
こんにちは、銀匙です。
NEXや、まもなく発売されるα7/α7Rからαシリーズにも採用されるEマウント。
非常にアダプタが出しやすい規格である為、色々なレンズ遊びが楽しめますが、知る人ぞ知る大変マニアックな惑星群があります。
その名も、引き伸ばしレンズ。
銀塩写真が主流であったころ、どこにでもあった「町の写真屋さん」
その写真屋さんで現像したフィルムの内容を、人が見れるように紙に印刷する工程で使われていたプロ用のレンズです。
どれだけ精密に一眼レフやライカで撮ろうと、このレンズがダメなら紙に印刷する段階で台無しになってしまうので、極めて高い精度を求められます。
海外ではライカ、ローデンストック、シュナイダー、AMAR、ロシア製、国内でも引き伸ばし機器専業のLPLやフジモトを始め、ニコン、富士フィルム、オリンパス、コニカといった顔ぶれが並びます。
引き伸ばしレンズで写真を撮ればさぞかし良い写真が撮れるのではないか。
そう考える人は、前から居たのです。
そして実際、とても良い写りをするのです。ボケ質も滑らかで悪くないレンズが沢山あります。
それなのに、引き伸ばしレンズの多くは中古カメラ屋さんの片隅で数百円からの捨て値で売られています。
なぜか。
まずは町の写真屋さんが銀塩写真の現像から相次いで撤退し、飽和状態なのです。
次にカメラ用のレンズと異なり、引き伸ばしレンズは引き伸ばし機という機械に組み込まれる為、ピント合わせをする仕組み(ヘリコイドと言います)を持っていませんし、引き伸ばしレンズの焦点距離は概ね50mmから135mmまでが主流ですが、レンズ毎に無限遠を出すのに必要な距離が異なるので、ヘリコイド機構はレンズ毎に異なる距離差を吸収出来なくてはなりません。
では、これらを満たすヘリコイドを調達する為にはどうしたらいいか。
幾つかの方法があります。
1つは天体望遠鏡でおなじみのBORG製ヘリコイドシステムを使う事。
最もメジャーなやり方ですが、ヘリコイドの長さによって幾つか製品があり、カメラにつけるまでの一式を買うと、ざっくり言って2万円位かかります。
引き伸ばしレンズが500円位で買えてもこれでは台無しです。
2つ目は、カメラ用レンズからレンズ玉部分を外し、ヘリコイドを抜き出して利用する方法です。
蛇腹を自作する、というのもここに入るかと思いますが、こちらはコンマミリ単位の加工技術が求められますし、ジャンクのMFレンズが減っている今、気軽に壊してもいいや、とはなりません。
また、特に50mmクラスの引き伸ばしレンズはヘリコイドに許される距離が短いので、この方法では作れない可能性が高いのです。
上記のような状況だからこそ引き伸ばしレンズに注目が集まらなかったわけですが、ここに3つ目の、とても簡単な方法が出来ました。
それが冒頭の写真である、M42-NEX用ヘリコイド付マウントアダプターです。
中国のPIXCOというメーカーから売り出されているこの品。
用途としては、M42レンズをマクロレンズとして使えますよ、というモノです。
カテゴリとしては、BORGのM42ヘリコイドマウントに近いです。
しかし、このマウントアダプターは安いんです。
私はネットで6000円程度で買いました。
たまにヤフオクでも「ヘリコイド付 M42マウントレンズ→SONY NEX Eマウントアダプター」という、そのままのネーミングで見かけます。
このマウントアダプタは、名前の通りヘリコイド機構が付いています。
M42レンズとEマウントの差を埋める為の標準距離(約2.7cm)から、約5.7cmまで約3cm伸びます。
ただ、ヘリコイド自体の感触は褒められたものではないです。
いかにもネジという感じで、滑らかに動くMFレンズのようには行きません。
その辺は値段なりという事ですね。
ただ、文字通りM42レンズを持っていればそのレンズがマクロレンズとして使えるようになりますから、買って損はないと思います。
また、このマウントアダプターは直径42mmのネジであるM42マウント用ですが、引き伸ばしレンズの多くはL39(M39)という39mmのネジマウントです。(AMARなど、一部ではM42マウントもあります)
この差を埋める為に、リングアダプタというモノが必要です。
これもネットで、「Leica/ライカ M39レンズ⇒M42 ステップアップリングアダプター 」といった名前で売っています。1つ1000円程度でしょうか。
あわせて大体7000円。
ちょっと高いマウントアダプターかな、というお値段です。
ヘリコイドの伸縮と、リングアダプタの写真を載せます。
この2つと引き伸ばしレンズを手に入れる事が出来たら、こんな手順でNEXに装着してみましょう。
まず、引き伸ばしレンズのマウントネジに、リングアダプターをねじ込みます。
そしてヘリコイドアダプタに引き伸ばしレンズをねじ込みます。
最後に、NEXにヘリコイドアダプタを装着します。
NEXとはバヨネット装着ですから、脱着はカンタンです。
あ、NEX側の「レンズなし時のレリーズ」を許可にしておいてくださいね。
レンズ装着例です。
なお、外す時にリングアダプタと引き伸ばしレンズのネジが食い込む事があります。
この時に備えて、100円ショップで売っている、ゴム製のビンの蓋開けを持っとくと良いでしょう。
レンズが2~3本ならレンズ分買っても良いかもしれませんし、M42レンズが無いと言うのであればヘリコイドアダプタにリングアダプタを接着しても良いかもしれません。
さて。
私の手持ちの引き伸ばしレンズを、このヘリコイドアダプタ+リングアダプタでどこまで使えるかテストしてみました。
その中で使えたレンズ=キッチリ無限遠が出せたレンズを以下に列挙します。
50mmクラス
ライカ フォコター 5cmF4.5
フジモト(ラッキー) 4エレメント 50mmF4.5
富士フィルム FUJINAR-E 5cmF4.5
75mmクラス
ローデンストック Ysaron 75mmF4.5
LPL ENLARGING LENS 75mmF4.5
フジモト(ラッキー) 4エレメント 75mmF4.5
小西六 ヘキサー 75mmF4.5
オリンパス ズイコーC 7.5cmF4.5
ニコン EL-NIKKOR 75mmF4
ニコン EL-NIKKOR 80mmF5.6
富士フィルム FUJINAR-E 75mmF4.5
※多分他にも使えるレンズはあると思いますが、私の手持ちではこれだけでした。
注意して頂きたいのは、使えないレンズもあるという事です。
例えば、50mmクラスでもニコンの50mmF2.8や、ミノルタの50mmF2.8、LPLの50mmF4.5、FUJINON-EX50mmF2.8等はもっと短い距離に無限遠のポイントがある為無限遠が出ませんでしたが、近距離マクロとしてだけは使えました。
また、80mmより大きなレンズ、例えばFUJINAR-E135mmF4.5やヘクトール135mmF4.5では目一杯伸ばしてもまだ無限遠のポイントに届かない為、無限遠も近距離もピントが合いませんでした。
従って、安全圏としては75mmクラスではありますが、上記のリストに入っている50mmクラスであればピントが合いますので、例えばフォコター用NEXマウントとして使うのも面白いかと思います。
如何でしたでしょうか?
Eマウントは、本当にレンズ遊びをしやすいマウントです。
特にNEX-6は各種マウントアダプタを付けてもカメラ側が相当懐が広いので、オールドレンズ遊びに最適なのですが、もしα7が同様の懐の広さを持っているならば、75mmレンズが現在の50mmレンズと同じ程度の画角になりますから、引き伸ばしレンズ遊びももっと楽しくなるんですけどね。
α7のインプレッションが楽しみです。
とはいえ、α7にオールドレンズという記事自体が出るのかな・・・難しいかな・・・・
うちの関連日記・・よろしければこちらもどうぞ。
α7とα7R、オールドレンズ向きの母艦はどちら?
α7にお勧めオールドレンズ
α7を操作した第一印象
α7のレビュー編その1
α7のレビュー編その2
番外編:引き伸ばしレンズについて
α7とオールドレンズ(インダスター50とカールツァイスプラナー編)
α7とオールドレンズ(再びカールツァイスプラナーとXRリケノン28mm)
2014/4/20追加
α7とオールドレンズ(LEICA引き伸ばしレンズ、FOCOTAR)