こんにちは、銀匙です。
えーと、今日はGRDigitalとGRについての話です。
先に言っておきますと、GRが気に入ってる人は読まない方が良いです。
私はGRDigital(以後GRDと書きます)は2から世話になってます。
GRDの描写は独特で、カメラに全部お任せでも選択するシャッタースピード、絞り、ホワイトバランスの見事さは圧倒的であり、「一眼レフキラー」だと感じました。
そしてGRD4に買い替えた時も良き所を失わないまま手振れ補正や処理速度の向上といった技術の進化具合に感心し、決してしゃしゃり出ないが一流の写りを見せる事を「優秀な執事的カメラ」と表現したものです。
28mmかどうかじゃなく、GRDだから向けてみたい風景がある。
結果にワクワクしてオートモードに入れ、露出補正だけこだわる。
ダイアモンド富士を撮るといった特殊な条件の時だけAモードやMYセッティングを駆使する。
そういうカメラでした。
そして先日。
既にGR2も売りに出されたのですが、GRとWifi以外ほとんど変わっておらず、それ以外の機能はGRもファームアップすれば得られると聞き、GRの流通在庫新品が5.6万を切ったので、GRD4からGRに買い替えたのでした。
しかし。
タイトルの通り、GRは、GRDの後継としては使えませんでした。
簡単に言えば、同じリコーのCX6とかGX100の後継に近いです。
そう。
ありきたりな描写をする、普通のカメラになってしまったんです。
GRDは、先程も申し上げたとおり、「描写が独特」でした。
家に帰ってきて、シャッターを切った状況から、撮影者が「このくらいの感じでこう撮れてるくらいだろうな」と予想する内容を「超えた」1枚を納めている。
「うは、よくあの射光に耐えたな」
「おお、あの微妙な朝焼けをここまで映し出すとは」
「WBをこうしてくるか・・・一眼よりよっぽど頼りになるな」
そういう感じで「唸らせる」カメラでした。周りでもそういう評判でした。
しかし。
GRは「期待値か、期待値以下」の結果しか収まっていませんでした。
「・・まぁこんなもんか」
「逆光で真緑のゴーストが派手に出てるな・・こりゃダメだ」
「見たままの描写だな。普及型コンデジと変わらん」
「あぁ、なんかブレが強調されてる」
確かに、スペック上は著しく進化しています。
でも、別にスペックに金を投資したいんじゃないんです。
「高級カメラ持ってるぞー」なんて事を誰かに言いたいんじゃない。
ましてや「新しいかどうか」なんてどうでもいい。
撮影者の求めるシーンで、期待以上の「写真」を残せるカメラが欲しい。
ただそれだけなんです。
私が家のPCで見て評価し、最終的に保存しておく「残存率」は、GRD4が10枚のうち7枚とすれば、GRは0から2枚でした。
そして、GRで残した物の共通項は「ストリートスナップ」でした。
要するに、GRは町の中のスナップに対する適性が上がった一方、今まで得意だったネイチャースナップに対する適性が消えうせてしまったのです。
その2つの差は何かと言うと、ボケが大事か、緻密な描写が大事か、です。
ストリートには、とにかく写したくない物が溢れてます。
その中で提灯1つ、グラス1つ、特定の1人の顔1つ「だけ」を浮かび上がらせる事に長けている方が便利です。
一方で自然を広角で撮る時には「四隅まできっちりピントが合い、微妙な色加減まで緻密に、真実より記憶に即した写し方」が必要です。
GRD4はネイチャー寄りでしたが、GRはストリートに特化してしまった。
GRを買うときにオーナーレビューを探しましたが、なんか数が少なかったんです。
それに、よく考えれば新発売時の定価が10万もしたカメラです。
メディアは褒めちぎらない筈が無いし、オーナーだって10万も払ったものが悪いなんて信じたくないでしょう。
それに、ストリートスナップで逆光を画面に入れない人ならGRは便利だと思います。小さくて軽いのは確かですし。
ただ、GRを風景スナップで用いると、GRD4に比べて結果がつまんなくなったなあと思います。
今更ですが、この理由をスペックから考察してみます。
GRDはレンズが5.9mmF2.4(GRD1・2)か6mmF1.9(GRD3・4)です。
対するGRは18.3mmF2.8です。
この差は受光部がGRDは1/1.7CCDだったのが、GRではAPSC型CMOSに大型化したためです。
私が
レンズの描写と「35mm換算値」について。で書いた通り、35mm換算値が同じ「28mm」だとしても、被写界深度は素のレンズの焦点距離に依存します。
GRDシリーズは6mmとGRシリーズの18.3mmよりも「広角レンズ」であるため、より浅いF値でも深い被写界深度が得られます。
逆を言えばボケは苦手だったわけですが、そこを補っていたのが「レンズ前1cmまで寄れるマクロ」でした。これは主にブツ取り、ご飯写真で重宝されました。
一方、ストリートスナップでは「数メートル先の対象にピントを合わせつつ他を暈したい」というニーズがあり、それがGRDでは無理な相談でした。
GRはGRDに比べて18.3mmと「望遠」になりましたから、これが出来るようになった。
ただ、レンズ前1cmマクロも出来ず、レンズの特性上被写界深度が浅くなったのに小絞りボケを嫌ったのかF4という浅い絞りを多用する為、「遠景がハッキリしない」写りになった。
これをローパスレスで補おうとしたがゆえに「遠くの森を写すと葉の重なりがモワレやシャギーを増やすので見づらい」方向になってしまった。
裏返せば都会のスッキリしたビル郡などでは「高層ビルの窓枠まで見える精密さ」と「ピントを合わせたい近距離~中距離の対象をハッキリ写し、他をボケさせる」事が出来るので、都会の中で使う向きには大変よろしいカメラになった。
ただ、それはGRDと真逆の路線であり、ゆえに「GRDの後継」ではないのです。
GRの方向性はSONYのRX100系やCANONのパワーショットなど、いわゆるメジャー路線ですが、ライバルはズームレンズですからより沢山の状況に対応出来るわけで、広角単焦点でストリートはどうだろうと首を傾げます。
なので、世間の評価を別の物差しで調べてみる事にしました。
下取りの値段、です。
GRD4は2013年まで売られていて、当時の最終販売価格は3万5千円でした。
GRは2015年まで売られていて、7月の販売価格は5万5800円でした。
それが。
GRD4の下取り値は2015年8月現在で27000円です。
GRの下取り値は2015年8月現在で39000円です。
(両方ともカメラのキタムラの数字)
GRD4は2年経過してもなお8千円しか下がってません。
一方で、GRはまだ新品が売られてるのに16800円も値崩れしました。
さらにいえば、今時点でGRD4の上級中古は3万円を軽々と超えますので、2013年の新品最終販売価格をほとんどそのまま維持してるといえます。
同程度のGRの中古は4.5万だそうですので、1.5万しか差がありません。
私は別にブローカーじゃありませんが、中古買取価格というのはそのカメラに対する人気のバロメーターだと思います。
なかには伝説や噂、希少価値等が多すぎて大した物でもないのに高いって事もあります(ライカ・コンタックス系に多い)が、値崩れする物で良いものはありません。
ちなみに他のカメラが半年も経たずに目を覆うばかりの値段になっている事が多い中、GRだって発売から2年経過してる事を考えれば健闘してます。
GRD4が発売4年を経過してなお新品並の値段で売られてるのが化け物というだけです。
ただ、GRのライバルたるRX100は4兄弟それぞれが今なお新品でも中古でも結構売れていて、かつ値崩れも少ないのを見るとGRはGRDの頃に比べれば厳しい価格競争に立つ事になったと思います。
ガチで戦いに行くという選択をリコーさんがされたのだと思います。
さて。
今後の行く末は解りませんが、私の用途にはまるで合わなかったGR。
1週間経った時点で売り、その時在庫があったGRD2と引き換えてきました。
本当はGRD4が良かったのですが、その店の人いわく。
「GRD4はお待ちの方もいらっしゃいますから店頭に並びにくいですよ」
あぁ。
GR買ってから様子見てGRD4売れば良かった。
下取り買い替えの方が数千円高かった事に目が眩んだ自分のせいです。
そんなわけで手持ちのカメラがGRD4からGRD2にランクダウンしてしまった今回のGR騒動ですが、
GRはGRDigitalの後継ではない。
描写はストリートスナップ向けの一般的な上級コンデジのそれであり、
風景スナップに対し、GRDigitalのような感動を期待してはいけない。
そう記して終わりにしようと思います。
ええ、酷評です。
まぁ、何が一番がっかりしたって逆光時のゴーストです。
あれは撮影者はどうにもならないですからね。
GRDはゴースト自体出にくいし、出てもライカのズマールとかと似た巨大で薄いホワイトのシングル円でしたからまだ可愛げがありましたけど、GRのゴーストはグリーンでだるまのような多重円ですから誰が見ても解るし、グリーンでべったり塗りつぶされてるから誤魔化しようがない。
SIGMAの19mmF2.8とか、いわゆる新しい世代で逆光に弱い系のレンズに共通した特徴ですが、組み込みレンズでそれじゃどうしようもないじゃないですか。
そりゃ、海原とか空ならAdobeのLrのスタンプとか使って直せばいいんですけど、直せない状況はあるし、修正不可ってコンテストも多いですし、そもそも後処理でどうにかすりゃ良いってなんか違う。
いずれにせよ、GRDのように最強風景スナッパーを期待してGRを買っちゃいけませんというお話でした。