こんにちは、銀匙です。
折角の祝日なのにこちらでは天気が冴えません。
というわけで、また1つご紹介します。
今回はタムロンのMFレンズですが、70mm-210mmF3.5通しという望遠ズーム(19AH)を紹介します。
まずは外観から。アダプトールはお約束の63Cです。
前から
後ろから
はい。何の変哲も無い望遠ズームです。
カメラボディに付けて正面から見ると、しすぎてるんじゃないのと思うくらいあっさりしています。
ズームリングと兼ねられたピントリングは手のひら全体がすっぽり収まりますので操作性は良いのですが、一言で言って、地味な筒です(汗)
市場では単なるズームレンズの古い奴という評価ですので、大体6千円から、高くても1万円程度だと思います。
フードは専用品を付けないとズームリングが干渉してしまいますが、このフードがなかなか無いですね。
私もまだ見た事がありません。
さて、このレンズ、最初から明言しますが普段使いには向きません。
約1kgもあるので重いし、全長は16cm位と長めですし、70mmから210mmという焦点距離も使いにくい。
風景やスナップには70mmでは長すぎるし、遠くを写すには210mmでは短いのです。
例えば飛行中の旅客機や鳥の撮影等となりますと、400mm、600mm、下手すれば1000mmクラスを引っ張り出すことになります。
加えて、単焦点の52BB達と比べると、描写は甘いです。
いくらSPレンズとはいえ、年代物のズームに過剰な写りを期待してはいけません。
特に開放Fではマクロの鋭い写りと比べると、よく言えば柔らかい、悪く言えば芯の無い写真です。
F5.6以上絞ってあげないと鋭さは出てきません。
文字等を精密に描写するより、布などをしっとりと写すほうが似合っていると思います。
では、このズームは何に使えるか。
APSCデジタルではやや狭めではありますが、まずはイベントには使いやすいでしょう。
ロープ等が張られており、被写体との距離が4~10mのレンジにあり、さらに奥の背景を整理したいという時に使えます。
被写体の背景がすっきりしているとか、大きいもの(例えば囲いの中の車とか)なら70mmで良いですし、背景がごちゃごちゃしていたり、被写体と接近している場合なら210mm側で処理できます。
ただし、レンズ自体の重さが結構ありますから、広範囲を歩き回る場合はそれなりの体力を要求されるでしょう。
ちなみに、あまりこのレンズの特徴として挙げられる事は無いのですが、最短撮影距離が全域で85cmを確保しており、開放Fも同じく全域でF3.5という点があります。
最短85cmなんてマクロでもないし、F3.5って中途半端じゃない、と思われるでしょうが、それが210mmで行えるという所がミソなのです。
最短撮影距離もFも同じ場合、焦点距離が大きいほどピントの合う距離範囲は狭くなりますし、被写体は大きく写ります。
実際、210mm側で85cmとなりますと、2.66対1と、ハーフには及びませんが、マクロの領域になってきます。
下の写真はF3.5の85cmで撮影したものです。
ISOは200で撮りました。
210mm側
70mm側
物は100円ショップで売っている、高さ10cm程度のミニミニ三脚の頭の部分ですが、210mm側で撮った場合、何だか解りますか?
ピントは前後のボケを見て欲しかったので、どちらの写真も三脚の向かって左の脚に合わせています。
90mmマクロ等と比べればピントがあっている部分でも芯が無いので、ピントが合ったところだけが鋭く浮かび上がるという事はありません。
ただ、全体的に柔らかな表現で統一されています。
ピントを合わせた脚自体は直径1cm位の円柱ですが、既に脚自体からボケが始まっています。
後側の脚、手前にある三脚の頭のネジのボケ方も自然ですので、前ボケ、後ろボケともに変な違和感はないと言えます。
背景には茶色い床、白い壁、そして扇風機があるのですが、扇風機を210mm側で識別するのは難しいと思います。
同じ距離とFで撮った70mm側では良く解りますが。
芯が無いというのは、精密な描写が必要な用途では致命的な問題とも言えます。
今ではあまりありませんが、新聞や雑誌を複写する際、文字がふにゃふにゃでは役に立ちませんよね。
しかし。
私もそうだったのですが、人を撮る場合、撮り手は出来るだけ被写体を緻密に撮りたい、それが良い写真だと考えてしまいます。
一方で、本人に見せると緻密であるほど間違いなく嫌な写真だと評価します。
人は自分を鏡で見る時、実は不都合な部分を見ないように勝手に脳が処理してしまいます。
後退した生え際、鼻の毛穴、シミ、そばかす、目元のカラスの足跡、吹き出物の跡、抜き忘れた産毛などなど。
ところが写真を見る場合においては、人は見たまま脳が処理してしまいますから、そのギャップに愕然とするわけです。
事実、私も絞り込んだマクロレンズで撮影した自分の写真は大嫌いです。
ああ寄るな来るな、緻密に俺の隅々を写すんじゃない、と。
ポートレートで必要なことは、良い所だけを映し、悪い所を隠せるレンズです。
悪い所というのは上記のような緻密性ともう1つ、遠近感というのがあります。
ポートレートだと、およそ100mmを中心として、それより広角になるほど遠近感が誇張され、望遠になると圧縮されます。
例えばよほどの意図が無い限り、広角レンズで人の顔を顎の下の真正面から撮ってはいけません。
なぜなら顎が突き出て、鼻の穴が目立ち、鼻の高さや目の大きさが小さく写るからです。
これは被写体のせいではなく、レンズの持つ遠近感という特性が悪いほうに出てしまったからです。
レンズに最も近い顎、唇、鼻の穴程度までは「近」、つまり大きく写される一方で、鼻の上部、眉、目などは「遠」、つまり小さく写されるからです。
広角は小さく写るし寄れるから~などといって、緻密な描写をする広角レンズで上記のような角度から撮ればぶん殴られること請け合いです。
ただ、広角が使えないわけではありません。
足が短いと気にされている方がいらしたら、広角で、足を斜め前に、ヒザを伸ばしてカメラに対してまっすぐ出してもらい、ヘソのあたりを中心としてやや離れて撮りましょう。
すると胴は実際より短く、足は長くすらっと、顔も小さく写ります。
(無論、盗撮と間違えられないようにちゃんとマナーは守ってくださいね)
この姿勢、コンパニオンさんがよくやってますよね。
これを顔の側、斜め上から撮るとコンパニオンさんの意図が台無しですのでご注意ください(笑)
また、顔が大きいと気にされている方を準広角で撮る方法もあります。
その時のコツは、腕をカメラ側に突き出してもらうこと。
別に空手のような姿勢でなくても、ひじを曲げて手は髪でも良いのです。
こうすると、「近」にあるひじは大きく、「遠」にある胴や顔は小さく写ります。
人は現実のイメージ、つまり相対尺度で物を見ますので、「ひじがこの大きさだから、顔はこんなに小さいのね」となるわけです。
一時期、お嬢さんが両手をカメラに突き出し、手を広げてとるポーズが流行りましたよね。あれは手を大きく写す事で顔を小さく見せるわけです。
逆にこのポーズを後ろから撮ると「手がこのくらいの大きさって事は顔は相当デカイの?」となりますので、やはりぶん殴られるでしょう(汗)
この場合の適正値は28mm~40mm前後です。
24mm以下ではやりすぎとなり、脳を騙せなくなりますのでご注意ください。
望遠の場合は真正面だけ避ければ失敗は少ないでしょう。
(正面の望遠では鼻の高さが圧縮されてしまい、のっぺりした印象になりますから注意してくださいね)
また、望遠で見下ろす角度で撮ると身長が縮んで見えます。
背が高い事を気にされている方には一つの薬ですが、低い事を気にされている方には逆効果ですのでご用心ください。
150mm以上はどちらかというと遠くの人を撮る場合でしょうね。
撮影出来る距離は1.2mからせいぜい2.5mですが、そこまで寄れない場合も多いです。でも、300mmとかにすると圧縮効果が激しく、全身の凸凹まで圧縮してしまいます。
列車を撮る人も標準から135mm程度で撮るようですが、これも焦点距離による遠近誇張・圧縮感を嫌う為のようです。
よって、70-210mmというのは、ポートレートにおいてどの焦点距離にしても失敗が少なく、ぶん殴られる確率の低いレンズといえます。
開放F値が通しである為、63C経由で絞りをボディ側で制御したとしても、一度設定したF値がずれる事がないというのも失敗を減らすのに一役買うでしょう。
ただ、動物園、運動会などには微妙に望遠側が足りず、撮影会といった本気のポートレート撮影では広角側が足りないんですね。
従って1万円以下という現在の市場価格は適性と言えます。
イベントに持っていき、立ち位置が制限される中で人を撮ったり、210mm側で小物のマクロ撮影も出来るレンズ。
そう考えて頂くのが良いと思います。
なお、ズームリングとピントリングが一緒になったMFレンズですので、何枚か連続して撮ることはお忘れなく。
210mmの接写では絞ってもピントの合う範囲が非常に狭いですし、人は瞬きをしますから・・
参考情報(タムロンのサイトです):
19AHのページ
購入当初のブログと屋外サンプル写真