
こんばんは、銀匙です。
さて今回はレンズのお話ですが、珍しく現代の、それも比較的新しいAFレンズの話になります。
主として取り上げますのはソニーがEマウントミラーレスカメラ用に売っているSEL1018というレンズ。
その名の通り10mmから18mmを範囲とするAPS-C用レンズで、35mm換算すると15mmから28mmという、超広角レンズです。
今回はこれをメインに、広角レンズにありがちな「クセ」を上手にかわして撮る方法というのを書いてみたいと思います。
超が付くかはどうかとして、広角レンズ(35mm換算で28mm以下の焦点距離のレンズ)というのは一眼を手にすれば1度は欲しくなるレンズだと思うんです。
特に風景を写される方であれば
「ああ、もうちょっと全体を撮りたいのに・・」
という瞬間は経験があると思うんです。
しかし、この「広角」レンズは非常にクセが強い事で知られます。
臆する事無く言えば、手振れ補正や高速シャッター、連写機能等が備わっている現代のカメラボディであれば、35mm換算で言う70mm以上の「望遠」レンズの方が写した後に家で見た時、成功している確率は高いと思います。
いや、2000mmで星雲を撮るとかそこまで行ったら別世界ですけど。
じゃあ広角レンズはどんなクセを持つか。
まず、水平をかなり厳密に取らねばなりません。
具体的にいえば2度未満です。
これは既に普通の人間が勘で出来る域を超えています。
そうでないと途端に歪むんです。特に端の方。
水平が取れてるものと取れてない物を出しましょう。
カメラボディの右側を2度下(写真は右が2度上に傾いている)にした写真
水平を(ほぼ)取った写真
まぁこれぐらいでしたら後で修正ソフト使えば良いんですけど、そういうのが禁じられているコンテストでは致命傷です。
なお、広角レンズでは遠近強調効果と画面端での左右方向への伸び効果というのがあります。
簡単に言えば人物の顔を画面端に入れて写してはいけません。
別人かと思うくらい歪みます。
余談ですが、人物を綺麗に撮るなら出来れば焦点距離50mm以上で、出来るだけ中心に置いて撮りましょう。これを守るだけで綺麗さが2割増しになります。
換算では無いですよ、レンズに書かれている焦点距離そのものです。
ですからAPS-Cでは35mm換算で言えば75mm以上となりますね。
あと、50mm以上でもマクロはNG。普通のレンズで撮りましょう。
なぜなら写して欲しくない顔のしわとかシミとか産毛まで克明に写すからです。
これらは特に女性の綺麗さを損ね、ウケが悪くなりますのでご注意。
なんでもかんでも高画質で写しこめば良いという訳ではないのです。
次に、光源を画面の中に入れてはいけません。
出来れば順光、つまり太陽を背にして撮るのが安全です。
ナノうんたらとかTウンタラとかメーカーは誇らしげに色々書いてますけど、大概のレンズはゴーストという緑とか青色をしたダルマ型や多角形の円、あるいはフレアという画面の広範囲が真っ白になる現象が画面内に現れるからです。
私は濃い色のゴーストやきついフレアが出ると無条件で捨てるのですが、残っていた物を。
これはゴーストに加えてレンズ内反射で写りこんだ絞りの形も見えてます。こうなると修正しようがありません。
元の写真
上の写真のゴースト箇所を水色で囲いました(他にもありますが)
では、どうやって守るか。
水平を取る方は、電子水準器があれば夜中や明け方といった暗い状況でも何とかなります。
逆を言えば三脚持って行こうと電子水準器が無ければ暗い状況で水平を取る事はほぼ不可能です。
(ですから私はそのボディで広角を使う予定がある場合、電子水準器の無いカメラボディは全て手放してますし、購入対象にしません)
じゃあゴーストはどうか。
そんな事言ったって朝陽や夕陽の写真を撮りたければド逆光で太陽というこの世で一番厳しい光源を画面の中に、しかも主役で入れる事になります。
ナイトイルミで使われているのは直進性が非常に高く厄介なLEDが主流です。
LEDは家庭内照明でも使われ始めてますが、あれはゴースト生成機です。
その為にはるばる来たのに撮らないなんてありえませんし、家に帰って
「うわあああ真緑のゴーストがああああ」
と気づいた時のダメージの大きさは計り知れないものがあります。
世の中にはゴーストについて、あれもあれで良い物だとか寝言ほざいてる記事もありますが、そもそもゴーストは
意図的な出現ではないのでカメラマンが制御出来ない
事が問題であり、「ここにゴーストが出れば良いな」という意図をもって出せるならともかく、
「よりによってそこに出るのかよぉおおお」
という事が大体です。
モデルさんや可愛い子供の顔の真ん中に濃い緑の円がべちょっとついた写真が「良い物」になりますかって話ですよ。
絶対にゴーストなんて要らないんです。
どうしても強い光という演出的に欲しければ画像ソフトにもよりますが、後でゴーストを追加するなんてのもできますしね。
じゃあゴーストをどうやって対策するかというと、
ゴーストを出さない、せめて出にくいレンズを買う。
この1点しかないわけです。
ところがこれをカメラ屋の店頭で言うと途端に店員の表情が曇ります。
「い、いや、ゴーストはお客様の撮影条件によりますし」
「こちらでもこのレンズで出にくいかどうかは保障しかねます」
「ナノ(自主規制)コートが決してゴーストを出さないというわけでは・・(もごもご)」
というわけで、大枚はたいて買ったレンズで
「クソがああああ」
となるパターンは非常に多い。
ちなみにゴーストには1つ特徴があります。
それは
「なぜか新しいレンズほど色の濃い、性質の悪いゴーストが出やすい」
ということです。
えっと思うでしょう?
新しい方がだんだん改善されてきてるんじゃないのと。
違うんです。
例えば一眼ではありませんが、私が推し続けるリコー製GRDigital4(以下GRD4)と、後継のGRでは、逆光耐性は圧倒的にGRD4の勝ちです。
GRD4は最悪の逆光環境である「ダイヤモンド富士」でさえ余裕です。
一方でGRは普通の逆光でも、それこそ白熱球の逆光でさえ、緑のダルマ状に、それはそれは酷いゴーストがべったり出ます。
だから私はGRを売り払い、苦労してGRD4を買い戻しました。
ちなみにGRD1,2ではサッポロポテトが出ます。泣けます。
↓これがサッポロポテト(下手な絵でゴメンなさい)
同じGRDigitalでも異様にGRD4が中古で値下がりしないのは、例えば朝陽を撮りたいなら他に選択肢が無いわけで、そういう「これじゃないとアカン」という需要が多いカメラは値下がりしないんだと思います。
ただ、その需要はレアだからとか、画角的にそれしかないからとかそういったものもあるんで、一概に性能が優秀かどうかは解りません。
中古市場の価格形成は様々な要因がある、という事ですね。
話が逸れました。
で、最初に戻ってSEL1018はどうかというと、逆光耐性が珍しく強いレンズです。
ただ、ゴーストもフレアも0ではありませんし、そもそも基本的な話として、
望遠域14mmから18mm(35mm換算21mmから28mm)で
絞りを開放で撮るとパープルフリンジが出るくらい、周辺画質はゆるゆる
という酷い欠点のあるレンズです。
「ヘイヘイベイビー、7万もふんだくってそれかよ、冗談よせよ」
広角レンズは隅々までビシッとしててナンボです。
パンフォーカスメインなんですからね。
まぁCanonのEF-M11-22も遠方の枯れ木とか写すと盛大にパーフリ出ますけどね(ぼそ)
ただ、ここでぶっちゃけますとね、逆光に強いと謳ってる、
Vario-Tessar T* FE16-35mmF4 ZA OSS(SEL1635Z)
よりも逆光耐性は上なんです。
SEL1635Z、結構酷いゴーストが人工光源では出ます。LED系は特に。
だからクリスマスイルミとかを撮ると悲惨です。
太陽では出にくいですけど、出ないわけじゃない。
SEL1018より耐性は低いです。
α7Ⅱ使いの私としては、SEL1635Zを推奨したかった。
でもこういう状況では仕方ありません。
一切反射光も無い順光の条件下では悪くないし、買った値段が高かったので散々悩みましたけど、結局SEL1635Zは売りました。
状況によって油断出来ないレンズなんて安心出来ませんからね。
元値が高い分、売値との絶対差額が凄いので泣けました。
では、SEL1018の欠点をどう補うか、です。
まず、水平については電子水準器のあるカメラボディを使えば良いです。
APS-CのEマウントなら以前ご紹介したNEX-5RやNEX-6が今(2016年1月)もお勧めです。
α6000は電子水準器が無いので論外です。
変則技ですが、電子水準器を持ち、ボディ内手振れ補正を持つα7ⅡをAPS-Cクロップモードで使うというのもアリだと思います。
次に21mmから28mmでの画質低下ですが、これは
レンズフードをきちんと付け、AモードにしてF7.1以上で使う
という事で大体クリア出来そうです。
安全を見るならF8かF9ですね。
また、画質にこだわるならISOは800未満、出来れば100指定で運用する事。
一応OSSが入ってますから手振れ補正は出来ますが、夜明けや日暮れ後のブルータイム、あるいは夜景撮影であれば固定具として三脚を活用しましょう。
この場合の三脚は「ほぼ地面など、高さ30cm未満で良いなら」1000円程度の軽いものでOKです。
固定具ですからボール式でも良い。
ただし電子水準器で厳密に水平を取りましょう。
そして腰の高さより上とかにしたければそれなりの三脚を用意しましょう。
NEX5Rにマンフロットとか大げさじゃない?
とか思うかもしれませんけど、結構違います。
なお、このぐらいの状況であれば手持ちでOKです。
これはどんな状況かと言うと、日の出から18分経過しています。
完全に水平線より上に太陽があるけど雲に隠れている、という状態ですから日の出後なら大丈夫ですかね。
これが撮れるなら三脚要らんよ・・と思うかどうかは各自のご判断で。
さらに書きますと、SEL1018でどんなゴースト・フレアが出るか。
こんな感じです。
元の写真
上の写真をゴースト・フレアを水色で囲みました。
これぐらいなら現場で対応出来るかな・・といえなくもないレベルです。
それでも肝心な所の上に重なった時は涙しながらDelキー押すんでしょうけど。
先程書いたSEL1635Zも市販価格では14万前後の高価なレンズです。
中古市場でも11万前後と比較的人気のあるレンズだと思います。
(FEで超広角はこれしかありませんし)
一方で、今回取り上げたSEL1018も7万もしますし中古でも6万代と物凄く強気ですが、SEL1635Zよりは安価ですし、T*コートも無ければツァイスを謳ってるわけでもありません。
APS-C専用レンズであり、フルサイズに比べれば焦点距離が短く、強い遠近強調効果が出るので、望遠側といえどフルサイズの28mmとピッタリ一緒ではありません。
ですが、逆光耐性を大事にするなら他に選択肢がありません。
ただ、私はAPS-Cより遥かに小さい受光部をもつ、GRD4の絵は好きです。
あれもスペックで言えば6mmF1.9のレンズですから、遠近強調効果はもっと強く出ています。
それでも、良い絵です。
ちなみにGRD4でド逆光で写すとどうなるかをご覧頂きましょう。
勿論手持ちですが、電子水準器で水平だけは確認してます。
私がGRD4を一眼キラーだと言い続ける理由がお分かり頂けるかと思います。
これを手持ちで撮って出してくるんですから。
こんな風に写せない最新の一眼レフや、べたべたゴーストだらけにするウン十万のレンズなんてゴロゴロあります。
まとめますと、今現在売られている高価な最新機器でも欠点はあるわけです。
一般的に35mm換算で30mm未満を含むズームレンズでは大概ゴーストが出ます。
ゴースト嫌いの人の間では例えばシグマ製のレンズ、Canonの安価なラインは出やすいことで有名ですし、それこそニコンのナノクリスタルコートを採用したレンズでも出るものは出るから高かろうと何だろうと信じられないとされてます(言っちゃった)。
ゴースト嫌いの人は大体ニコンの割と高い値段の単焦点に集約していく事が多いのはこういう理由です。それでもハズレはあるようですが。
こういう事を店員は知ってるけど言ったら客がドン引きして新しくて高価なズームレンズを買ってくれなくなるから、まるでこちらの腕次第だと言わんばかりに誤魔化すんです。
酷い話ですよね。
だから店頭で出来るチェック方法を晒します。
100円ショップで売っている、LEDタイプの小型懐中電灯を買ってきます。
親指くらいの太さの奴ですね。
もちろん点灯する事は確認してください。結構不良品が多いですから。
さて、買いたいレンズをカメラにつけ、カメラの背面液晶を見ながら点灯したLEDをレンズに真っ直ぐに向け、レンズの上下左右にゆっくりと動かしてください。
ダメなレンズは背面液晶でも容易に解る位ゴーストが出ます。
それはもう面白いくらいに。
懐中電灯はLED1灯式と多灯式がありますが、ゴーストの出易さは多灯式、ゴーストの形を見極めるなら1灯式かと思います。
強い光源の方が出ますので、従来のムギ玉式の懐中電灯では出ません。
お試しあれ。
なお、サードパーティレンズや広角レンズが全部だめかと言うとそうでもありません。
タムロンはシグマよりは比較的強いようですし、超広角で有名なコシナのULTRA Wide Heliar12mmF5.6 Asp2(UWH)は猛烈に逆光耐性が高いです。
晴天でドピーカンな太陽を斜めに入れて撮っても一切出ないレベル。
どうやって作ったコシナ。ていうかその設計を他のL系とかカールツアイス系とかにも応用してくださいよお願いしま(ry
ではマイナーメーカーがだめかと言うとそうでもありません。
例えば単焦点ですけど、RICOHの28mmF2.8(F3.5パンケーキではない)も耐逆光性能は高いです。
ちなみに望遠ですとオリンパスのOM300mmF4.5、あるいはPENTAXのM42レンズであるテレタクマー200mmF5.6(200mmF4ではない)とかは驚異的な対逆光性能を有してます。
逆光耐性の強いレンズが存在しない訳では決してないのですが、選択肢は非常に少なく、こうやって記される事も大変少ないのです。
そして書いていて気づいたのですが、1つ共通点があります。
中古屋でもオークションでもめったに見ないんですよ、こいつら。
そして出てくると妙に高い事が多い。
SEL1018やUWHが良い例ですよ。新品と普通の中古の値段がほとんど変わりません。
GRD4も最終販売価格程度の中古価格からちっとも下がりません。
こうなるとUWHとか、それこそ今回紹介しているSEL1018を新品で買っとくのが今から必要とするユーザーには得策かも、となります。
だからこそ書いた訳ですが、ゴースト嫌いの人がやっとこさ出会い、決して手放さないんだろうなと今なら解ります。
こんな状況だから店員は言いたくないんだろうなぁ・・
さて。
我々が不幸にもゴーストを生むレンズを逆光等の条件で使わざるを得ない時、撮影現場で暫定対策としてよく使われるのは以下の3つです。
・レンズフィルタを外す事(特に安価なプロテクタや銀塩用の古い物は原因となりやすい)
・絞りを変える事
・ちょっとずつ構図を変えて何枚も撮る事
これらは効果を生む事もありますが、無い事がほとんどです。
腕でどうこうってのはほとんどおとぎ話だという事を強調しておきます。
補足すると、絞りを開けるとゴーストの輪郭がぼけ、フレアが強まります。
絞りを閉じるとゴーストの輪郭がハッキリとするが小さくなり、フレアが弱まります。
カメラを振り、構図を僅かに上下左右にずらす事でゴーストやフレアが弱まる、あるいは光源内に隠れさせる事が出来る、というものです。
EVFユーザーならゴーストの写り具合をリアルタイムで確認出来ますが、OVFユーザーはファインダーで見た時には無かったゴーストが派手に写りこんでた、なーんて事はごく普通に起きます。
そういう意味ではEVFのNEX-6やα7Ⅱ、α99など、SONY機はゴースト嫌いな人には優しいですね。逆光をEVFファインダーで見続けても平気ですし。
ただ、それらの調整は撮影者の撮影の意図と自由を著しく制約するものです。
そんな制約無い方が良いと思われるなら、逆光に強いレンズを探し出して買うしかないのです。
なお、上の3つの制約を覚悟するというのであれば、それなりに選択肢はありますし、安価なものもあります。
例えばAマウントで言えばミノルタの28-105mmF3.5-4.5(Xiじゃない奴)なんてのがありますが、これは5000円とかで買える割にはゴーストが比較的制御しやすいです。
24-85mmより28-105mmの方がより制御しやすいです。
このレンズ、実はα900やα99といったフルサイズユーザーの方が捨てずに持ってるので市場に出てこない代表的なレンズですが、Xi、つまり電動ズーム版が多く、Xiは使いにくいので間違えないようにしましょう。
私はα7ⅡにLA-EA4経由で使ってますが、現場で調整すればこの位なら撮れます。
色々書きましたが、私と同じゴースト嫌いな方のお役に立てば幸いです。