回避するための挙動で、滑り出した側のグリップが回復するまでグリップしている側の制動を緩めてしまうためスコーンと抜けてしまいます。
滑っている側が長々凍結している様な場合では、あれよあれよと言う間に動いてしまうこともある訳です。
あと、基準となる車速を見失う四輪の瞬時ロックの場合は全く無力で、ロックして滑って行き、いずれかの車輪がグリップするまで制御が有効になりません。
雪上や氷上で車輪がロックしてABSが動作しなかったとかはまさにこのケースで、挙がっている動画でも見られたりします。
当然ながら、装着しているタイヤのグリップ状況にも影響されますので、これらの挙動は日ごろから周囲に影響の無い環境で極限的なものを把握しておくことが賢明と思います。
9. 『1t以上の物体を動かしている』という意識の啓蒙?
かねてより、個人的には自動車教習において、エンジンを切った車両を人力で押すといった実習が必要と思っています。
神戸・三ノ宮のバス暴走事故を見ても、『事故はスピードの出し過ぎ』とばかりは言えないという現実があります。
たとえ、10~20km/h程度であっても、トンクラスである車両が人に当たれば只では済まない。
『いかに動かないか、いかに重い物体を動力の力を借りて自身の小手先で動かしているか』の意識改革です。
明確にそういった意識を持っていらっしゃらない方が人力のみで車両を動かそううとした場合、恐らく目からウロコでその後の運転に変化があるのではないかと思います。
令和に向け、他人事とは思えない痛ましい暴走事故の根絶を願って。。。
Posted at 2019/04/29 07:00:02 | |
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