先般、右折車と直進車が絡む痛ましい交通事故が発生しました。
暴走事故と同様に全く意図せぬ事故です。
その報道で疑問に思えるのは、全く本質に迫っていない現場や警察庁の対応です。
応急のクッションドラムやガードレールとかいった安全施設の整備を全面否定する訳ではありませんが、それは対歩行者への申し訳程度の対策であり、根本的な車両事故のリスクを下げることにはなり得ません。
そう、「車は急に止まれない」という車両往来の根本的な対策に全くなっておらず、車両が横断のための切れ目の間隙を潜り抜けて来るケースにはほぼ無力です。
一部の報道動画を見る限り、このT字交差点(大津・大萱六丁目)の事故に関連する進行方向の右折可能な側の信号パターンを見ると、→青(→黄?)→赤(直進・右折矢印)→黄→赤→となっている様で、かねてより私が問題視している信号管制パターンの一つです。
()内は不祥な点ですが、一般的な交差点では赤が出る前にほぼ必ず黄が出ることでの推測です。
「減速レーンを設置するなどの対策以降死傷事故は発生していなかった」かの『減速レーン』とは、ETCレーンでもあるまいし微妙に意味不明ですが、要は『右折レーンを延伸した』ということではないかと思います。
そういった中、「右折可能な時間を長くした」という対策を言うでも無く、報道の現状であれば、尚更中途半端だったと思えるのです。
ちなみに、参考とした一部報道で示されるイラストでは、同時に流される現場動画と異なり、車線が間違っていたり、信号が指定方向無しだったりで、本質的な信号管制の問題には思考がほぼ及ばないいい加減なもので、報道としていかがなものかと思いました。
(示さない方がマシ)
順を追って実際に即して説明すると、
<右折方向>
→青=(交差店内の安全を確認して)進め
(→黄)=(交差点の手前の停止線で停止可能であれば)止まれ
→赤(直進・右折矢印)=(交差店内の安全を確認して)指定方向へ進め
→黄=(交差点の手前の停止線で停止可能であれば)止まれ
→赤=止まれ(やむを得ず停止線を越えていた場合は他の交通の妨げとならぬ様に進まねばならない場合がある=停止線が無いか極めて不明確で交差する交通(青進行)の妨げとなる場合)
になるのではないかと思います。
赤に関しては、交差点内停止が直行・歩行者等交通の妨げとなる違反である点を考慮しているもので、よくアルアルな小さい川の両岸に一方通行とかの道路があってその川を横断する橋が架かっていて交差点信号になっている少々複雑になっている交差点とかで、橋の出口上に信号があって赤となると停止線が存在しないにもかかわらず、交差点内となる橋の上で停止して通過交通を妨げている様なレアケースを含む解釈です。
ここで大きな矛盾を感じないでしょうか?
端的に抜き出すと、
→青=進め
(→黄)=止まれ
→赤(直進・右折矢印)=進め(※1)
→黄=止まれ(※1)
→赤=止まれ
(念のため、今回の様なT字路の場合(※1)時の対向は赤が通例)
当該の交差点を実際には確認できていませんが、(→黄)が設定されているのが一般的として考えると、対ドライバーで『シームレス』では無いギクシャクした矛盾した管制となっていると言えます。
要は、この交差点に初めて訪れた方からするとどのタイミングの黄なのかがわからないことで『進め→止まれ(無駄?)→進め』の解釈となるのに対し、何度も訪れている方からすると、直前の青を見た後に指定方向になるとわかっていることで青の後の黄は実質青の認識となり、実際上原則の止まれにはなり得ず、これら2パターンが交通の円滑性を欠く混乱をもたらすことになり、走行時にそのことにも神経を使う必要があります。
------2019/06/13追記(ここから)------
実際の交差点の信号管制の報道が存在しました
<右折方向>
→青=(交差店内の安全を確認して)進め
→
黄(直進)=
(交差店内の安全を確認して直進せよ、右折は交差点の手前の停止線で停止可能であれば)止まれ
→赤(直進・右折矢印)=(交差店内の安全を確認して)指定方向へ進め
→黄=(交差点の手前の停止線で停止可能であれば)止まれ
→赤=止まれ(やむを得ず停止線を越えていた場合は他の交通の妨げとならぬ様に進まねばならない場合がある=停止線が無いか極めて不明確で交差する交通(青進行)の妨げとなる場合)
の様で、番組内の交通鑑定人も「極めてレアで見たことが無い」と言及していました。
(通常ですと既出のパターンになるために)「このレアな交通管制が影響したかもしれない」様にも言及してもいました。
あと、現場インタビューによれば。矢印信号が付いたのはここ1年以内とのこと。
ただし、本投稿で問題視した、右折に関する、(進め→止まれ→進め→止まれ)となるシームレスで無い件に関しては影響無しと思います。
(むしろ、直進に関してはシームレスな信号管制と言えます)
------2019/06/13追記(ここまで)------
『事故はスピードの出し過ぎ』のコンセプトから、『何でも止めてしまえば問題無い』という解釈でこの様になっていると推測されますが、実際上はかなり迷惑な信号で、この様な状況では黄の信号無視の判断も極めて不明確になります。
いくら後者のタイミングの黄で違反としても、曖昧な前者の黄が存在する限り、先行車が遮っているとかで後続の運転者が見るタイミングによって明確な信号無視を認識し辛いことになり、後者の黄信号の意味合いさえ希薄化してしまうからです。
右折待ちの先頭へ割り込んで右折する様なことが常態化している様なエリアでは、中間の黄を狙って割り込もうとするトラブルになりがちなケースを助長することにもなります。
このパターンで利用しているのがこの事故のあった地域の方々ということが根本的にあろうと思われる訳で、この日常の信号管制が影響した面もあると思います。
こういった矛盾した管制を無くすとか右折信号の時間を長くするとかいったことも、一つの対策ではあるものの、根本解決に向けてはこれを超越した対策が急務です。
この手の危険性は運転経験の中で何十年も気にしていたところ、20年近く前の2000年にオーストラリアへ旅行した際に、この常識を覆す現実を目の当たりにしたのです。
それは、
『右折車両を青の最初に流す』という信号管制です。
最初見た時は、日本での経験の先入観から「何と非常識な!」という感じがしましたが、何箇所も見るにつけ、
「なるほど!これは理に適っていて安全!」という確信へと変わりました。
交差点で右折車の関連する事故が多くなってしまうのは、その右折の交差点内の開始から終了までの時間が直進に要する時間に比して長く、かつその開始の見切りが困難なことに尽きます。
『止めることが交通安全』とされる日本の交通行政では立て続けの赤停止を余儀なくされることが常態化しているために、優先意識もあり直進車が足を止めて右折車に譲ろうという発想が出辛く、あわよくば信号ギリギリに直進してしまおうとい意識の方が高まります。
ゆえに、直進が赤への変わり目ギリギリまで高速に進入して来ることで、たとえ右折信号が出たところで迂闊には出られない場合が多く、右折待ちが多く並んで右折信号の時間が短いと、ほとんどその右折待ちの列は消化しません。
そして、その惨状を近隣の警察署に訴えかけたところで、ほぼ変わることがありません。
その様な経験はありませんでしょうか?
そこで、オーストラリア式の
『右折車両を青の最初に流す』という発想です。
そもそも青が始まる前は全車両が赤で停止状態にある訳で、当然ながら直進車も無い前提ですから、歩車分離で無く歩行者がある場合でも神経が歩行者のみに集中でき、ノロノロとスタートする右折を開始するタイミングを見切るには、明らかにより好適です。
かつ、その信号管制で右折信号終了後に直進左折がスタートするのを見切るのも、現行信号管制の高速がちな直進の終了を見切る右折より遥かに容易であり、注意すべきはその直進左折信号が黄、赤に変わるタイミングがメインとなります。
こういう習慣が身に付くと、実際上信号無視気味に来る直進左折車による右折の効率ダウンを気にしなくなるであろうことから、無理に右折しようという意識も低下することが期待できます。
すなわち、恐らくこういった信号管制となっていれば、他の右折関連事故含め総じて今回の類の事故はかなり起り得なかったのではないかと思うところがあります。
当然ながら、今回の様な正面衝突によって車両が歩道へ進入するケースは激減するであろうことより、クッションドラムやガードレールは全く必須では無くなるでしょう。
そもそも、安易なポールやガードレールの設置自体が自転車や歩行者への危害となる場合もあります。
優先的に必要なのは『円滑安全な車両運行』であって、その運行上にある問題は歩行者への対策以前の課題であると考えなければ、後手後手となって打つ手打つ手が有効にならないということです。
「今回の場合、両方が青だったことから関係無いのでは?」という見方もありますが、そもそもこういった信号管制となっていれば、日常一連の交通の中で、今回事故直前に先行した車両の直前の右折も、よりゆとりのある状況となっていた可能性が高く、もしかすると事故車両事態がゆとりのある右折が実現できていたのではないかと思います。
ただし、今回先行した車両の大きさがバスほどに大きく視界を遮っていたとか、加えてかなり際どいタイミングで右折したとかいう可能性は残るとは思います。
さらに、
→赤(直進・左折矢印)
→黄
→赤(右折矢印)
の順番で直進・左折→右折を完全に分離している交差点において右折→直進・左折へ逆転させれば、右折の速度自体が直進に比べて高くないことから、中間に設定している黄のタイミングはそれほど長くする必要性も無くなり、格段に切り替えを効率化することができるのではないかと思います。(安全方向)
ただし、充分な右折専用レーンが無いと実施し辛いという面はありますが、既に減速レーンを延伸したとされる当現場の様な、それが許される道路事情であれば、必ずやその方が円滑性も改善し、右折車に絡んだ事故は格段に減少させられるでしょう。
このことは、ことあるごとに地元の警察署等で訴えかけて来ましたが、多勢に無勢と言うか、個人の意見など全く取り入れられることはありませんでした。
オーストラリアでの運用が理に適っていると思う日本人が皆無なのか?
よく、青信号の最初に右折車が先行して曲がっているケースもあり、交差点の停止位置等の状況で直進・左折車がかなり手前の場合は、先頭くらいの右折車が先行して走行する方がタイミング的にリーズナブルな場合もありますが、そういったことは安全の参考とならないのか?
これを以ってして『茨城ダッシュ』と断ずる節がありますが、そもそも茨城では停止線の位置が他県比で手前にあり、かつ曲がり行く道路の車線数が多いとか、本来は駐停車が許されない交差点内に当たり前の様にバス停が設定されている場合が多いとかいった地域的事情とかは無いのかです。
実際、その様な環境で右折を遠慮していると、円滑性を欠いて後続車をイライラさせる元となる場合もありますので、一概に問題行為とは言えないと思います。
割り込みの『名古屋走り』はともかく、『松本走り』もグローバルに見ると微妙で、例えば台湾(台北)の走りを参考にすると、交差点は『早い者勝ち』な流れがあり、『松本走り』の動画を見る限り、それと比しては目くじらを立てるほどでも無い様に見えます。
ただし、台湾においては何故か車対車の無言の信頼関係があり、直進と左折(台湾は右側通行)が恐ろしく秩序を以って入れ子に走行するという文化があることは異なります。
おおよそ、『松本走り』の類を一律ダメとしてしまったら、片側一車線の道路で対向車が切れずに右折出来ずに後続を大渋滞させているのを見かねた流れている対向車が譲ってくれているのさえも行けなくなってしまいます。
タイミング込で考えれば、一律に『直進優先』ということには無理があることは明白であるにもかかわらず、誰も言い出そうとしない?
そもそも、右折を先行させるということが日本の文化にそぐわないのか?
はたまた、オーストラリアでも『効果無し』との判断で廃止されてしまっているのか?
外国人人材を受け入れるトレンドからすれば、旧態依然とした島国の常識でのみ割り切るのは、明らかにグローバル化に乗り遅れていると言わざるを得ません。
何も日本ルールのいいところまで否定せよとは申しませんが、海外に理に適ったルールがある場合は、既成概念に囚われずに視野を広く持ってまな板の上に乗せて吟味してみるべきではないかと思います。
その他、先進国であるにもかかわらず、日本では感応信号の設置が極めて消極的で、交通の状況で臨機応変に円滑に流すという信号管制が皆無です。
ネズミ一匹出て来ない交差道路のために優先道路を赤にするということが常態化しており、無駄な燃料消費や排気ガス増をも助長しています。
もちろん、円滑に定速で流れていれば、スピードのアップダウンによるストレスや事故リスクも低減できる場合もあるところ、それをぶち壊している例も多々あるかと思います。
『事勿れ主義』で本質を見ようとしない日本の文化に根差すものの様に思いますが、待った無し、事は重大の様に思います。
悲しいかな、今回の痛ましい事故は日本の交通管制等の実際を微塵も疑問視しない文化が生んだ必然だった様に思います。