2013年02月15日
トラブルシューティング
トラブルシューティング。
自動車修理において一番重要な事です。
ダイアグテスター当てて故障診断したり、壊れた部品の交換だけなら自動車学校卒業直後の新人メカニックでも出来ますが、ダイアグでは判断しきれないトラブルを、どこが壊れてるのかを調べるのは理屈を理解していなければ、そして想像力と経験が必要だからです。
この能力に関しては、自分が最高で絶対正しいなんて言う気はさらさらありませんけどね……自惚れるほどの実績なんてありませんから……田舎のしがないメカニックですもん、自分……。
ま、自分の話はともかく、トラブルシューティングが一番重要なのはおそらく誰しもが理解している事でしょう。
どこかのDに行って「なんか説明に納得出来なかったんだけど……」という事があって、セカンドオピニオンみたいに別のショップさんに持ち込んだら「あ~、これね」という言葉と共に数分後には直ってました……なんて話もどこかで聞いた事あるんじゃないでしょうか。
で、ここからが本題。
セカンドオピニオン(?)で来店したお客様から聞いた話しから、実際にトラブルシューティングしてみて正解を導き出してみませんか?
ネタとして楽しんでいただけたら幸いです。
クルマは某独製スポーツカー。
RRのP様です。
エンジンをハイスペックな奴に載せ換えていたり、フライホイール&クラッチが純正流用のダンパーレスフライホイールになっていたり、ブレーキがガッツリ強化されていたりと金の掛かり方がハンパない仕様の一台です。
普段の足ではなく、完全に週末スペシャルですね(実際には月イチスペシャル? 普段は車庫でずっと眠ってます)。
で、お客様が言うのです。
「走り始めはイイんだけど、30分くらい走るとシフトが入らなくなるんだよね」と。
セカンドオピニオンと言っている通り、他のお店(元Pセンターの工場長がやってる店とか言ってました)でも同じ様に話をして、試運転や部品交換をはじめとした作業を含めてあれこれやった上でうちにやって来た訳ですので、その点を踏まえた上で話を考えてください。
走り始めは良くて30分後にはダメとなると、冷間時はOKで温まるとアウトという事と考えられます。
ただし、走り方はレーシングな感じではなく、普通に街乗り+α程度のものです。
シフトが入らなくなるというケースで一番多いのは熱にやられたレリーズシリンダーからのオイル漏れとかでクラッチがしっかり切れないというモノなので、当然それを言いました。
するとこう返事が返ってきました。
「うん、それでマスターとレリーズは新品に交換したんだけど、変わらなかったんだよね」と。
そこで自分は聞きました。
「オイルが漏れてたりしてたんですか?」と。
それに対する返事はと言いますと
「いや、オイルは漏れてなかったんだけど、念の為交換するって話でね」と。
詳しく話を聞くと、特にマスターもレリーズもバラして確認したりはしなかったとか。
そりゃ新品入れりゃ話も早いし楽でしょうけど、部品発注する前にシリンダーバラしてシリンダー内壁に段差があるかどうかチェックしないのかな……という疑問が残りました。
少なくとも自分ならバラした上で軽くホーニングしてから組み直して確認はすると思います(P様の部品は安くありませんからね)。
でもまぁマスターとレリーズの両方が新品というのなら、よほど運が悪くなければ外れを引いたりはしませんし、実際症状が変わっていない……と言うよりも最初は問題無いという状況に変化が無いという時点でこの二点が問題ではなかった事を証明しています。
で、こうなると次に疑うのはクラッチです。
熱でディスクが反り返っちゃうか、フライホイールが熱で変な歪み方をしてしまうか……まぁフライホイールは歪みこそすれそこまで酷い状態になる事はまずありませんが。
もちろんそう話をしたところ、こう返されました。
「うん、だからミッション降ろしてクラッチは確認したんだよね。で、クラッチは問題無いって言うのさ。話によるとミッション内部だって結論らしいんだよね……」
この時点で突っ込みたい部分があるのですが、それはともかく……結論出てるのに、何でうちに来たの?
「いや、なんか納得出来なくて……」
理由が説明出来ないのは構造そのものを理解しているという事ではなく、単純に相手を信用出来なかったからという事みたいなんですが、この際それは忘れましょう。
ここからがホントのセカンドオピニオンですからね。
で、ここで一度お客様の話を整理しましょう。
①症状は、冷間時問題無いが、走行30分程度でシフトが入らなくなるというもの
②オイル漏れは無かったが、一番疑わしいクラッチマスター&レリーズは交換した → 症状は変わらなかった
③エンジン&ミッション降ろしてクラッチの確認 → クラッチは特に問題が無い → おそらくはミッション本体だろうという結論
これが話を聞いた限りでのトラブルシューティング(途中)です。
さて、話を進めましょう。
この時はお客様がせっかくガレージまでP様を乗ってきてくれたので、まずは試運転を含めてチェックを開始します(来る途中でおかしくなったらどうするつもりだったんだろう……という疑問は彼方に吹き飛ばすのがベストです)。
まず最初はエンジン始動前にクラッチペダルとシフトタッチの確認です。
シフトタッチは問題ありません。
フォークやシャフトに問題がありそうなフニャフニャ感は無く、停止時とはいえしっかりとしたタッチです。
シフトワイヤーの伸びなんかも感じず、ヘタリ感の無いしっかりとしたワイヤーです。
しかしここですぐに違和感のある部分が発覚します。
クラッチペダルが妙に奥まっているのです。
ブレーキペダルとの位置関係は、軽く3cmほど違うと言えばどれほどおかしいかが判るかと思います。
ワイヤー式のクラッチなら判りますけど(それでもここまで酷くはならないけど)、油圧式でこれは明らかにおかしいでしょ……。
それを言うと、お客様はこう言いました。
「なんかペダルごと交換しなきゃならないって言ってたんだけど、何で交換しなきゃならないのかわからないからそのままなんだよね」と。
……なんで交換しなきゃならないのか、ちゃんと聞いときましょうよ……。
これに関しては、マスター&レリーズを交換してからおかしくなったそうなので、ある意味直すどころか悪化している訳ですが。
とりあえず位置の問題以外は大丈夫との事で、試運転開始です。
エンジン始動直後、ぺダルが奥まっていて乗り辛いものの、クラッチはタッチも良く普通に切れてシフトも入ります。
ペダル位置のせいでクラッチ繋げるのがちょっと厄介ではありましたが、とりあえず問題無く走れます。
シフトも1~5速まで問題無く入り、シンクロのヘタリ等は感じませんし、シフトフォークに起因するタッチの悪さもありません。
シフトが抜けるような事も無くスコスコ入ります。
エンジンといい、ミッションといい、ハッキリ言って絶好調です。
とりあえず30分以上の走行をした上でガレージへと戻る事に。
ただし、いつ症状が出てもいい様に、信号の手前で早めに減速し、完全停止しない状況を確保しながらの走行です。
すると信号手前で症状が出ました!
3速から2速に落そうとしたのですが、シフトが入らなくなったんです。
で、とりあえずここでクラッチを使ったシフトを諦め、クラッチレスシフトに切り替えました。
シンクロのミッションでもちゃんと回転合わせればシフトチェンジは出来ますからね。
昔レースの最中にクラッチレリーズが熱で昇天して、ラスト二周半をクラッチレスで走った記憶が蘇ります……が、そんな話はともかく、クラッチレスでガレージまでの残り2km程を”普通に”走って無事ガレージ着。
ここまで読めば、もう答えは出るはず……なんですが、いかがでしょう?
どこが悪いか判りましたでしょうか?
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Posted at
2013/02/15 00:00:42
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