
こんにちは、銀匙です。
ソニーがミラーレス一眼としてNEX-3というカメラを発売した時、同時に発売された2種類のレンズ。
その1つであるSEL16F28(16mmF2.8の単焦点レンズ)は、35mm換算24mmという広角な撮影範囲とほとんどパンケーキといえる小さなレンズです。
また、NEX-3や5のキットレンズとして同梱されることもあったため、市場で目にする事は非常に多いと思います。
ただし、発売当初はNEX-3にしろNEX-5にしろ受光部の性能が悪く、SEL16F28もまた解放付近での周辺画質がズームレンズであるSEL1855と変わらない(むしろ甘い)ため、性能が悪い、期待外れという烙印を押されましたし、キットレンズとして数多く製造されたこともあり、現在においても中古なら1万円以下で手に入ります。
しかし、2025年現在よくよく考えてみると、実はそう悪い評価をしなくても良いレンズへと変わっているよ、ということをお伝えしようかと思います。
別にプログラム更新があったわけでもなければレンズ構成が変わったわけでもないのでレンズの基本性能はそのままです。
何が変わったかというと、受光部側、つまりボディの性能が上がりました。
それはNEXの割と後の方の機種であるNEX5N、5R、6、7、そして4桁αの機種を指します。
この辺りになってくるとオールドレンズを意識したのかたまたまの産物かは解りませんが、受光部が斜光や強い輝度差といった悪辣な環境でも表現出来るようになってきました。ゆえにソニーのミラーレスにオールドレンズを組み合わせる試みが発展していったわけです。
(注釈:銀塩フィルムは斜光等の悪辣な環境でも柔軟に対応してしまう為、古いレンズは総じて光がまっすぐ届くかという観点が設計に無い場合が多い)
そうしたオールドレンズに比べたら最初からEマウントのレンズとして設計されているわけですからオールドレンズでも使えるボディは当然SEL16F28の描写も良くなっていったわけです。
ただしSEL16F28側も最低F5.6、出来ればF8まで絞り込んでやらないと周辺画質は悪いです。解放にするなら日の丸構図で周辺はぼかす、というルールは変わりません。
また、数年前であれば4~5千円とかで売られていた中国製のAPSC単焦点レンズも昨今の円安のせいか便乗値上げなのか、1万円とか2万円とかのプライスタグになりました。昔から絞りリングを強く回すとレンズ自体が分解してしまうといったトラブルはありましたが、最近はよく見れば絞りが固定で変えられないといった基本機能すらロクに無い粗悪品まで混ざってくるようになりました。
それに比べたらF2.8からF22まできちんと絞りがボディ側で制御できるSEL16F28は、生真面目に作られた「ちゃんとした」レンズです。
他にもワイドコンバータ装着により35mm換算18mmという超広角を撮影できるようになったり、その時の描写がむしろ非装着時より良い(?)なんて噂も流れました。個人的には非装着の時と変わらず割と良い範囲、という評価です。
更に言うと、ジャンル的に非常に近いレンズとしてSEL20F28があります。
こちらは35mm換算30mmのパンケーキレンズですが、描写性能という意味では正直SEL16F28とあまり変わらない、ぱっと見では全く見分けがつかないレベルです。なのにこちらの値段は中古でも3万円付近です。
他にもSEL16F28より後に売られた電動ズームであるsel1650pzなんかと比べたらSEL16F28はずっと良い写りをするのです。
別の話をすると、悲しい事にサードパーティを含め、薄型軽量のいわゆるパンケーキレンズはどこも作ってくれません。ミラーがあった一眼レフカメラのように、重厚長大なレンズばかりが出てきます。
現在でもSEL16F28はEマウントレンズの中で最も軽量です。
(SEL16F28は67g。SEL20F28でさえ69gなので負けています)
ボディの性能向上、競合レンズの劣化と価格高騰、ミラーレスカメラを取り巻くレンズのトレンドの変化、そうしたものが重なって、SEL16F28の価値が相対的に向上しているわけです。
ただ、このレンズを手に取った方なら、多分1度はこう思った事でしょう。
レンズ前面の面積に対し、前玉(最も表にあるレンズの大きさ)が小さい、と。
今も時折見かけますが、銘板(PENTAX SMC50mmF1.4とか書かれているレンズ前面の刻印部)がレンズより大きすぎると、なんだか安っぽいというかショぼく見えてしまうのです。
そしてなぜか、ソニーはこのレンズを銀色鏡筒で売りました。
SEL20F28が高い理由に、黒鏡筒だから、というのがあります。
それだけユーザーは黒ボディに銀鏡筒を嫌がった、とも言えます。
また、SEL20F28やSEL30M35は同じく前玉が小さいのですが、フード形状が内側に入り込む特殊なデザインであるためレンズが目立たなくなり、上手く格好良さを保っています。
この特殊なフードは単体で販売されており、それがALC-SH113というわけです。
純正で2000円もしない、コスパの良いフードです。
もしNEX5Rのように小さなボディとALC-SH113を取り付けられたら、SEL16F28を付けた姿はこのような感じになる事でしょう。
ミラーレスが小さくて格好良かった頃のスマートさがあると思いませんか?
フードのおかげでボディが黒、レンズが銀というチグハグさも目立たないですし。
ところが、SEL16F28にしろ、SEL1855にしろ、ALC-SH113は取り付け不可となっています。本来SEL16F28やSEL1855につけられるフードはALC-SH112という花形フードですが、これだととても大きくなってしまいますし、前玉が小さい事を隠せないのです。
ALC-SH113はSEL30M35とSEL20F28専用であり、SEL1855は明らかに四隅が蹴られてしまうのでどうにもなりませんが、SEL16F28につけてみると何もしなくても蹴られないんですね。
じゃあつければ良いじゃないかとなるんですが、1つ問題が起きます。
ピントリングがフードに圧迫されて全く回らなくなってしまうのです。
強いて言えば力を込めれば回りますが、フードまで回って外れてしまいます。
確かに対応不可というだけあります。
SEL16F28のピントリングはエンコーダー、つまり電子式なのでAF時には回りませんので、このままでもAFなら使えはするのですが、長期的に見ると圧迫し続ければ不具合につながりそうです。
ではどうするか。
よく接合部を見ると、フードの後端とピントリングの先端が内側で微妙に擦れているわけですね。下図でいう赤線の部分です。
後は微妙にフードがロックしきれていないというのもあるんですが、そちらは解決しなくても最後の方で締め付けはあるのでよしとします。
で、改造方法なのですが、フードの後端全体をほんの少し削ります。
下図の赤線で挟んだ部分を薄くする感じです。
具体的にはサンドペーパーの320番を平らな台の上に置き、その上でフードの表面を上に、後端の削る側をペーパーに当て、円を描くようにそっとやすり掛けしていきます。
力を込めると斜めに削れますので、フードにそっと手のひらを乗せて動かしていきましょう。
少し削っては埃を飛ばし、嵌めてみてピントリングの動作を確認する、そんな感じです。
可能であれば320番で良い感じまで削ったら400番か600番のペーパーで仕上げの慣らしをし、最後にエアダスターで吹き、ウェットティッシュでカスを拭ってあげれば十分でしょう。
下に作業前後のフードを並べましたがほとんど差異はありません。
ほんの僅かな干渉とみて良いです。
これでSEL16F28にALC-SH113が取り付けられるようになり、手のひらサイズの24mm単焦点カメラの出来上がりです。
下記はNEX-5Rとの組み合わせですが、無駄な凹凸も少ないのでポケットに入れても比較的出し易いです。
また、ALC-SH113は49mmフィルタをレンズにつけてからフードをかぶせる事が出来るので、UVやプロテクトフィルタを付けてもカメラの厚みが変わりません。
曲がりなりにもNEX5RはAPS-C受光部を持ったカメラですから、GRDigitalほど目の前の光景を芸術にはしてくれませんが、スナップシューターとして十分いい仕事をしてくれると思います。
さすがに今からNEX世代のボディを買うのは個体がそもそも居ませんし、故障品も増えてきましたので選別は必要ですけどね。
4ケタα機はマイナーなせいか高いですね。
α5100とかでさえ5万とかですものね。
α6400なんてボディだけで10万以上しますからね・・
まぁGR3はもっと物凄いプライスタグだし入手困難なので、中古市場が爆上がりしているコンパクトカメラを買うくらいなら、いっそ中古のNEX-5Rとか5Nとか探してSEL16F28を組み合わせてみるのも良いのではないでしょうか、という話。
ほんとにカメラ周りも高くなりましたね・・