本編はシリーズものの9つ目です。
前回は
こちらからどうぞ。
納車までの4週間の間に考えていた、手を入れたい所も終盤に入ってきた。
今回はハンドルである。
うちの子のハンドルはウレタン製であり、革巻きではない。
スイフト君もそうだが、JB23ジムニーも本革巻きであり、滑りにくくなる、熱くなりにくいなど、利点も多いのでぜひ取り入れたいところだ。
なので、どこの家にも大体転がっているアルカンターラの生地をハンドルに縫い付けることにした。
・・うそです。アルカンターラはアマゾンで買いました。
アルカンターラ以外にも
難燃性の自動車用合皮とか色々あります。
気になったら探してみてください。
ハンドルカバー自体は以前に持っていたBMWの525にも自作して縫い付けた事がある。
あの時は本革を用いたが、今回はアルカンターラ、つまり合皮なのでより簡単である。
ただ、合皮にしろ本革にしろ、手軽さが雲泥になるポイントが1つある。
それは皮自体がパンチングレザーかどうかである。
パンチングレザーとは、素材の表から裏まで貫通した小さい穴が規則正しく並んでいる。
格子状かX状かはともかく、規則正しく小穴が並んでいる、というのがポイントである。
皮は針が通らない。正確にはペンチが必要なほど硬い。
ゆえにもしパンチングレザーではない皮を買った場合、「針を通す穴を両端に規則正しく開ける」という鬼の工程が入る。絶対やめといた方が良い。
なお、逆に針が通るようなヤワな皮の場合、縫ってる間(特に最終盤)に裂けてぽっきり心が折れる。
経験者は語るのである。
さて、私の持ってるアルカンターラは当然パンチングレザーであるから、後は切って縫っていけばいい。
ハンドルの外径を計ると117cm。ハンドルの握る部分は1周9cm。
なので、1周117cmで幅9cmの円筒になるよう皮を縫う。
私は皮を2ピースに分け、ピースAが104cm、ピースBが20cmとした。
これを両端それぞれ2cmずつ重ねてミシンで縫っていく。
1周が116cmになるが、それでよい。
なぜかというと、ハンドルとカバーは単に摩擦で滑らないだけの関係なので、少し皮が引っ張られ、ハンドルに食い込んだ方が後々たるんだりしないのである。
本革の場合は2~3cm、嵌める時に青筋立てて入れないと嵌らないくらい引っ張った方が良い。
なので革巻きハンドルは作るの大変なのよ。機械使ってるだろうけど。
でもって、円筒を作ったら、その幅の両端に、円周に沿って
本返し縫いをしていく。
もちろん糸が並んでる表面がハンドルカバーでも表面になります。
なお、ここにはもの凄い力をかけるので、普通の糸ではなく、皮を縫う時の蝋引き糸とか、レザードとか、そういうのを使うこと。さらに糸は2重(2本取り)にする。
つまり116cmを1周縫うには、本返し縫いだから2倍ちょい、それの2本取りだから大体5倍の距離が数学上では必要となる。
ただ、3次元に縫うこと、結び目を作る分とか考えると6~8倍は見ておいていい。最終盤で糸が足りない事に比べたら余る方がましだ。
私は今回7倍近い8mの糸を用意したが、1mちょっと余ったので7mで良かったことになる。
ええ。この工程、大変です。
7mもの長さの糸をちょこまかちょこまか本返し縫いしていくと、100%糸が絡みます。
特に蝋引き糸は蝋同士がくっつくのでそれはもう絡みます。ねじれます。結び目が出来ます。
それを解いてはチクチクチク。
1回で縫おうと思わない方が良いです。
私も納車前から始め、やる気が起きたら縫うを繰り返しました。
両端を縫い終えたら、それとは別に1周の3倍程度の糸を用意し、針に通しておきます。
両端を縫う糸とこの糸は同じ種類でなければなりません。色は替えてもいいですが。
あとはハサミとか、予備の糸とかを準備します。
で。
車を日陰に移すか、煌々と室内照明をつけても職務質問されない涼しい場所を確保します。
間違っても真夜中に自宅前の屋外駐車場でやってはいけません。
車泥棒か車上荒らしと間違われます。外から見て完璧にそれです。
真昼間にやると熱中症で倒れるか暑さで怒り狂って引きちぎります。
夏には向かない作業ですね。
といいつつやる。
やりかたですが、まずは皮カバーをハンドルに嵌めます。
私みたいに2ピースにした人は段差が2か所、1ピースの人でも1か所は出来ますから、それをどこに配置するか決めます。
次に別途用意した糸を、自分から見てハンドルの奥側の目立たない所(スポーク部の裏とか)の皮穴に通します。
この時1~2周返し縫いすると丈夫になります。
で。
両端の本返し縫いされた糸に対し、上から見てWを描くように縫い、本返し縫いされた両端を強制的に寄せます。
それぞれの辺をAとBとしますと、
・Aの本返し縫いで、1番目の穴と2番目の穴の間を渡っている糸の下に針を入れます。
・そのまま針を通し、Bの本返し縫いで、2番目の穴と3番目の穴の間を渡っている糸の下に針を通します。
・針を引き上げたら、今度はAの本返し縫いで、2番目と3番目の穴の間を渡る糸の下と、Bの3番目と4番目の穴の間を渡る糸の下を通します。
これを繰り返していくんですが、この時AとBに針を通し、再びAに戻す時に、針を親の仇のように引っ張ってください。
こうすることで何が起きるかというと、本返し縫いされた辺の表の糸が、ABの中央に向かって引っ張られます。
すると必然的に辺の裏の糸が引っ張られ、皮が縮む方向に圧縮されます。
これによって、ハンドルの外径と内径の1周の長さの差を埋めていくのです。
こんな感じ。
上手い人は緩めに引っ張っておいて、スポークに差し掛かる時とかに改めて引っ張り、皮の寄り具合とか、スポークとスポークの間に使う皮の配分量を調節したりするそうですが、私のような素人の場合、根気が無くなる前に縫い上げてしまわないと車が動かせなくなりますから、出たとこ勝負です。
ハンドルに縫い付ける作業自体は1時間から1時間半くらいですかね。
私は上の写真の通り、皮は黒っぽいグレー、糸はライトブラウンで縫いました。
1周縫うとこうなります。
スポークの所も本返し縫いが表面にあるので、あんまりダサくないと思います。
今回は糸を目立つ色にしましたが、普通は皮と同じか黒ですね。
白や赤にして、内装の差し色と統一する、なんてのも見かけます。
ちなみにこの縫い方は、確かヨーロピアン縫いだったかな、それの応用編です。
色々縫い目の写真があるのが、例えば
このブログ。
上手い人の縫い目は綺麗。
なお、プロの方にハンドルの皮の縫い付けをお願いすると、それはそれは綺麗に仕上げてくれますが5万くらいかかります。
それ考えたらお小遣いでできるし、出来上がりの材質的にはアルカンターラなので満足度も高いです。皮をハンドルに取り付ける時にクッション付き両面テープを挟み込むと握り心地を柔らかくとか、奥行き方向に厚みを持たせたりとかもできます。皮の寸法計画段階から設計が必要ですけど。
・・・・1からやると自由度が高く安い代わりに、まぁ結構な苦労が伴いますけどね。
それがDIYってもんさ。
なお、ステマじゃないですけど、皮を切って穴を開けて、縫うのに必要な糸を同梱したセット、というのがいわゆる縫うハンドルカバーです。日本製だと橋本商事さんの世界皮革ブランドが有名かな。
これで糸の色と縫い方だけ凝ってみるというのも手軽でいいかと思います。
なお、縫った後の使い心地ですが、良いですよ。手が滑りません。
アルカンターラのバックスキンっぽいやつなので触り心地も良いです。
苦労した甲斐がありました
(フロントグラスのアレからは目を背けつつ)