こんばんは、銀匙です。
マクロが続いておりますが、今回もタムロンのMFマクロレンズ、SP90mmF2.5(52BB)を紹介します。
前回の52Eと同じ52系マクロですので、52Eとの違いとアダプトールの話を中心にお話していきます。
タムロン90mmマクロの歴史は
こちらをご覧くださいね。
まずは52BBと、PENTAX-KA用アダプトール(63C)の写真から。

ちなみにこの写真は昨日ご紹介した52EでF5.6で撮影しています。
KeiG師匠、こんなもんで如何でしょうか・・・
さて。
52系の2代目となる52BBは、初代の52Bと同じレンズ構成ながら、52Bの総金属製からプラスチック製の鏡筒へと変わり、幅の広いブロックパターンの刻まれたゴム製のピントリングが与えられました。
また、52Bでは等倍接写する際は2倍テレコンを使うしかなかったのですが、52BBではマクロエクステンダーという専用の部品も供給しました。
ただし、現在ではこのエクステンダーを見る事はほとんどありません。
別売りだった事もありますが、脱着にレンズを一旦外さねばならず、不便だったのでしょう。
プラ製レンズを見慣れた現在の目から見ると52Bの方が総金属製で新鮮に見えますが、当時はプラスチックの工作精度は発展途上だった為、最先端の技術でもありました。
そして、この52BBは市場で良く見かける事から、寿命という点でも良かったのだと思います。
ちなみに、金属製ですと氷点下の世界では指とレンズが貼り付く事がありますが、プラ製ではそのリスクが少ないというのも、当時は宣伝文句だったようです。
そんな酷寒の中の撮影なんて・・あ、私はあるか(汗)
ただし、個体によってコンディションのばらつきも値段のばらつきも大きいです。
ちょっと外見がスレてるからと8000円位の札を下げてる店もあれば、52系レンズだからといって大したコンディションでもないのに2万以上の札を下げてるところもあります。
1万ちょいでレンズの状態が良い物を買えると思ってください。
アダプトールは別途入手する必要がありますが。
さて、52Eも52BBもプラ鏡筒ですが、52BBはピントリングがめっちゃ太いので、いかにもマクロレンズといった風情です。
また、ファインダーで見た時、このレンズはピントの合った所とそうでない所の区別が異様にハッキリ解る為、私の持っているMFレンズの中ではピントの合わせやすさはトップクラスです。
つまり、MF専用ですがピンズレを起こす確率が異様に少ない、誠に良く出来たレンズなのです。
52Bのように神格化されていないので値段も52系で最も安く、接写主体の90mmハーフマクロならば、これは良い選択肢・・・と言いたいのですが、ここで注意点があります。
マウントの問題です。
タムロンではこの時期、アダプトールと呼ばれる、各社用の銀色のマウントリングをアダプタのようにレンズ後端に付ける事で各社向けの対応をしていました。
アダプトールはADAPT-ALLから来ているようです。
マウントが乱立した頃の対策だったのでしょう。
私が知っている限りですが、PENTAX-ES(自動絞り対応のM42マウント)、PENTAX-K、ミノルタMD、CANON-FD、CANON-EOS、α、ニコンAiS(爪有無それぞれ)、オリンパスOM用など、かなりの種類を出していました。
しかし。
αとM42とPENTAXの事情しか知らないので、その3つについて留意点を述べます。
まずα用ですが、これは55Bという500mmF8ミラーレンズ専用のアダプトールだったので、絞りを制御する事が出来ません。なぜならミラーレンズはF8しか選べないから、制御する必要がないのです。
ではM42用はどうかと言うと、α700で言えば使いにくいのです。
M42アダプトール(ES用)は外周に大きな出っ張りがある為、αボディにM42マウントアダプタを装着したままM42アダプトールをねじ込んでいくと、回している途中でファインダー部に当たってしまいます。
従って、他のM42と一緒に使おうとしても、M42アダプトールを使う時だけは一旦αボディからM42マウントアダプタを外し、M42アダプトールにM42マウントアダプタをねじ込んでから、αボディに入れ直さなくてはなりません。
これは至極不便です。
元々M42マウントのカメラ、例えばペンタックスSP(銀塩カメラ)であれば問題なく使えますが、ファインダー部が前にせり出しているAF世代のボディでは注意が必要です。
では、アダプトールレンズはデジカメでは使えないのかというと、そんな事はありません。
私はPENTAXのデジカメで違和感なく使っています。
PENTAXのKマウント用のアダプトールは、マウント面がつるつるのK用と3つの電子端子が並んでいるKA用の2種類があります。
このKA用(型番63C)を使うと、例えば私の使っている*istDS2では、PENTAX純正のAレンズと同じ使い方が出来ます。
ファインダー内にはF値が表示され、ボディ側ダイヤルで絞りをコントロール出来、露出調整も指定した絞りに応じて行われ、ISO自動追従モードも作動しますし、フォーカスインジケータも作動します。
要するにMF専用と言う以外、今のレンズと違いがないのです。
ただし。
皆さん同じ結論になるようで、例えばAiS用のアダプトールは大量にみかけ、2000円も出せば買えます。CANON-FD用も同じ。
しかし、M42用はたまに見かけて5000円くらいします。
そしてPENTAX用はK用がたまに5000円程度で見かけますが、KA用は本当に少なく、出たら8000円~1万円と極めて足元を見られます。
なお、EOSやαは今まで現物を見た事がありません。
私は63C(KA用)を3本、1年かけて見つけ出しました。
1本は63C単体で8500円で購入し、1本はジャンクの55Bとセットで15000円で購入し、最後の1つは63C単体で懇意にしているカメラ屋さんから、動作未確認という条件付で2100円で買いました。
この、「動作未確認」て何?という点も説明します。
他のアダプトールと異なり、63C(KA用)アダプトールはボディ側に電子情報としてF値を伝える機構が備わっています。
この機構が非常に繊細で、また、ボディ側が接点位置を微妙に規格変更している影響で、接触不良を起こしている個体があるのです。
従って親切なカメラ屋さんでは63Cの場合はちゃんとKAマウントのカメラにつけてみてF値が正しく伝達される個体の場合だけ売り、それ以外は調整を試みて、ダメならジャンク扱いとします。
しかし、世の中は不親切(あるいは無知)なカメラ屋も多く、ネット上では接点不良や伝達不良品を高値でつかまされたと言う酷い話も聞きます。
従って、ネットオークションで買うのは極めてリスキーな品なのです。
また、63Cは生産総数がK用よりも少なかった事も災いし、母数が少ない上に故障個体もある、買った人は予備の意味で複数入手して手放さない、なのにデジイチ人気も手伝って欲しい人は増加しているという状況なので、63Cだけ異常な相場になっているのです。
なお、63Cの故障個体のうち、調整不良の場合と接点不良の場合は修理することが可能だそうで、その方法を公開している方も居られます。
ただ、それなりの器用さは求められるようですが。
そんなわけで、52BB自体は現代でも遜色なく使えるレンズです。
ただしPENTAXユーザーは、その価値はありますが、63Cアダプトールを根性で探す必要があります。
オリンパスOMだと今のフォーサーズでも使えるのかな?
OM用は少ないですが、M42用と同じような頻度で見かけますから、オリンパスやパナソニックユーザーには穴場の選択肢かもしれません。
でも、フォーサーズだと180mm相当になりますから、使う状況が限られてしまいますね。
もし良い状態の52BBとお手持ちのデジカメに合うアダプトールが手に入ったなら、たとえば菜の花や桜などを、そぞろ歩きしながらパチリパチリとやると楽しいこと請け合いです。
52Eでも書きましたが、この子も9枚の円形絞りを持っていますのでボケの質は良いですし、ピント合わせも楽しいです。
なお、アダプトール世代のレンズを複数のボディで使う場合、ボディ側にアダプトールを残したままレンズだけボディ間を行き来させるという手もあります。
これですと複数メーカーのカメラボディを持っていても、それ毎のレンズを持参しなくて良いので、携行重量を減らせるというメリットもあります。
アダプトールはアダプトール用のタムロンレンズならどれでも使えますので、たとえば70-210mmF3.5(19AH)と90mmマクロの2本を持ち、PENTAXとニコンのボディにアダプトールを付けていくという事が出来るのです。
最後になりましたが、重さは456gと52Eよりも50g程度重いです。
ちなみに52Bは金属製なのに420g。
この辺が、52BBがなぜ安いのかというひとつの理由かもしれません。
参考情報(タムロンのサイトです):
52BBのページ
過去、私が撮ったサンプル写真(桜)