本編はシリーズものの2つ目です。
前回は
こちらからどうぞ。
さて、パジェロミニを横目で見ながら店内で契約交渉開始である。
私は今回、購入時に金のかかる整備を含めて一括依頼することにした。
車が特殊であり、この店は多くのパジェロミニを売った実績があり、詳しいようだったからである。
さらに言えば、私は未だに三菱自動車も、ディーラーも、秘匿体質は変わってないと思うからである。
なので、中古車屋と交渉の口火を切る時に「じゃあ整備の話をしましょう」で始めた。
整備と聞いて急に真顔になって口をつぐんだり、現状で良いじゃないですかとか言い始めたら帰ろうと。
実際そういう業者も経験したことがあるが、この車屋はそうですねと淡々と応じた。
改めて書けば、諸費用とは車を公道で走らせて良い状態にする為の費用である。
必須としては車検と税金、自賠責保険を含めたナンバー取得費用。
そして車を健康な状態にする為に必要な整備費用である。
しかし、落とし穴がある。
それ以外の項目も、それをいくらとするかも、全て店の裁量で決めて良いのである。
ナンバー取得費用は車検残があれば5~8万、車検を取るにしても12~13万程度が相場である。
これになんとか手数料、かんとか費用、そんなんで1万2万の項目がちょこちょこあり、その内容を聞いてもロクに説明出来ないような物が積み重なって合計30万とか取られるケースがある。
この「ロクに説明しない項目」こそ「何もせず客からふんだくるカネ」つまり純粋な儲けである。
しかし、タダ取りするつもりだろうとか言って支払い拒否することもできない。
客が出来ることは、内容をたずねること、そして納得出来なければ交渉を打ち切って帰ることだけだ。
だから都合の悪い項目を尋ねられると、契約交渉中断からの破棄につながる為、態度が豹変するのはよくある事である。
ただ、一般論として、車両価格を安値にしておいて諸費用で儲けるのはどこの店でもやっている。
程度問題なのだ。
それは中古車情報誌が車両価格と総額をそれぞれ掲載し、車両価格の安い順で並べ替える客が多いからだ。
逆を言えば総額費用を掲載してない店は諸費用が非常識なほど高いので掲載できませんという事である。
実際、総費用掲載してない店で見積もり貰ったら車検残ってて現状販売で保証なしなのに諸費用35万円と書いてあって即帰った経験がある。
他にも水没車や事故車だという事実を隠して売ってる業者、金だけ受け取って蒸発する詐欺師、注文を受けてから車を盗み、プレートを偽物とすり替えて売る外人なんかも存在するらしい。
よく言われる値段が異様に安いというのもあてにならない。
値上げすれば相場に隠れられるうえに儲けも増えるからだ。
悪質な業者は善良な中古車屋の陰に隠れる卑怯さだけは優秀なのである。
完全にクリーンなのは保証をきちんとつけたメーカー系中古車ディーラーだが、そもそも価格設定が高い。
つまりは高品質な人気車種を激安で、なんていう上手い話は絶対ないのである。
そもそも、中古車とは誰かが理由があって手放した車だ(盗難車除く)
もし調子が良く、新しく、気に入って乗ってるなら手放さないだろう。
大体は年数が経って飽きてきて、そんな折に不調を点検してもらったら、それなりの修理費用が掛かりそうな故障だと言われ、それなら買い換えるかとなったパターンが多いだろう。
つまり現車は高確率で不具合を内包しており、直して乗り始めることが前提なのである。
ちなみに、名前の知られた大手中古車屋(買取屋が兼ねてる中古車屋も含め)でも騙しのテクニックは使われているので、ネームバリューやJU加盟等も参考程度の指標に過ぎない。カーセンサーとかに掲載しているかどうかも同じである。
なぜなら真面目に善良な利益で商売してる車屋なら、急成長なんて出来ない。
急成長には莫大な現金が必要で、そんなに儲けられるってことは、客から必要以上に金を貰ってるからに他ならない。
手法の1つとして、店側が車両購入の契約の段になって、コーティングしないと売らないと言い出し、馬鹿みたいに高額な項目となっているケース。
しかもこのコーティングは大変粗悪で、費用はほぼ利益となり、ぼろ儲けという仕組みらしい。
それでもコーティングしてないわけではないので、罪には問えないのだそうである。
他にも購入後の車検で不必要な整備で40万とか請求されたうえ、実際は整備すらやってなかったケースもあると聞く。
中古車屋の闇は深く広い。
話がそれた。
さて、今回買った店は自分から修理項目と整備項目について説明し始めた。
まずはプライスボードで示された金額の中で行われる修理や整備の項目を聞いていく。
次に、私は安心して乗りたいからお金払うのできちんと整備した状態で乗り始めたいと伝え、同型同年式車両で良く直す部品、走行距離や年式的に変えた方が良い部品や消耗品などを積み上げていった。
最後は購入する車両個体に限った補修個所として、汚れや破損個所などを確認して処置を決める。
そうして追加整備に関しては改めて取捨選択した後、支払総費用を洗い出した。
新品タイヤへの交換費用は含むが、カーナビの取り付けや電源取り出しは自分でやるから含まない、等である。
最後に前金の額を決め、注文書に支払済と記載頂き、カーボンコピーの正副を店と自分で1通ずつ持った。
ここまでで私はくたくたになって、それじゃあと店を辞してしまったのである。
翌日。
重大な交渉漏れに気が付いた。
納車最終期日を設定していなかったのである。
何度聞いても結論に至る前に話がそれて聞き出せなかったし、注文書にも書いてもらってないと気づいたが後の祭り。
そう。
このミスのせいで、注文日から納車まで、私は実に4週間以上待つことになった。
大体2週間くらい見ておいてくださいと言われていたにもかかわらず、である。
期限設定しなかったがゆえに、いつまでも音沙汰の無い車屋からの連絡を待つ日々となったのである。
仕方なくこちらから問い合わせたが、回答は回を重ねるごとに矛盾と曖昧さが目立っていった。
詳細は省くが、納車日には
「何か・・言ってない事はありませんかね?」
と、眼鏡を光らせながら半日ほど問いつめたかったのだけれど、期限設定しなかった自分が悪いのだと思って止めた。
これだけでも私としてはお腹一杯だったんだけど、さらに話は続くのである。
納車の翌日、私は車屋とは別の自動車整備工場にパジェロミニを入れていた。
クラクションを取り付けてもらうためである。
こんな古い時代から変わらない問題が、国産車のクラクション音のしょぼさである。
ちょっとはコストかけろよと思うくらい、軽薄で耳に心地悪い音である。明らかに喧嘩売ってる音だ。
さらに、そのクラクションの取り付け位置は、パジェロミニの場合フロントグリルとラジエターコアの間。
フロントグリルはバンパーとグリルガードを外さないと外れない。
そのバンパーのボルトは真っ赤に錆びている、という素人お断りのハイレベル作業である。
車屋に頼もうとしたらさらに1週間納期延びますよと言われたのでこちらに頼んだのである。
6000円で2~3時間もあれば・・という提示が本当にありがたかった。
この工場は過去にも何度か付き合いがあり、毎回納得のいく仕事をしてくれていた。
なので、念の為、本当に念の為、24か月点検レベルの点検をお願いした。
納車を待つ4週間の進捗確認の際に車屋への疑念が生じたことも否定はしないが、どちらかというと別のプロの目で見て大丈夫という太鼓判が欲しかったのである。
点検代7000円が杞憂だったらそれでいいと。
しかし、悲しい事に、現実は冷たかった。
修理歴ナシとされていたが、その根拠となった車に積んであった記録簿は、別の車体番号が記されていた。
さらにはフロント片側で「潰れたのを、引き出して、叩きだした板金跡」が見つかった。
「修理歴とするかは微妙だけど、私なら言うよ。あぁ、車屋なら絶対分かるよ」と工場長からは言われた。
更にエンジンガスケットからミッションまでエンジンオイルが漏れており、ミッションケースが真っ黒だったらしい。
エンジンオイル、ミッション、デフオイルは交換を依頼してるので見てないはずがない。
工場長いわく、エンジンルーム内で結構拭き取った形跡があるので、ガスケット交換したくなかったんだろうね、と。
工場長ならどうしますと聞いたら、
「普通の車検整備でしょ?連絡して対処法を相談するよ。汚れるし漏れが拡大したら危ないだろ?」と。
ですよね。
電動ファン、ウォーターポンプ、タイミングベルト、ファンベルト、テンショナー、プラグ等に至るまで交換してもらってるのだから、ガスケットで漏れがあるなら一言相談してほしかった。
他にもクーラントのアッパーホースは替えてるのにロワホースは替えてないとか、リアブレーキは分解整備した形跡すら無いとか、車幅灯の球切れ、発煙筒の期限切れ、樹脂外装のいくつかが取り付けの爪が全部割れてただ乗ってるだけ、ホイール固定用のボルトが錆びて回しにくい等、まぁ出るわ出るわ。
工場長の気の毒そうに説明する顔が却って心をえぐるえぐる。
結果的には指定した部品は交換されていたが、こんなん見たら分かるだろってものでも言ってない所は何一つしていない状態だったらしい。
工場長が途中で電話かけてきて、もーちょっと時間頂戴と言ってきた時に嫌な予感はしたんだけど、これほどとは思わなかった。
工場長が点検で見つかった問題を一通り処置してくれ、部品洗浄や錆取り、クラッチミートの調整等の細かい事もあれこれしてくれた。
そのうえで、エンジンオイル漏れについては本来はガスケット交換だが、量が少ないのでワコーズの漏れ止め剤入れて様子見するかと提案してくれたので、元々予定していたフューエルワンと合わせて投入した。
結局2万かかったが、なにより整備後に周辺を試乗してきた工場長が、頷きながらこれで大丈夫だよ、あとは様子見ていこうやと言ってくれたので、支払った金額以上の価値が私にはあった。
板金個所の運転への影響は工場長いわく、見た目よりは少ないし、割とまともなんじゃない?と。
どれだけ酷い仕上がりなのだろう・・・
車屋の評価については、ここで名前を明かさない程度、である。
糾弾もしないし、勧めもしない、今のままなら今後の付き合いを避けて、フェードアウトしていく感じ。
こうしてようやく、車が私の家に来たのである。
なお、乗っかってるだけと指摘された部品の1つは家に帰るまでの間に旅立っていった。
結論。
とにかく信頼できる整備工場を見つけ、普段から付き合っておこう。
本当にこれに尽きる。
医者と一緒です。
こういう時の注意ですが、もしメーカー系ディーラーに駆け込むと一切合切アッセンブリ交換と言われ、簡単にウン十万の請求に発展します。
もう少し言えば、国産メーカーのディーラー整備士さんはあんまり修理に詳しくない人が多い。
儲けようというよりアッセンブリ交換しかしたことない感じ。
これは三菱に限らず、トヨタもそう。
逆にボルボやBMW、イタ車系のディーラーメカニックはメインコンピュータの半田浮きくらい今直しちゃいますねと言って速攻分解整備してくれる上級者が多い。
それだけ故障が多い証拠ともいえるけどね・・・
素人が頑張って交渉しても、結局こんなもんです。
皆様が良いカーライフを送れますように(願)