
こんばんは、銀匙です。
さて。
今回はタイトル写真の通り、
2台のカメラと
2つのレンズを
広角の散歩用レンズとして
紹介したいと思います。
はい。
両方ともロシアレンズです。
両方ともEマウントカメラです。
順番に説明していきますね。
1つ目は写真左、NEX3と
加工したアダプタで取り付けたインダスター69です。
総重量375g。コンパクトカメラを脅かす軽さです。
NEX3はAPS-Cサイズの受光部なので、ハーフサイズカメラ用のインダスター69と相性が良いです。
APS-Cですから1.5倍の換算係数が入るので、35mm換算で42mm。
サイズから言っても、焦点距離から言っても、いわゆる45mm系パンケーキレンズと考えて頂ければ、ほぼ合ってます。
ただ、レンズ自体は28mmの広角レンズ。
それゆえに大体「無限遠+F5.6or8」でパンフォーカス。いつでも合焦済です。
ピント確認不要という事は、
「スイッチON→ちらっと液晶で構図見るか、勘でシャッターを切る→OFF」
というように、操作が極めて短時間で行えますから、スナッピングに適しています。
私は
前回の経験から、インダスター69はモノクロで美味しそうだと思ったので、今回はモノクロオンリーにしています。
ほとんど撮影時に液晶見てませんから、水平が狂ってるのはご容赦。
改めて、言いますね。
「チャイカはピントが合わせられないのも楽しむべき」
「インダスター69はこのままトイレンズ感覚で」
ライターさん、名前は出しませんが、馬鹿言っちゃあいけませんよ。
こんな凄いレンズなんです。
ちゃんとフランジバックあわせて使わないと勿体無いと思います。
さて、次の組合せは一捻り入ってます。

写真右に見える組合せ。
α7とオリオン15(28mmF6)というLレンズを使ってます。
ただし、接合方法を少々工夫しています。
カメラに、「ヘリコイド付の」Eマウント-ライカMマウントのアダプタをつけます。
そして、ライカMマウント→ライカLマウントの変換リングを噛ませます。
その上で、オリオン15を装着しています。
この組合せで、総重量602g。
フルサイズデジタル一眼が28mm広角レンズを付けて、約600gという軽さまで来ました。
ピンと来ませんか?
割と一般的な重量を幾つか示しますね。
α7にEマウント-ミノルタアダプタ経由でMCロッコール50mmF1.4をつけると、877gあります。
同じくMC100mmF2.5をつけると1000g超えます。
CANONのFD17mmF4SSCは、レンズとEマウントアダプタだけで533gあります。
軽いといわれるXRリケノン28mmF2.8はEマウントアダプタと合わせて238g。
同じフルサイズのNikonDfは本体とバッテリーとメモリカードで765g。
ちなみに、牛乳1Lパック1本が1000gです。
オリオン15は、総アルミ製のボディであり、シンプルな構成ゆえ、レンズ単体重量は62gしかありません。
さすがにオールプラスチックのホルガ(26g)やインダスター69(54g)には勝てませんが、フルサイズの受光部にケラレ無しで写せる28mmとしては、恐らく最軽量でしょう。
ちなみにズマロン35mmF3.5は144gありますから2倍以上です。
マウントアダプタをシンプルにEマウント→ライカLにすれば良いんじゃないの?
確かにそれの方がもっと軽い。600gの大台を割る事が出来るでしょう。
しかし。
マウントアダプタにもヘリコイドが付くと良い事があります。
それは、ライカレンズが不得意とする、「1m以下の接写」が出来るようになること。
元々、オリオン15は最短撮影距離1m。ライカLのセオリー通りです。
しかし、マウントアダプタのヘリコイドを回すと、なんと、
レンズ前14cm(いわゆる最短撮影距離でいうと約20cm)
まで寄れるようになります。
レンズの定義として、焦点距離の10倍より近寄れるレンズはマクロレンズ。
28mmレンズですから、28cm以下まで寄れればマクロ扱い。
20cmですから充分マクロと言えます。
規格上の欠点を補い、より、いつでも使えるようになるって事です。
そう。
遠い所を撮る時は「レンズも無限遠、ヘリコイドも最短に」としておけば良く、
程々の距離ならそのまま、ヘリコイドで調整すれば良い。
近い所をアップで撮るぞとなったら、「レンズを最短距離、ヘリコイドで調整」すれば良い。
と、簡単な操作で対応出来ます。
接写リングを出先で使うのは本当に面倒なので、ヘリコイド式アダプタは強く勧めます。
HALKファクトリー製が有名ですが、15000円位します。
互換のチャイナ製品なら9000円。私のは更にそれの中古で6000円位でした。
特に不具合ありません。
じゃあ、オリオン15をα7につけるとどんな絵が撮れるか。
α7側はDROオートの風景、AWBという基本モード。
オリオン15側は絞り開放(F6)から若干絞った状態。F6とF8の間くらい。
はいはい、テストテストと適当に1枚。
・・・・オリオンブルーとでも呼べば良いんでしょうかね?
一瞬で「凄いレンズかも」という予感がする。
久しぶりの大当たりかと思いつつ、あえてファインダーは覗かずに撮り続けました。
すると、

色が濃いというか、こってりですね。
α7の風景設定は確かに濃い目に出しますが、他のレンズではもっとあっさりしてます。
物足りないとDEEP設定に変えますが、オリオン15はこれでもかと色を乗せてくる。
欠点が無いかと言われれば、NOです。それは、
はい、逆光時のゴーストが下のほうに。
でも。
この写真を撮った時はむしむしした暑さで、うっとうしい空気感でした。
まさにそういう雰囲気が出ていると思いませんか?
それだけではありません。
ガラス越しと素通しの差が、
錆びの生々しさが
急に覆ってきた雲の迫力が
夕日に向かうビル郡のちょっとした切なさが、
戻ってきた晴れ間と磨かれたビルの冷たさが、
マクロにすれば草木の柔らかさが、
新しいビルの爽やかさが、
沈んだ後の空の凄まじい微妙な色合いが、
全部、撮れてました。
保存率は大体3枚に1枚。
単に目的もなく移動しながら切ったシャッターの保存率としては驚異的な確率です。
「あ、これもいい」「これも捨てがたいな」
そういうレンズです。
ちなみに、このオリオン15は1965年生まれ。製造から今年で半世紀。
今日巡り合って、一気にマイランクトップへとのし上がりました。
代金は4万円。
ロシアレンズをモスクワから仕入れては自ら計測して整備してから売る、日本では数少ない、「ロシアレンズ買う時に信じて良い店」たる、
KING2さんから買いました。
良い物は良いといいます。悪い物は悪い物といいますよ私は。
高いから良く言う、安いからけなすなんて事はしません。
2600円のインダスター69も銘レンズです。
しかし、オリオン15ともっと早く出会ってたら、広角系をあれこれ買わずに済んだかな。
軽くてコンパクト、操作性が良い、満足出来る写り、省電力と揃ってますからね。
いや、最初の頃の自分の目は節穴だったから気付かなかったかもしれない。
安物の高倍率ズームレンズで全焦点域カバーすれば良いじゃんと思ってましたし。
でも、これくらい写りが良ければ気付くかな。
どうでしょう。過去にifは無いので解りません。
今だから解っている事。
それは現代のレンズが「無色透明」って事です。
目の前にある景色を、HDRやマルチコート、非球面レンズなどを使って、出来るだけ何の味付けもせずに、出来るだけ精細に写し取れればヨシとされる。
そんな側からすれば、好きなように描くオリオン15はもう論外中の論外でしょう。
でも、上を見て、あなたは本当に「評価する価値もない」レンズだと思いますか?
私は無味乾燥のレンズはすぐ飽きます。なぜなら面白くないんです。
無味乾燥がお望みなら、それこそスマホで撮ってれば良いんです。
結構優秀なんですよ、今時のスマホカメラは。
私が買ったスマホには13メガピクセルでHDRやフルハイビジョンも撮れるし、手振れ補正はしてくれるし、パノラマ撮影だって出来るし、魚眼エフェクトとかもあるし、よく寄れますよ。
F値は1.9だそうです。普通に売られてる一眼のキットレンズ、負けてます。
製品としてのカメラが駆逐されていくのが良く解ります。
スマホのオマケと似たり寄ったりなのにわざわざ単体で買う意味なんて、ね。
はい。
あえてキツイ事を言ってます。
一眼だってコンパクトだって、「無色透明」なレンズは、小手先のエフェクトしかないカメラは、駆逐されていきますよ、スマホに。
間違いなく。
じゃあ何が生き残るのか。
撮り手をぐいぐい引きずり込み、面白い面白いとバンバンシャッターを切らせるレンズと、そのレンズを生かす事が出来るカメラボディです。
ショーケースの向こうで呼んでる気がする。
何となく気になって、試写したら結果に愕然とした。
この写りの為にカネを突っ込んでもいいと、余裕も無いのに財布を取り出す。
欠点はあるが、それは目を瞑るか、俺がカバーすると支払う頃には腹を括っている。
そう思えるレンズと出会えなきゃ趣味じゃないんです。
そして、そういうレンズを食い倒せるボディでなきゃ意味がないんです。
現時点で最も好き嫌い言わずに食うボディはα7です。コンパクトさを取るならNEXで。
一眼なら、このどちらかを押さえてれば良いんです。
ちなみに、コンパクトで「あえて買うべきカメラ」があるか。
あります。
GRDigital4は、カメラとしてもレンズとしても1つの完成形というべき製品です。
販売終了となった理由は知りませんが、「あえて買うべきカメラ」です。間違いなく。
無責任な事は言いたくないので購入してないGRについてはコメントを避けます。
ただ、GRD4で出来た事がGRでは出来なくなっている事を考えると、私はGRはGRD4の上位互換ではないと思っています。値段下がったら考えマス。今は見ないフリしてます。
話を戻します。
オリオン15は、買って5分で、最初の1枚で、どっぷり私を引きずり込みました。
欠点さえも「これはこれで」と納得させる。有無を言わせぬ力があります。
この感覚、私は他でも味わった事があります。
それはBMWのE30-318であり、E39の525であり、ボルボのS80です。
乗り込んでドアを締めた瞬間から「ああくそ、良いな!」と言ってしまう。
あーあ、また高い修理費を払うのかと毒つきながら、いそいそと銀行で振り込み手続きをする。
謎の持病と付き合うのは嫌だと言いながら納車は再来週かまだ月曜かとそわそわしてる。
そういう事です。
プジョー306は10分の試乗でも「まずい、免停になる」と思ったほど、コーナリングの楽しいお転婆なフレンチ娘でした。免許可愛さに買わなかった事を後悔してます。
アルファ156は車検毎に10万出してベルト換える勇気がどうしても出なかった。
けれど、下り坂で勝手にダブルクラッチでシフトダウンしながら吼えた、澄み渡る管楽器のようなエグゾーストノートはまだ耳に残ってます。買ったヒトの勝ちですよチクショウ!
そういう事です。
店頭より10000円安く、雑誌の評価が高かったレンズを買った。
でもいつの間にか保管したままだ。
それじゃ全然趣味じゃないんです。
単にお得に買うならスマホで我慢すれば1円も出費は無いんです。
1円でも経済的にと言ってつまらない車を維持するなら、バスや電車で出かけ、現地でレンタカー借りる方が余程お得です。
そういう事です。
私は前にも、
「カメラ」を始める人、つまらないと思った人に読んで欲しいコト。を書きました。
自分の悦びを呼び覚ます「レンズ」と出会わなきゃカメラなんて楽しくないんです。
「キットレンズ」を少し安く買ったって、そんなダメレンズでボディを評価したら可哀相です。
素晴らしい被写体を探すのに注力してるなら、それは旅行という趣味なんです。
私は残念な人です。
カメラの趣味のなんたるかも解らないまま、レンズに百万単位で投資し、ほぼ世界中の、一眼レフ、レンジファインダー、引き伸ばしレンズまで、幅広いマウントのレンズを手に入れ、自分で修理する事も覚え、使っては面白くネェと次々手放し、他の人よりずっと非効率に勉強してきました。
それでも絶対に忘れなかった事があります。
「面白い」ってなんだ。
「写真」とは、「カメラ」とは、何が趣味の部分なんだ。
「何が」楽しくて、「何が」つまらないって思うんだ。
この答えを見つけたくて一心に突き進んだんです。
その結論は
「すぐに解るくらいデカい愉しみをくれるレンズと出会え」
です。
もちろん、私が書いた事が唯一の真実なんてバカな事はいいません。
他にも趣味たる理由はあるはずです。
でもね。
嘘や提灯記事しか書かない雑誌、
高い物しか勧めない店、
肩書きは便利そうだが実際はデカくて重いだけのレンズ。
そんなものをあてにして金を払っても、なんか楽しくないでしょう?
セミナーでどれだけ説得されたって、そのつまらないという感情こそが正しいんです。
もっと自分の感性を、気持ちを大事にして良いと思います。
一人でも多くの人が、自分が写した写真を見て、うむうむと悦に入って欲しい。
満足する根拠が「解んないけど俺が好きだと思うから」と、自分の思いで好きだと言って欲しい。
それがきっと、「あなたがカメラを趣味という瞬間」だと思います。
そういう人が増えれば、そういう人に向けた製品を、メーカーも作ってくれる筈です。
「これで良い筈なんだ、つまらないというのは気のせいだ。安い方が良いんだ」
そう思い込んで誤魔化したら、メーカーもそういう製品しか作ってくれなくなります。
日本のメーカーも素晴らしいレンズを過去には作っていました。
どうかもう1度、気付いてほしいと、切に願います。
・・・・・車でも言えますけど、ね。