皆様こんばんは、銀匙です。
今回は変わったレンズのお話です。
さて、タイトルや冒頭の写真にもありますが、NEX-6につけているのはCONTAX Tというカメラについていた、ゾナー38mmF2.8というカールツァイスのレンズです。
CONTAX Tは
Wikiさんいわく、1984年に発売されたレンジファインダーカメラなのですが、
ボディ写真のとおり、ボディ前面の蓋をぱかりと下に倒すと、格納されていたレンズがにょきりと飛び出す、ちょっと蛇腹カメラライクなメカニズムを持っておりました。
それゆえかは解りませんが、このレンズはフルサイズ対応にしては大変コンパクトにまとめられています。
さて。
CONTAX Tというカメラ自体を、私は手にした事がありません。
なぜなら1980年代の日本はバブルの絶頂期であり、このCONTAX Tというカメラは京セラが売り出したものですが、フラッシュとケースを合わせると約10万円もした、大変高級なカメラだったのです。
デザインはポルシェ、レンズはカールツァイス、そしてメードインジャパン。
もう値段を下げる理由なんて無いよ、といわんばかり。
そしてこのカメラは発売されていた時にはさほど人気が出なかったのに発売終了後から人気が出て中古市場でプレミアが付いたそうです。
ちなみに今も状態の良いものは5万くらいしています。
NEX-6と似てますよね。
で、このレンズは、最初からCONTAX Tから取り外され、きちんとEマウント用に改造されて店頭に並んでおりました。
お値段3万円。
初めて店頭でこれを見た時はCONTAX Tって何?美味しいの?という状態でしたので、
うーん、改造レンズが3万ねぇ・・3万・・うーん
と、随分悩みましたし、事実買う決心をしたのは1週間くらい経ってからでした。
ちなみにこのレンズ、といいますか正確にはこのレンズの後継のCONTAX T2というカメラのレンズですが、これをライカMマウントのレンズに加工する業者さんがいるようで、ごくたまに店頭に並ぶそうです。
ライカレンズらしく、3万どころじゃないプライスが付くそうですが、あっという間にはけていくそうです。凄いなぁ・・
この個体を手にしてみると、いわゆるライカLマウント系レンズよりも小さいので、NEX-6がコンデジくらい取り回しやすくなります。
dp0、α330と並べたので比較してみてください。
ちなみにdp0でこのNEX-6君を撮るとこうなります。
タイトルの写真はNEX-5Rにローライプラナー(50mmF1.8)で撮りましたが、さすがdp0、もう1段キレてます。
さて。
ゾナーといえば、うちには数本のゾナーがあります。
Jupiter3もゾナー系ですし、α用のDT16-80もバリオゾナーです。
共通しているのはボケの綺麗さ。
じゃあこの当時10万もしたCONTAX Tのゾナー君はどうか。
弱点は沢山あります。
まずは仕方ないのですが、APS-CのNEX-6ですと35mm換算で58mmの画角しかありません。
その割に最短1mと寄れませんし、開放Fは2.8です。
58mmクラスならF1.4あればほわほわのボケが期待出来ますが、F2.8では無理ですね。
ただ、F1.4クラスのレンズって解放だとゆるすぎて使い物にならず、結局F4位まで絞り込まないと実用にならないので、このレンズを開放で使った時の描写次第では実用的には変わらないともいえます。
事実、F1.5を誇るJupiter3を使うとき、私はほとんどF5.6で使います。
その描写ですが、1点だけ難があります。それは高輝度差の動体を撮影した時に出るパープルフリンジです。
下の写真でいうと、右下の車のヘッドライト部分に出ていますね。
あとは難点というのは可哀想かもしれませんが、逆光時にゴーストが発生します。
薄いですし、パープル&レッド系なのでマナーは良い方ですが。
では、長所に移ります。
まずは小ささです。
MF専用とはいえ、7枚の絞り羽数を持つゾナーレンズがこんな小さくていいのかというくらい小さい。
鏡筒の直径は500円玉より一回り大きいくらいです。
なのにきちんとMF出来る。
F値も距離指標もレンズにちゃんと記されているからです。
さらに、いわゆるパンフォーカス的な使い方も出来ます。
F8でおよそ4mにピントを合わせると1.5m~∞までピントが合う、というのがこのグリーンマークの意味です。
ただ、これをEVFを持つNEX-6に装着しますと、そのピントの合わせやすさに呆然とします。レンズにキレがあるという事です。
こんなちっこい、開放F2.8しかないレンズなのに、です。
室内で雑多に物を置いて撮影してみました。
ここで言う、カメラの「α330」という文字にピントを合わせるのが大変ではないのです。
少し引いて、1.5m位のピントで撮ってみましょう。
今回は「NORTH」のNにピントを合わせています。
ピントを合わせた所は綺麗に浮かび、合ってないところは滑らかにボケていきます。
奥にある扇風機の網目がざわつかずに処理されています。
では前ボケはどうか。
今度は奥の木の扉にピントを合わせます。
手前のボトルのボケ具合も自然で滑らかです。
ゾナーらしさを求める人にゾナーらしい描写で応えていると思います。
こういうマナーの良いレンズであれば、たとえば外でもこういう描写が出来ます。
一方、NEX-6との相性ですが、これも大変良いと言えると思います。
まずサイズ感です。
このレンズをα7とかにつけてしまうと、あまりにサイズ比率が違いすぎるので滑稽に見えてしまいますが、NEX-6はコンパクトなので重量バランス的にもサイズ的にも見た目的にも悪くありません。
また、これはNEX系全般に言えますが、NEX-6は電子接点のあるレンズを装着するとレンズ認証時間が加わるので全体の起動が遅くなります。
しかしこのレンズは接点を持たないMFオンリーなので、起動時間も短くてすみます。
そしてCONTAX Tボディ部とNEX-6の決定的な違いはISOの自由度です。
フィルムカメラである以上、CONTAX Tは1度入れたらフィルムが切れるまでISOを変える事は出来ませんが、NEX-6はISO100から3200まで自由自在。
ですから、輝度がめまぐるしく変わっていく夜明け前のブルータイムでもサクサクこなしていけます。
上で紹介したショットもありますが、連続で見てみましょう。
この程度の変化が1時間くらいの間に起こるわけですが、EVFを覗きながら黙々とゾナーをつまんでピントを合わせてはパチパチ撮るだけで撮れるのです。
良いレンズは時を越えて評価されます。
願わくば、ソニーさんがMFオンリーで良いから、このくらいの描写レベルで、このサイズのEマウント用レンズを、出来れば3万円以内くらいで、35mm換算で24mm位の広角、45mm位の標準、80mm位の中望遠の3種類くらいを出してくれると良いんですけどね。
そうしたら間違いなくαシリーズはてっぺん取れると思います。
とにかくEマウントレンズは大き過ぎるか描写が雑すぎます。
折角良いマウント規格を作ったのですから、活かして欲しい。
改造物とはいえ、こうして実例があるのですから作れない筈は無いのです。
頑張って欲しいなぁソニーさん・・